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ベスト本格ミステリTOP5 短編傑作選001 [読書・ミステリ]


ベスト本格ミステリ TOP5  短編傑作選001 (講談社文庫)

ベスト本格ミステリ TOP5 短編傑作選001 (講談社文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/12/14
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

本格ミステリ作家クラブが編集するところの
「本格短編ベストセレクション」シリーズは
16年間に16冊が刊行されたみたいなんだが、
やっぱり本が売れない時代なのかなあ・・・

2015年版である本書から、ぐっとページ数が減ってほぼ半分。
収録作も半分の5作になってしまった。
ちょっと寂しいねぇ・・・


「許されようとは思いません」芦沢央
他のアンソロジーで既読。
諒一と水絵は交際4年を超え、そろそろ結婚を考え始めていた。
しかし諒一はなかなかプロポーズできないでいた。
なぜなら、彼の祖母は殺人者だったから。
18年前の1979年、東北の寒村で祖母は
同居中の義父(諒一から見れば曾祖父)を刺殺していたのだ。
獄中で病死した祖母の遺骨を寺に納めるために諒一と水絵は村に向かう。
道中、諒一から祖母の話を聞いていた水絵は、
祖母の "真の動機" を推察する。
現代では、結婚は当事者同士だけのものという意識が
ごく普通かも知れないが、地方ではまだまだ古い考え方が
残っているのかも知れない。ましてや昭和の中頃ではねぇ・・・
陰鬱な話だが、ラストでの若い二人の会話に救われる。

「舞姫」歌野晶午
短編集で既読。
半年間の海外遊学が認められる特別枠に合格し、入社した十條。
パリに渡った彼は周囲から ”ジョジョ” と呼ばれ、バーで働いていた。
現地で知り合った女性・フランソワーズと暮らしていたが
帰国の日が迫ってきていた。
そんなとき、彼の働くバーで死体が見つかる。
現場は密室だったことから事故死が疑われたが・・・
犯人や密室のトリックもよくできてるけど、
最高の驚きはラストの1行にある。

「心中ロミオとジュリエット」大山誠一郎
”私” の叔父、鹿養大介(かよう・だいすけ)は俳優である。
ある日大介は、近所に住む元警視・遠藤から、
彼が交番勤務時代に経験した事件の話を聞く。
門田登美雄(もんでん・とみお)と木谷百合枝(こたに・ゆりえ)は
親同士がライバル企業の社長で犬猿の仲であった。
恋に落ちた二人だが、親の許しが出るはずもなく駆け落ちをする。
しかし、ようやく親同士が和解したのも時既に遅く、
生活に困窮した二人は海岸の崖下で心中死体となって発見される。
この事件に立ち会った遠藤の話から、
大介は意外な解釈を引き出してみせる・・・
ラストの逆転が鮮やか。うん、言われてみればそうだよね。

「三橋春人は花束を捨てない」織守きょうや
新米弁護士の北村は、三橋春人という青年から相談を受ける。
妻の美紅(みく)が浮気をしているので離婚したいが、
1歳になる娘の親権は手放したくないという。
一般に父親が親権を得るのは難しいケースが多いが
北村は美紅の行動を調査し、春人に有利な事実を積み上げていく・・・
この作家さんは初めて読んだ。北村のキャラも親しめるし、
事件のキーパースンになる深浦葵子(みうら・あおいこ)もいい。
そして、ミステリとしても最後までひねりが効いていて面白く読める。

「死は朝、羽ばたく」下村敦史
他のアンソロジーで既読。
札幌刑務所の門を出てきた主人公・奥村。
彼の前に現れた3人組の少年は、奥村の行く先々で
「こいつは前科者だ」と言い立てて、執拗な嫌がらせを繰り返す。
彼らは出所者を狙って恐喝をする常習犯だったのだ。
何をされても、全く彼らを相手にしない奥村だったが・・・
ミステリ的には、あっと驚く切り返しが待っているのだが、
物語的にはさらにもうひとひねり。これは達者だ。

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