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みんなの少年探偵団2 [読書・ミステリ]

みんなの少年探偵団2 (ポプラ文庫)

みんなの少年探偵団2 (ポプラ文庫)

  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2018/04/03
  • メディア: 文庫
評価:★★★

往年の「少年探偵団」シリーズの雰囲気そのままの装丁で
明智小五郎と怪人二十面相を蘇らせる短篇アンソロジーの第2弾。
執筆陣は現代で活躍する作家さん5人。

「未来人F」有栖川有栖                                
二十面相逮捕に成功した明智小五郎は、
アメリカFBIからの協力要請に応えて日本を旅立った。
しかしその3日後、二十面相は脱獄してしまう。
そしてその直後、ラジオ局に ”未来人F” と名乗る男から電話が入る。
時空移動機で20世紀へやってきたと称し、さまざまな ”予言” をする。
最後に、東京都立博物所蔵の国宝を消してみせる、と宣言するが・・・
いかにも二十面相的な展開なんだけど
ラストはちょっとメタフィクション的。

「五十年後の物語」歌野晶午
同級生だった岡田が61歳で亡くなった。告別式が終わって
”私” を含めた5人の男女が当時のことを語り合ううちに、
50年前に起こった ”誘拐事件” を思い出す・・・
うーん、見事に騙されましたねぇ。タイトルからして伏線。

「闇からの予告状」大崎梢
主人公・小雪は現代に生きる中学2年生。
彼女の祖母のもとに ”怪人二十面相” からの予告状が届く。
犯罪研究家だった祖父が譲り受けたという、
ロマノフ王家の冠を奪いに来るという。
二十面相と言えば70年以上前に世間を騒がせた怪盗だった。
今でも生きているのなら、ゆうに100歳を超えているだろう。
やがて、犯行予告された日がやってくるが・・・
往年のファンなら、小雪さんの素性は見当がつくだろう。
ここまで来ると、もう明智小五郎も二十面相も
”歴史上の人物” 扱いだね・・・

「うつろう宝石」坂木司
本作に登場する小林くんは、シリーズの時の ”少年” から成長し、
”青年” へとなりつつある時期を迎えている。つまり
“サザエさん時空” だったシリーズの時代から数年後を描いている。
明智小五郎や怪人二十面相も、時の流れを経て
すこしずつその有り様を変え、そんな時期に起こった
大粒ルビー『紅の涙』がついた首飾りの盗難事件を描いている。
盲目的に明智の後を追いかけていた時期を過ぎ、
”日本一の名探偵” に対していくつかの葛藤を覚えるようになった
小林 ”青年” が、ラストで二十面相と言葉を交わす。
シリーズの数十年後を描いた作品はあっても、
数年後を描いた作品は初めて読んだような気がする。
まさに「その発想はなかった」。

「溶解人間」平山夢明
その夜、街を巡回していた小林少年は、
女性の叫び声が聞こえてきた屋敷に飛び込んだ。
そこにいたのは一組の男女、そして全身が溶けた蝋のようになり
髪も皮膚も膿み崩れ、ほとんど髑髏のような顔になった人間。
その両手には、既に溶かされてしまったと覚しき人間の骨を抱えていた。
怪物が去ったあと、小林少年は男女に警察への通報を勧めるが拒否される。
男は化学工業会社の研究員・黒丸英吾、女はその婚約者の小野寺聰子、
そして溶かされてしまったのは黒丸の同僚・清水敬司。
黒丸たちは、政府の意向で極秘の研究をしているのだというが・・・
作者らしいホラーな作品。全体の雰囲気は
『少年探偵団』と『怪奇大作戦』を併せたような感じ。
円谷プロが少年探偵団シリーズを製作したら、こんな風かと思わせる。
個人的には面白いけど、これをそのまま映像化したら
子どもには刺激が強すぎるかな。R-15くらいに指定されそう(笑)。


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