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特選 the どんでん返し [読書・ミステリ]

 

特選 THE どんでん返し (双葉文庫)

特選 THE どんでん返し (双葉文庫)

  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2019/06/14
  • メディア: Kindle版
評価:★★★


「どんでん返し」をテーマにした双葉文庫の
アンソロジー・シリーズもこれで5冊目。
今回は「どんでん返し」をテーマに作家さんに短篇執筆を依頼、『小説推理』誌に掲載された作品を集めたもの。

「神様」秋吉理香子
語り手は女子高生のナナ。3か月前に家を出て、それ以来
体を売って日銭を稼ぎ、ネットカフェで生活してきた。
しかしクリスマスイブの今日、所持金は123円のみ。
いま彼女は『神様』を探してハンバーガーショップで時間を潰している。
”神” とは、彼女の体を買って衣食住を恵んでくれる男のことだ。
そこでナナはルイという少女と知り合う。彼女は援助交際の ”達人” で
ナナに対して効率的な ”商売” の方法をいろいろレクチャーしてくれる。
そこにヒロキという男が現れ、ナナは彼の自宅へ行くことになるが・・・
ヒロキがナナを誘った理由がまず意外なのだが、
その後も状況は二転三転、想定外のラストを迎える。
サスペンス・ミステリとしてはよくできてると思うが、
援助交際を生業にしてる女子高生が主役の時点で
受け入れにくいものを感じてしまうのは、私のアタマが古いのか。

「青い告白」井上真偽
偏差値はそこそこの平凡な県立高校に赴任してきた熱血教師・葛西は、
”生徒のため” と称してさまざまなプロジェクトを考案し実行していく。
その中のひとつ、”落ちこぼれ救済” のために立ち上げた
「できる会」に参加していた女生徒・伊藤はるかが
町の最南端にある岬の断崖から転落死を遂げる。
自殺とも事故ともとれる状況だったが、はるかの幼馴染みだった東は
クラスメイトの古橋薊(あざみ)の協力を得て、真相を探り始める。
とにかく、読み進めると意外な展開の連続で着地点の予想がつかない。
探偵役となる薊さんの推理が導き出す真相も意外だが、
それによって東君はどん底に。正義は人の数だけある、ってことか。
ラストシーンの薊さんのひと言で彼は救われたのかなぁ。

「枇杷の種」友井羊
主人公・蔦林(つたばやし)は、過去の ”事情” により定職に就けず
仕事を転々としていた。いまの職場でも単純作業に従事している。
休日の夜、河川敷を歩いていた蔦林は高校生の変死体を発見する。
この街では連続殺人が起こっており、犯人は同一と思われていた。
警察に第一発見者として取り調べを受けた蔦林は、
解雇されることを覚悟するが、上司の事業部長・陣野は
なぜか蔦林を支えると言って自宅に招くのだが・・・
陣野がいかにも胡散臭く、実際ウラがあるのだが、これは想定の範囲内。
連続殺人事件の犯人も意外だが、私が一番驚いたのは
蔦林の ”事情” の中身だったりする。
”罪を背負う(背負わされる)” にも、いろんな形があるのだろうが・・・

「それは単なる偶然」七尾与史
精神科病棟の一室で行われているのは、催眠療法を使った取り調べ。
大崎医師によって催眠状態に置かれたのは田端清治郎。
小説創作教室の講師をしている田端は、11日前の7月21日に
歩道橋で何者かに突き飛ばされ、4月1日以降の記憶を失っていた。
彼は大崎医師に導かれて少しずつ記憶を取り戻していくのだが・・・
正直、この作品はよく分かりません。
終盤で、ある ”逆転” が起こるのだけど
「?」が10個くらいアタマの中を飛び回ってしまった。
説明されても、「そんなに都合のいい○○○があるのか?」とか
納得できかねる部分がたくさん。まあ私のアタマが悪いせいでしょう。

「札差用心棒・乙吉の右往左往」谷津矢車
主人公の乙吉は、浅草にある札差(金貸し)・播磨屋の主人である
吾兵衛の用心棒兼雑用係を務めている。
ある日乙吉は、貧乏御家人・鈴木半十郎の調べを頼まれる。
還暦を迎えるまで堅実に暮らし、借金なしで生きてきた半十郎が、
最近になって五両貸してほしいと申し出てきたのだ。
しかも差料(刀)を研ぎに出したという。
折しも御徒町界隈では辻斬りが出没していた・・・
江戸時代を舞台にしているが、御家人の世界だからこそ起こった
”事件” であり ”謎” であり、探偵役の吾兵衛もまた
真相を見抜くだけでなく、その後の成り行きまで見通して行動していく。
この時代だからこそ成立するミステリ。
時代小説も読み始めれば面白い作品がたくさんあるのだろうけど
いかんせん、家の中の積ん読本を解消しないことには・・・
それに、書店に行くと時代小説は人気ジャンルみたいで
販売スペースのうちのかなりを占めてたりする。
あの ”物量” を見ただけで畏れ入ってしまうんだよねぇ・・・


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