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1968 三億円事件 [読書・ミステリ]


1968 三億円事件 (幻冬舎文庫)

1968 三億円事件 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 日本推理作家協会・編
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2018/12/06
  • メディア: 文庫
評価:★★★

タイトル通り「三億円事件」をテーマに競作されたアンソロジー。

若い人には「三億円事件」と言ってもピンとこないかも知れない。

タイトルにもあるとおり、1968年(昭和43年)12月10日に
東京都府中市で、現金輸送車に積まれた東芝従業員のボーナス
約3億円が、白バイ警察官を装った犯人に奪われた事件。
鮮やかな手口はまさに「事実は小説より奇なり」。

犯人が一切暴力を使わず、計略だけで強奪に成功していて
7年後には刑事事件としての時効が、
20年後には民事事件としての時効が成立するなど、
見事に ”逃げ切った” ことで「完全犯罪」ともいえる事件になった。

当時私は小学生だったが、TVが連日大騒ぎをしていたのを憶えている。

ちなみに事件の7年後、THE ALFEE(当時はALFIE) が
この事件を題材に『府中捕物控』という曲を吹き込み、
時効成立日の12月10日に発売しようとしたのだけど
直前になってレコード会社側がビビったのか、
自主規制で発売中止になってしまったのは有名な話だ。

 私は発売直前の頃、ラジオで流れたのを聞いたのだけど
 今から思えばレアな体験だったなぁ。

ちなみに作詞作曲は山本正之。「ヤッターマン」など
「タイムボカン・シリーズ」で有名なアニソン歌手である。

YouTube を探せば、何年か前に THE ALFEE が
コンサートで歌った映像が見られるけど、
何せ発売(中止)以来、40年くらい経ってるので、
歌詞もそれに合わせて微妙に変えてあり、オリジナルとは異なる。

閑話休題。


本書には、犯行時や時効成立後の犯人たちを描くもの、
奪われた三億円の行方を描くもの、
事件が後世に与えた影響を描くものなど、なかなか多彩な5編を収録。

「楽しい人生」下村敦史
不良仲間の平野則文と望月敬一は、
府中のクヌギ林の中に駐めてあるカローラを発見する。
早速盗み出そうとしたところに、もう一台の車が現れて・・・
冒頭の作品の役目なのか、大まかな「三億円事件」の流れが
描かれているので、詳しくない人もこれで概要を把握できるだろう。

「ミリオンダラー・レイン」呉勝浩
笠井芳雄は自動車整備工として働く日々に鬱々としたものを感じていた。
そんなとき、友人の藤本からサカキという男を紹介される。
サカキは芳雄に「三億円を手に入れる仕事」に協力するよう誘うが・・・

「欲望の翼」池田久輝
受験浪人を重ね、三流医大に滑り込んだものの
留年を繰り返していた伊東真一は「三億円事件」の発生を知り、
すべてが馬鹿馬鹿しくなって大学をドロップアウト、
香港へやってきて無免許の医者として生活を始めた。
そして7年。ある日彼のもとへ、銃で撃たれた男が担ぎ込まれる。
その男は三億円事件を報じる日本の新聞を持っていた・・・

「初恋は実らない」織守きょうや
11歳だった千果子は、通院のために学校へ遅れて登校していた。
その日は「三億円事件」が起こった日で、
千果子はたまたま犯行現場に出くわしてしまう。
彼女は、その場にいた若い警察官(犯人)に一目惚れしてしまう。
そして12年。23歳になった千果子は、
兄の紹介で川本浩という青年と交際を始めるのだが・・・

「特殊詐欺研修」今野敏
府中市の警察大学校で、全国から集めた新任警部500人を対象に開かれた
特殊詐欺研修の一環として、コンテストが開かれることになった。
研修の講師を務める九条管理官と城戸警部を相手に
”特殊詐欺” を仕掛け、見事成功した者に
賞金と賞状を与える、というものだ。
しかし詐欺捜査のベテランである二人は、そうそう騙されない・・・

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