SSブログ

宇宙軍士官学校 -前哨- 7~12(完結) [読書・SF]


宇宙軍士官学校─前哨─ 7 (ハヤカワ文庫JA)

宇宙軍士官学校─前哨─ 7 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 鷹見 一幸
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/03/20
  • メディア: 文庫
宇宙軍士官学校─前哨─ 8 (ハヤカワ文庫JA)

宇宙軍士官学校─前哨─ 8 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 鷹見 一幸
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/07/23
  • メディア: 文庫
宇宙軍士官学校─前哨─ 9 (ハヤカワ文庫JA)

宇宙軍士官学校─前哨─ 9 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 鷹見 一幸
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/11/20
  • メディア: 文庫
宇宙軍士官学校―前哨― 10 (ハヤカワ文庫JA)

宇宙軍士官学校―前哨― 10 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 鷹見 一幸
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/03/24
  • メディア: 文庫
宇宙軍士官学校―前哨― 11 (ハヤカワ文庫JA)

宇宙軍士官学校―前哨― 11 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 鷹見 一幸
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/07/22
  • メディア: 文庫
宇宙軍士官学校―前哨― 12 (ハヤカワ文庫JA)

宇宙軍士官学校―前哨― 12 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 鷹見一幸
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/11/26
  • メディア: 文庫
評価:★★★★☆

2012年7月から始まった、大河スペースオペラ・シリーズ。
全12巻を以て、第一部が完結した。

以前、前半部の6巻分を記事にしたので今回は後半部について書く。

まずは前半のおさらい。

西暦2015年。
人類は異星人アロイスとファースト・コンタクトを
果たすが、しかしそれはアロイスを含む
ヒューマノイド型生物の連合体である ”銀河文明評議会” と、
”粛正者” と呼ばれる謎の勢力との間で太古から続く星間戦争に、
人類もまた巻き込まれることを意味した。

アロイスが地球人に対して供与したオーバーテクノロジーの代償は、
優秀な若者/子どもたちを戦士として提供すること。

人類は、近い将来に想定される ”粛正者” による太陽系侵攻に備え
地球防衛のための軍備を急ピッチで進めることになる。

そして2030年。
主人公・有坂恵一は、地球各地から集められた若者たちの一人。
彼らは宇宙軍士官学校の1期生として、宇宙ステーション・アルケミスで
過酷な訓練の日々を迎えることになる。

その中で、恵一は素晴らしい成績を上げ続け、
やがて同期生たちのリーダーとなっていく。

5巻では、ついに太陽系に ”粛正者” の探査機が現れ、
実戦投入された恵一たちは本格的な戦闘を経験する。

そして6巻では、恵一たちは ”銀河文明評議会” へ地球防衛のための
さらなる増援を求めるべく、アロイスよりもさらに上位の種族である
ケイローンのもとへ向かう。

 ちなみに評議会は完璧な階層構造になっていて、
 上位にある種族は姿さえ簡単には拝めない。
 そして新参者の地球人は ”途上種族” 扱いである(笑)。

ケイローンから新たな艦船とその指揮権を与えられた恵一は
地球軍独立艦隊総司令官に任命されるが、その直後、
地球と同じ途上種族であるモルダー人の星系に
”粛正者” が侵攻してくる。

ケイローンは直ちに援軍を送ることを決定し、
恵一たち地球軍も他の途上種族の艦隊と共にそれに加わることに。


ここまでが前半6巻分。

7~8巻では、このモルダー星系防衛戦が描かれるのだが
地球軍の奮戦も及ばず、”粛正者” が投入してきた
新兵器・恒星反応弾が星系の母恒星に打ち込まれてしまう。

 「宇宙戦艦ヤマトIII」に登場したプロトンミサイルだね。
 恒星内部の核融合反応を暴走させ、星系にある惑星は焼き尽くされる。

恒星表面に起こる大爆発、惑星に降り注ぐ熱と放射線、
そして荒れ狂う宇宙嵐によってモルダー星系は壊滅してしまう。

そして撤退中の恵一のもとへ、”粛正者” による
太陽系侵攻が始まったとの知らせが・・・

ラストの9~12巻は、クライマックスである太陽系防衛戦が描かれる。

太陽系侵攻のために転移してくる ”粛正者” の艦隊は、
8隻から始まり、撃破されるたびに16隻、32隻・・・と
倍々に増えていく。その無限とも思われる物量、
そして次から次へと繰り出される新兵器に
太陽系防衛軍は苦戦を強いられる。

頼みの綱は評議会からの援軍だったが、”粛正者” たちは
評議会を構成する主要星系にも同時に侵攻をかけており
上位種族には援軍を送る余裕はない。地球はまさに孤立無援状態。

やがて ”粛正者” の艦隊規模は3万隻を超え、
ついに1250発の恒星反応弾が太陽に向けて発射される。
人類の運命はまさに風前の灯火に・・・


スペースオペラなので、戦闘シーンが多いのは当たり前で
実際、後半6巻はほぼすべてが戦いの描写に当てられている。

その中で、ところどころに挿入されるのが、いわゆる ”銃後” の社会。
”粛正者” の侵攻に備えて、広大な地下シェルターを築く者たち、
脱出のための宇宙船を建造する者たち、
太陽爆発に備えたシールドを構築/維持しようとする者たち。
物資供給/避難民移送のための亜空間ゲートを死守する者たち。
彼らの ”戦い” もまた本シリーズの重要なピースになっている。

このあたりの描写は、最初の頃は軽く読み飛ばしていたんだけど(失礼!)
太陽系防衛戦に入ると、俄然彼らの活躍がクローズアップされてくる。

もちろん物語の主体は恵一たち防衛軍の戦いなのだけど、
彼らを含めて、戦場となってしまった地球圏で、命がけで最後まで
自分の仕事を全うしようとする者たちの行動が胸を熱くさせる。


さて、戦争を扱う物語ならば、キャラが戦死するのは避けられない。
しかし本書では、恵一をはじめとする上級士官たちには
”アバター” というシステムが導入されている。
すなわち、クローン体のような ”予備の肉体” が用意されていて、
戦闘で命を落とした士官は、戦死直前までの記憶が
新たな肉体に移植されて蘇生してくる、というものだ。

 物資は補給できても、時間と手間をかけて養成した
 指揮官たちの補充は容易ではないから、ということだ。
 もちろん、戦闘艇のパイロットのような一兵卒にはそんなものはない。
 彼らは、一度死んだらそこでお仕舞いだ。

でも読んでいて最初の頃は、こういうシステムだと
人の生死が軽くなってしまうんじゃないか・・・
と思っていたんだけども、意外とこの設定が泣かせるので驚いた。

死を何度も経験するということは、
愛する者との別れを何度も経験するということ。
たとえ生き返ってきても、それは100%同じ人間ではないし、
目の前で愛する者の命が散っていくのを経験した記憶は消えない。

劇中、若いカップルがこれを経験するのだが、
これがけっこう涙腺を刺激するんだよなあ・・・
トシをとって涙腺が緩くなってきたせいかねぇ・・・(笑)。

そして、お約束ではあるのだけれど、
劣勢に追い込まれた地球軍の、
絶望的な状況下における不撓不屈の戦いぶりも目を潤ませる。
なにせ昭和の人間なものでねえ・・・


恵一をはじめとする宇宙軍士官学校の1期生たちは、
シリーズを通じて成長を続け、最終的には
太陽系防衛の要となる地球軍独立艦隊の幕僚にまで上り詰める。

そして全12巻を以て太陽系をめぐる防衛戦は終結するが
彼らの戦いは終わらない。

”銀河文明評議会” は太陽系防衛戦を経て
防戦から攻勢へと転じることを決定、
”粛正者” が支配する銀河系へと、戦闘能力を持つ攻勢偵察部隊を
送りこむことになる。そして、恵一たちもまた、
その艦隊の指揮官として作戦に加わることに。

この「宇宙軍士官学校 第二部 ー攻勢偵察部隊ー」は
現在5巻まで刊行されているので、楽しみはまだまだ続きそうだ。

nice!(3)  コメント(3) 
共通テーマ: