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京都迷宮小路 傑作ミステリーアンソロジー [読書・ミステリ]


傑作ミステリーアンソロジー 京都迷宮小路 (朝日文庫)

傑作ミステリーアンソロジー 京都迷宮小路 (朝日文庫)

  • 作者: 浅田次郎
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2018/11/07
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

京都を舞台にしたミステリー・アンソロジー。

「待つ女」浅田次郎
ファッション系企業社長の村井は、料亭からの帰り道、
タクシーの中から、祇園の石段下に佇む女を目撃する。
その姿に、30年前に捨てた女・志乃を思い出した村井は、
旧友・辰巳のもとを尋ね、志乃の消息を知ろうとするが・・・
浅田次郎は初めて読んだ。こういう雰囲気の文章なんだね。
ミステリ的な展開ではあるけど、ラストがよく分からない。
なんだかうまくはぐらかされてしまった感じ。

「長びく雨」綾辻行人
怪談集『深泥丘奇談』収録の一編。同書で既読。
目眩に悩まされるミステリ作家の ”私” が、
京都の町中で出会う不思議な光景を綴ったもの。
こういう心象風景が延々と続くのは好みではありません。

「除夜を歩く」有栖川有栖
短編集『江神二郎の洞察』で既読。
いわゆる ”学生アリス” シリーズの一編。
ミステリ研の仲間・望月が書いた犯人当て小説「仰天荘殺人事件」を
作中作とし、その解決を巡って江神と有栖が夜の京都を歩き回る話。
「仰天荘殺人事件」自体は立派なバカミス(笑)。

「午後三時までの退屈な風景」岡崎琢磨
『純喫茶タレーラン』シリーズの一編。この作者は初めて読んだ。
美人バリスタの切間美星(きりま・みほし)が切り回す喫茶店で、
訪れた客の奇妙な行動の意味を美星が説き明かす、
という趣向の日常の謎系ミステリなのだが、本作に限っては
それに加えてもうひとつ仕掛けが。これには騙されました。

「銀印も出土した」門井慶喜
京都市の仁和寺近くの、Z大学キャンパスの工事現場から
純銀製の印象が発掘される。
しかも、その外見はあの「金印」にそっくり。
美術講師の佐々木は、Z大学学長・樽坂から呼び出され、
半月以内にこの銀印が ”本物” であることを証明せよ、と命じられる。
樽坂にとっては真贋なんぞはどうでも良く、
大学の新キャンパスの宣伝に使おうという腹づもり。
短編だけど、ネタはけっこう奥深い。なにせ邪馬台国論争まで
絡んでくるのだから。全体的にコメディ調で進んでいくのだが
すべての絡繰りを美術コンサルタント・神永美有(みゆう)が解き明かす。
リーダビリティの高さはさすが直木賞作家。

「異教徒の晩餐」北森鴻
京都嵐山の大悲閣千光寺の寺男にして、
実は元窃盗犯という有馬次郎が活躍する一編。ちなみに短編集で既読。
行きつけの寿司割烹「十兵衛」で、版画家・乾泰山が
殺される直前にとった、奇妙な行動の話を聞く。
新聞記者の折原けいとともに事件を探り始めるが・・・
この作者はやっぱり短編の名手だなあ。早世したのが悔やまれる。

「忘れ草」連城三紀彦
8年前、家を出て行った夫。その夫が突然帰ってきた。
妻は夫に向けて、”最後の手紙” を切切と綴りはじめる。
失踪の2か月後、京都から絵はがきが届いたこと、
1年後に、夫が見知らぬ女と一緒にいたとの知らせが受けたこと、
さらに1年後、あまりの寂しさから
夫の絵はがきに描かれていた寺を訪れたこと・・・
文庫でわずか16ページほどの作品ながら、驚きのラストを迎える。
やっぱり連城三紀彦はスゴい。


2年ほど前に、冬の京都を二泊三日で旅行したことがあるのだけど
まだまだ回りきれないところがたくさんある。

実はこの冬、もう一度行こうと思っているんだけど
前回は天気に恵まれなかったので、今度は晴れるといいな。
ついでに、あんまり寒くないといいんだけど・・・(笑)。

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