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キングレオの回想 [読書・ミステリ]

キングレオの回想 (文春文庫)

キングレオの回想 (文春文庫)

  • 作者: 挽, 円居
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2019/11/07
  • メディア: 文庫
評価:★★★

舞台はパラレルワールドの日本。
日本探偵公社という組織に所属する名探偵にして、
”キングレオ” こと天親獅子丸(あまちか・ししまる)が主人公。
獅子丸の助手兼語り手となるのは、獅子丸の従兄弟にして
公社のスクリプトライターを務める天親大河(あまちか・たいが)。

このコンビが京都の町を舞台にして起こる怪事件に立ち向かう、
連作短編シリーズの第2巻。

ホームズに対するモリアーティ教授のような、
獅子丸たちの最大のライバルとなるのは
城坂論語(ろんご)という高校1年生。

その論語くんは、獅子丸の画策によって滋賀県の療養所に
”疾病対策のための隔離” という名目で ”監禁” 生活を送っていた。
しかしそんなことで挫ける論語くんではない。
”獄中” にありながらも、さまざまな策略を巡らして
獅子丸たちに絡んでくる。

「大宮の醜聞」
天親獅子丸の弟で、宮内庁の官吏をしている雹平(ひょうへい)が
持ち込んできたのは、さる皇族の醜聞。
一般人女性に恋をし、ある贈り物をした。結局二人は別れたが、
その贈り物が外部に流出しては差し障りがある。
その一般人女性こそ、大河の大学時代の元恋人で獅子丸の友人でもあった
税所密香(さいしょ・ひそか)だった。
この密香さんというキャラは強烈だなあ。峰不二子とタメが張れる。
獅子丸や論語といった錚々たる面々の中で全く埋もれない。
どうやら単発登場になりそうなんだけど、将来また出てくるのかな?

「双鴉(そうあ)橋」
日本探偵公社で、新たにスクリプトライターを公募することになった。
与えられたテーマを元に、プロットを競作させ、それを審査する。
テーマとなったのは、人気イラストレーター・風上(かざかみ)美佐子が
京都市内の双鴉(そうあ)橋で射殺死体となって発見された事件。
それ自体は獅子丸が出馬し、自殺として解決していた。
大河の友人で、売れない作家をしている鳥辺野有(とりべの・ゆう)も
応募することになったが、他にも2人の応募者が。
しかもそのうちの一人は城坂論語が差し向けた者らしい・・・

「六つの土下座像」
採用となった鳥辺野有だが、慣れない仕事に自信が持てないでいた。
そんなとき、京都市内で ”高山彦九郎像” にまつわる怪事件が起こる。
”高山彦九郎像” とは、三条大橋の袂に設置されているもので
通称が ”土下座像” というもの。これのレプリカ(張りぼて製)が
市内の各所に突然現れるというものだった。すでに2カ所に現れていて
有が警察に問い合わせたところ、既に3体目が出現しているという。
投稿動画サイトには、犯人グループの手になると思われる
「作ってみた」動画がアップされていた。
獅子丸は彼らに対抗して、有とともに
「推理してみた」動画の製作を始めるが・・・
終盤では、獅子丸の天才的な推理の秘密が明かされる。

「タチバナの種五つ」
獅子丸宛てに、柑橘系の種が5つ入った封筒が届く。
差出人は「京都地方検察庁」所属の検事・天親寅彦、大河の弟だ。
獅子丸が解決した国吉事件の結果に異議があり、
公社と検察の間で特別審問を開くのだという。
資産家国吉家の当主・力人(りきひと)が自宅で死体で見つかり、
獅子丸の突き止めた犯人は力人の双子の妹・水乃(みずの)だった。
水乃の自供した犯行時刻後にも、被害者が生きていた証拠が現れたのだ。
5つの種は、獅子丸や大河、寅彦たちの幼少期のエピソードに関わる、
ある事件の象徴。それを ”解決” した獅子丸の ”豪腕” ぶりもスゴい。

「最後の事件」
国吉事件の解決に関して味噌をつけた獅子丸は、
突然の引退宣言とともに消息を絶ってしまう。
しかし彼の活躍を映画化した「名探偵レオ 天空の密室」の公開が
迫ってきたことで、そのプロモーションに協力すべく
1か月ぶりにその姿を現した。
一方、”隔離” されていた城坂論語が脱走したという知らせが。
獅子丸は、映画プロモーションの一環として行われる
豪華飛行船オートクレール号を借り切っての空中試写会に臨むが
京都を発進した直後、船内に論語が現れる・・・

いずれの作品もホームズ譚を下敷きにしたミステリなのだけど、
”モリアーティ教授” の役回りである論語くんは、
「最後のー」を除いて、事件の表舞台には出てこない。
水面下で策謀を巡らすのが本シリーズでの論語くんの役回りだから。

悪の親玉(?)ぶりがすっかり様になってるんだけども、
前作でも書いたけど論語くんってこんなに性格悪かったかなぁ?

これからの獅子丸との対決ですこしは成長していくのか、
猫を被ることを覚えるのか。

「最後の事件」では、獅子丸と論語が原典に倣った結末を迎える。
かと言って2人とも死んでしまうということはない。
だって原典でもホームズは死んでないし。

作者もこれで終わらせるつもりは無くて、
「このミステリーがすごい!」でも続きを書くと言ってるみたいなので
遠からず獅子丸と再会できるはず。

原典ではモリアーティ教授は死んでしまうけど、
論語くんのほうも、2年後には「ルヴォワール・シリーズ」での
大活躍(?)が待ってるはずなので、こちらも無事に姿を見せるはず。


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