サナキの森 [読書・ミステリ]
2014年の第1回新潮ミステリー大賞受賞作。
主人公は荊庭紅(いばらば・こう)という27歳の女性。
大学卒業後にいったんは教師になったものの、
辞めてしまって現在はニート。
大学卒業後にいったんは教師になったものの、
辞めてしまって現在はニート。
100歳を超えていた祖父が亡くなり、遺品を整理していた紅は
本棚から『サナキの森』という怪談小説を発見する。
売れない小説家だった祖父が、60年ほど前に書いたものらしい。
さらに、その本に挟まれていた封筒は紅へ向けた ”遺言” だった。
本棚から『サナキの森』という怪談小説を発見する。
売れない小説家だった祖父が、60年ほど前に書いたものらしい。
さらに、その本に挟まれていた封筒は紅へ向けた ”遺言” だった。
「遠野市の佐代(さよ)村にある祠に隠してある鼈甲の帯留めを見つけて、
じいちゃん(自分)の墓へ供えてほしい」
じいちゃん(自分)の墓へ供えてほしい」
佐代村を訪れた紅は遺言にあった祠を探るが、帯留めは見つからない。
しかしそこで村の旧家・五条家の娘である
中学生の泪子(るいこ)と知り合い、彼女から意外な事を聞く。
しかしそこで村の旧家・五条家の娘である
中学生の泪子(るいこ)と知り合い、彼女から意外な事を聞く。
泪子の曾祖母・龍子(たつこ)が亡くなったとき、彼女の遺品の中から
見つかった手紙は、紅の祖父が出したものらしい。
見つかった手紙は、紅の祖父が出したものらしい。
そして80年前、龍子の姑にあたる女性が密室の中で殺されていた・・・
物語は、この現代のパートと、紅の祖父が書いた小説『サナキの森』が
交互に語られていく。
交互に語られていく。
この『サナキの森』は怪奇幻想ホラーなのだけど、
<冥婚>という旧習が描かれている。
<冥婚>という旧習が描かれている。
未婚のまま亡くなった男性を哀れんで、”妻” をあてがうというもので
絵馬や人形で済ますこともあるが、
生きた若い娘を本当に妻にしてしまうこともあったという。
絵馬や人形で済ますこともあるが、
生きた若い娘を本当に妻にしてしまうこともあったという。
この『サナキー』で扱われる<冥婚>では、
”妻” となった女性は、”婚姻” が済むと、生涯、”婚家” から
外へ出ることができないというなんとも凄まじいもの。
”妻” となった女性は、”婚姻” が済むと、生涯、”婚家” から
外へ出ることができないというなんとも凄まじいもの。
この<冥婚>で嫁いできた女性のモデルこそ、泪子の曾祖母の龍子。
紅の祖父は、この小説で何を描こうとしたのか・・・
紅の祖父は、この小説で何を描こうとしたのか・・・
横溝正史的な伝奇ミステリに、27歳の紅と14歳の泪子が立ち向かう。
キャラが立ってる二人の掛け合いが面白くて、楽しく読み進められる。
キャラが立ってる二人の掛け合いが面白くて、楽しく読み進められる。
一方、『サナキー』のほうは、なんと旧仮名遣いで書かれていて
ちょっと読むのに難儀(笑)だが、
こういうおどろおどろしい雰囲気は好きなので気にならない。
ちょっと読むのに難儀(笑)だが、
こういうおどろおどろしい雰囲気は好きなので気にならない。
探偵役となるのは紅でも泪子でもなく、”陣野せんせー” なる人物。
紅が高校生の時に通っていた美術系の予備校の講師で
彼女はこの ”陣野せんせー” に片思い中だ。
計算すると10年くらいになるので、なんとも一途なことである(笑)。
紅が高校生の時に通っていた美術系の予備校の講師で
彼女はこの ”陣野せんせー” に片思い中だ。
計算すると10年くらいになるので、なんとも一途なことである(笑)。
トリックとかに目新しいものはないけれど、
ストーリーテリングが巧みなので、
最後まで興味を持って読み終えられる。
この作家さん、もう何冊か読んでみようかと思っている。
最後にどうでもいいことを。
作中、紅は「私は ”陣野せんせー” にフラれた」って言ってるけど、
そんなことはないんじゃないかなぁ。
そんなことはないんじゃないかなぁ。
好きでもない女の子と1時間もの長電話はしないだろうし
わざわざ現地まで行って事件を解決したりしないだろうし。
わざわざ現地まで行って事件を解決したりしないだろうし。
でも、”せんせー” の方にも、
なかなか積極的になりにくい事情はあるよなぁ・・・
なかなか積極的になりにくい事情はあるよなぁ・・・
・・・というふうに私は読んだんだけど、
そのあたり、読者に想像させる余地を残すのも上手いと思う。
そのあたり、読者に想像させる余地を残すのも上手いと思う。