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屍人荘の殺人 [読書・ミステリ]


屍人荘の殺人 (創元推理文庫)

屍人荘の殺人 (創元推理文庫)

  • 作者: 今村 昌弘
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/09/11
  • メディア: 文庫
評価:★★★★☆

2017年、第27回鮎川哲也賞受賞作。
発売以来、各種ミステリ・ベストテンを総なめにして
映画化まで決まり、12月13日から公開されるという話題作。

どんな作品かと思って読んだんだけど、
確かにこいつはスゴかった。
ただ、どうスゴいのかというのが説明し難いのも本作の特徴。


神紅(しんこう)大学ミステリ愛好会は部員数わずかに2人。
会長は ”神紅のホームズ” と呼ばれる明智恭介(おいおい)。
そして彼の ”助手” である葉村譲。

彼らは、同じ大学に通う美少女探偵・剣崎比留子(ひるこ)とともに
リゾート地の湖畔にあるペンション「紫湛(しじん)荘」で行われる
映画研究部の夏合宿に参加することになる。

去年の映研の合宿では、終了後に自殺者も出たという曰く付き。
そのせいか参加者が集まらず、演劇部員にまで声がかけられ、
葉村たちが加われたのも、それが理由。

ところが合宿初日の夜、肝試しを始めた一行を
思いも寄らぬ事態が襲う。

この ”事態” が何かを書きたいんだけど、
ここがこの作品の ”売り” の一つでもあるので明かさないことにする。

 ネットをググればたぶんネタバレが載ってると思うんだけど
 知らずに読んだ方が絶対に楽しい(?)と思うので。

要するに、ここから一種の ”特殊状況下ミステリ” に移行するのだ。
そして、この ”事態” のために外部との連絡を絶たれ、
クローズト・サークルとなったペンションの中で密室殺人が起こる・・・


古今東西、吹雪や火事や台風など、さまざまなシチュエーションの
クローズト・サークルものが描かれてきたが、
今作での ”事態” はまさに前代未聞だろう。

彼らを取り巻く ”特殊状況” にはある ”ルール” があり、
ペンションの中では、一般常識+特殊ルール の、
いわば二本立ての ”世界設定” のもとに事態は進行し、
探偵による推理ももちろん ”特殊ルール” 込みで行われる。

 ”特殊ルール” なんて書くと難しそうだが、そんなことはない。
 文章にしたら、このブログの記事二行分くらい(笑)。

でも、この ”特殊状況” のおかげで、
物語がぐっと面白く(?)なっているのは間違いない。

事件発生から解決までのストーリー展開でも、
サスペンスが途切れることなく続き、
ハラハラしながらどんどんページをめくってしまう。
ストーリー・テリングの腕もなかなか。
これで新人だというのだから驚きである。

ミステリとしても超絶に面白いが、キャラもいい。

ペンション内の総勢は14人。けっこう多いのだけど、
それぞれ性格がはっきり書き分けられていて、
読んでいても「こいつ、どんな奴だったっけ」と迷うことがない。
いちおう登場人物一覧表はあるのだけど、
私にしては珍しく、それのお世話になることが少なかった。

登場人物をわかりやすくするために、実はもう一工夫(?)
してあるのだが、これもある意味斬新(?)な手法。
詳しくは読んでみてのお楽しみかな。

そして、ペンションの詳細な見取り図も付いている。
たいてい、この手の図面は事件解決にほとんど役立たないのだけど、
この作品については、犯人の絞り込みに使われたりと、
かなり重要な要素を占める。

まさに隅々まで考えられた、”隙のない” つくりだと言えるだろう。
繰り返すが、これで新人だというのだから驚きである。
これからの活躍が楽しみになる。


さて、10月頃にかみさんと映画館に行ったら、
映画版「屍人荘の殺人」の予告編をやってた。
それを見たかみさんが「観にいきたい!」って言い出した。

かみさんは別にミステリファンでないんだよね。むしろ苦手。
じゃあ何でかというと、葉村役で神木隆之介くんが出てるから。
かみさんは彼のファンなんだ。

で、その予告編がまた、この作品の ”事態” には
全く触れず(まあ当たり前だね)、コメディ色を前面に出してる。

 原作にはあまり喜劇色はないんだけど、
 映画化にあたってそういう風に脚色したんでしょう。
 映画の公式サイトを見ても、あちこちに原作からの改変がありそうだ。

当然ながら、かみさんは ”事態” の内容を知らないんだよね・・・

映画館で ”事態” の内容を知ったときの反応が
楽しみなようでもあり、不安でもある・・・

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