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「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」第四章予告 60秒ver.公開 [アニメーション]


15日の夜に公開されてたのは知ってたんだけど、
16日に「スターウォーズ 最後のジェダイ」を
観に行くことに決まってたのでそっちを先に記事に書いた。

とは言っても、「スターウォーズ」の方は16日のうちに
記事を完成してupする予定だった。

でも映画を観た後は、かみさんともども
親類の寄り合いに出ることになっていて、
そこで私は酒をたらふく呑んでしまって(^^;)
とても記事を書ける状態ではなくなり、1日遅れてしまいました。

閑話休題。

毎度のことながら、観ながら思ったことをダラダラ書くことにします。



・「久しぶりだね、ヤマトの諸君」
 やっぱり第一声はこれしかないでしょうなあ。
・ワープアウトする巨大ミサイル群。
 「ほぼ全周からミサイル接近!」
 そういえば10話から雪さんはレーダー要員に復帰してましたね。
 さて南部くんの "デスラー戦法" って台詞が聞けるのでしょうか(笑)。
・「私はサーベラー。唯一の存在」何か意味深な台詞です。
 山本との対決の結果は如何に。
・「罠かも知れん」土方さん、今回も指揮を執るシーンがあるのですね。
・「島!」「ワープ!」以心伝心なんですかね。
 もうこの二人には会話は必要ないのでしょうか。
 でもワープした先にも敵がいそうな気がします。
・「重師団(?)集結!」よく聞き取れません。
 ザバイバルvs斉藤の無制限一本勝負は観られるのですかね?
・「破滅ミサイル発射ぁ!」山路さんの声で聞くとホント威力ありそう。
 旧作のときは「破滅ミサイル」なんてダサいネーミングだなあって
 思ってたけど、リメイク版のガトランには「火焔直撃砲」といい、
 そのものズバリでストレートなネーミングがよく似合う不思議。
・ここでタイトル「第四章 天命編」。
 バックはノイ・デウスーラと巨大ミサイルさんたち(笑)。
・「どうやらあのフネは何一つ変わって(?)いないようだ」
 私には「かって」って聞こえるんだけど、
 それだと意味が通らないよねえ。横にいるのはミルさんですね。
・巨大ミサイルの爆発でさえ遮る波動防壁。ちょっと便利すぎ?
・艦首魚雷を発射するヤマト。
 目標はテレザード星を包囲するゴーランド艦隊か。
・「我らガトランティスは作られし命」語るのはゴーランド?
 ズォーダーだけでなく高級幹部はみな知ってるんですかね。
・「艦尾魚雷装填!」「てぇー!」
 この戦場はどこ? 青い背景は亜空間にも見えるが・・・
・「あなたはいずれヤマトを裏切る」サーベラーとキーマン。
・とにかく戦闘シーンはミサイルだらけ(笑)。
・ザバイバルが握るスイッチは何?
・「これはイスカンダルへ旅したものが等しく背負う十字架だ。
  自ら呪縛を絶たない限り、ヤマトに未来はない!」
 いつものことながら、神谷ボイスで言われると
 なんだか逆らえない感じがする不思議(笑)。
 台詞のバックには空間騎兵隊のパワードスーツ、
 大帝に(?)首を絞められるサーベラー(なぜ?)、
 炎に包まれた空間をすすむヤマト、そして大帝の歯ぎしり。
・「最善の射程を確保し、波動砲を敵艦隊に直撃させる!」
 いよいよ人に対して波動砲を向ける覚悟をするのか、古代!
・「デスラー砲、発射用意」虚空をすすむデスラー砲の光芒。
・そして「私は屈辱を忘れん男だ」で締め。
 デスラーで始まりデスラーで終わる予告編でした。

いよいよ古代は波動砲を対人戦闘に投入する覚悟を決めるようですね。
波動砲を撃たなくてもファンから文句を言われるし、
撃ったら撃ったでまた別なファンから文句を言われるんだろうなあ。
ヤマトのリメイクはつくづく大変だ。

かみさんにもこの予告編を見せてみたんだが
デスラー(というか山ちゃん)のファンだから、喜んでたよ。

「やっぱりデスラーよねえ。彼が出なくちゃダメよねえ」
「まあそうだろうね。出さないとファンが暴動起こしそうだしね」
「でも今回のデスラーってなんかあっさりした顔つきしてない?」
「え? オレはあんまり感じないけど・・・
 まあ、苦労して締まった顔になったのかもよ(←いい加減)」
「ふーん(納得していない表情)」

さてデスラーといえば、今のところ彼の周囲には
他のガミラス人がいないのだけど、タランはどうしたのでしょうかね?
ガトランが助けたのはデスラーだけなのか・・・?
できればゲール君にも登場して頂いて
二人の掛け合いなんて観たいのだけど無理かしら。

タラン「こちらは頭脳労働担当、あちらは肉体労働担当」
ゲール「これでギャラは同じ!」

さすがにこれはないか・・・(笑)。

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スターウォーズ 最後のジェダイ [映画]

lastjedi.jpg
※本編のネタバレはありません。

昨日(12/16)の午後、観てきました。

観るのは年明けでもいいんじゃないかあ、なんて思ってたんだが、
最近のシネコンというものは、封切りして時間が経つほど
上映回数も減り、ハコも小さくなり、上映時間帯も夜遅くになったりと
だんだん見づらくなってくるんだよねえ。
まだまだ勤め人ですから、そうそう自由になる時間も多くないので
観る時間帯を選べるうちに観てしまうというのもアリかなと。
ま、一番大きな理由はかみさんが
「一日でも早く観たい!」ってのたまわったからなんだが(笑)。

閑話休題。

スターウォーズシリーズって、各エピソードの間には
けっこう時が流れてる設定のはず。
たしかエピソード4「新たなる希望」と5「帝国の逆襲」の間は
3年くらい経ってる設定だったと記憶してる。

ところが今回は、前回の「フォースの覚醒」の
ラストシーンからそのまま続く。

ヒロインのレイがルークに出会って
ライトサーベルを差し出すシーンの直後から始まってるのだ。

スターウォーズシリーズは、
事前の情報がない方が楽しめるのは間違いないので
極力内容に触れないように書くけど、
ある程度は仕方ないとも思うのでその辺はご容赦を。


さてその頃、レジスタンスの基地を帝国の艦隊が襲ってくる。
前回のラストで負傷したフィンも意識を取り戻したのも束の間、
レジスタンスは基地を放棄して脱出、帝国軍の追撃を受けることになる。

前作「フォースの覚醒」は、
30年後の世界と新しいキャラを使って「新たなる希望」を
語り直しているような展開を見せた(と私は感じてるんだが)
そういう目で見ると今回は「帝国の逆襲」のような出だしである。

となると、各キャラの立ち位置も
レイ → ルーク、カイロ・レン → ダース・ベイダー、
そしてルークはオビワンかヨーダの役回りになる、って思うだろう。

その予想は当たる部分もなくはないが、結果としては大きく外れる。
それもかなり斜め上の方向にだ。
「帝国の逆襲」のつもりで観ていたらいつのまにか・・・だったよ。

たしかに、前作と同じことを繰り返すのなら作る意味がないからねぇ。

とくに中盤では意表を突くシーンがあって
ここがストーリーの大きな転回点になるのだけど、
いやはや、この展開を予想できた人は
いないとはいわないがごく少数でしょう。
私なんか「えー!」って叫びそうだったよ(叫ばなかったけどwww)。

うーん、ストーリーに触れずに紹介しようという試み自体が
無謀なのかな(笑)。

基本的には楽しんで観させてもらったのだけど、
やはり2時間半は長いかなぁ。

見せ場たっぷりでサービス満点なんだけど、フルコースの食事も
メインディッシュばかり出てくると途中でもう満腹になってしまう。

山場が終わったなあと思っても、また次の山場がやって来て
本当の(いちばん見せたい)山場はいつやってくるの?
って、観ながらちょっと悩んでしまったよ(笑)。

緩んでると言うつもりは毛頭ないんだけど、
もうちょっと枝葉を刈り込んで2時間10分くらいにして
起承転結をはっきりさせた方が
観やすくなったんじゃないかなぁ、とは思う。

 でもまあ、製作陣としては「アレも見せたい」「コレも見せたい」
 ってあったんだろうなあとも思う。

あと、個人的なことを言わせてもらうと
2時間半もあるからトイレが心配になってしまう。
実際、昨日は朝から水分を控えめにして映画に備えてたよ(笑)。


あとは、感じたことをいくつか挙げておいて終わりにしよう。

今回、フィンの相棒として活躍する女の子が登場するのだが
演じているのはアジア系の女優さん。
お世辞にも美人とは言えないんだけど、元気いっぱいでかなり目立つ。
こんな感じのお笑い芸人がいそうな雰囲気だが、ふと考えてしまった。
これはアジア圏(とくに中国)の上映を考えてのキャスティングなのかも。
中国の映画市場も無視できない大きさになってきたのだろうからね。
最近のハリウッド映画では、アジア系(それも中国系)の俳優さんの
登用が目立つと思ってたんだが、
ついにスターウォーズにもそれがやって来たのかな。

レイアについて、「これは!」というシーンがある。
さすがはアナキンの娘である。「帝国の逆襲」では、
ヨーダが「もう一人の希望」って呼んでたのを思いだしたよ。

終盤近く、ルークとレイアが会話するシーンがあるんだが
思えば39年前、映画館で初めてこの二人を観た身としては
感慨深いものがあったねえ。あのとき私はまだ十代だったよ。
レイア役のキャリー・フィッシャーもすでに亡く、
エピソード9では登場シーンは無いと製作陣は語ってるらしいから
今作がスクリーンでの彼女の見納めでもある。
つくづく時の流れを感じたよ。
ああ、何もかも皆懐かしい・・・


ディズニーは、エピソード10~12の作成を決定したらしい。
漏れ聞くところによると、新三部作は
スカイウォーカー家の物語から離れるとのことだ。
ということは、次回のエピソード9は、
スカイウォーカー家の物語の最終作であり、
かつ新シリーズへのつなぎとなるのかも知れない。

次作でカイロ・レンの物語に何らかの形で決着がつき、
それによってスカイウォーカー家の話はこれで完結、ってなるのだろう。


さて、来年にはハン・ソロの若き日を描いたスピンオフ映画が公開され、
2019年にはエピソード9の公開が予定されてる。
毎年スターウォーズシリーズの映画が観られるなんて
つくづく、いい時代になったものです(笑)。

問題は、私が生きている間に完結するのかということ。
エピソード48「ジェダイはつらいよ・銀河慕情」
なぁんてことにならないようにね(爆)。

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バチカン奇跡調査官 楽園の十字架 [読書・ミステリ]


バチカン奇跡調査官 楽園の十字架 (角川ホラー文庫)

バチカン奇跡調査官 楽園の十字架 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 藤木 稟
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2016/12/22
  • メディア: 文庫
評価:★★★

カソリックの総本山、バチカン市国。
世界中から寄せられてくる "奇跡" 発見の報に対して
その真偽を判別する調査機関『聖徒の座』。

そこに所属する天才科学者の平賀と、
その相棒で古文書の解析と暗号解読の達人・ロベルト。
「奇跡調査官」である神父二人の活躍を描く第14弾。
長編としては12作目になる。


平賀とロベルトは、ハイチへの出張を命じられる。
2010年の大地震で倒壊した首都の大聖堂が再建されたことを祝して
開かれる祝賀会へ、ラングロワ枢機卿の代理として出席するためだ。
二人はハイチの首都・ポルトープランスへ向かう。

そしてそのついでに、式典終了後には彼らには一週間の休暇が
"強制的に" 与えられることになっていた。
普段から多忙を極めてい二人は、ろくに休んでいなかったからである。
うーん、勤勉だね。

現地での祝賀会のあと、二人はルッジェリという男と知り合う。
彼は業界で第3位のクルーズ会社の社長である。
二人はルッジェリから誘われ、豪華客船エクセルシオール号に
乗り込んで、ハイチからマイアミへ向かう
カリブ海クルーズへ出発することになった。

出航して2日目、エクセルシオール就航10周年を祝うパーティのさなか、
乗客たちは異様な光景を目撃する。

突如として海から激しい飛沫が上がり、
水面が割れてそこから高さ30mあまりにもなる
巨大な十字架が出現したのだ。

乗客たちが驚嘆して注視する中、
十字架は再びゆっくりと海中へ没していく。

折しも、客船は、過去数十年にわたって怪奇現象が続発していた
バミューダ・トライアングルにさしかかっていた。
直ちに二人は奇跡調査に乗り出すことになる。
ああ、たとえ休暇中でも、"奇跡" の方からやってくるんだねぇ(笑)。

乗客たちは奇跡の話題で持ちきりになるが、
そんな中、凶悪な事件が発生する。

客室のベッドの上で、腹部を始めとして体中を切り刻まれた
青年ジェラールの死体が発見されたのだ。
部屋の壁にはヴードゥの秘文字で死に神の印が描かれ、
枕元には髑髏が置かれていた。

その現場へ、カルロスと名乗る男が現れる。
彼はCIAの捜査員で、ポルトープランスに潜伏する
テロ集団『ペトロの掟』を追ってきたのだという。
平賀とロベルトは彼に協力し、犯人を捜し始める。

カルロスは、ジェラールの部屋の通話記録から
ジャック・ルーモンとその妻シンディが怪しいと睨む。
しかし、船内で開かれた仮面舞踏会でシンディは突然錯乱し、
バーベキューの焔の中に飛び込んで全身やけどを負い、死亡してしまう。


船内で起こる事件の裏には、ハイチとマイアミを行き交う
客船を利用した陰謀が潜んでいる。
平賀とロベルトの活躍がそれを暴いていくんだが
このあたりは、通常のミステリやサスペンスとあまり変わらない。

本書でいちばんの謎は、やっぱり "十字架の奇跡" だろう。
なぜ海が割れたのか、なぜ海面を割って浮上してきたのか、
そしてそもそも、あの十字架の正体は何だったのか・・・

毎回、いかにも奇跡っぽいものが実はそうではないことが
平賀くんの手によって明らかになるのだけど
それなら、何故あんなことが起こったのかが
説明できなければいけない。

毎度のことながら、彼がひねり出してくる理屈づけ(説明)は、
「そういう解釈もできるよね」
「そうなる可能性もゼロではないかもね」レベルなんだけどね。
でもその内容がいかにももっともらしい法螺で、しかもとても面白い。

というか、それを面白いと感じる人がこのシリーズを読んでるんだろう。

毎回思うけど作者は勉強してる。
今回も、海や海底についての最新の知見を盛り込んで
魅力的な "奇跡" を創造、演出してみせる。

でもネタがわかってみると、今回の "十字架の奇跡" は
ストーリーの本筋にはほとんど関係なかったりして(笑)
まあそのへんはご愛敬だね。

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池袋カジノ特区 UNOで七億取り返せ同盟 Ⅰ プチ・コン編 / Ⅱ グラン・コン編 [読書・ミステリ]


池袋カジノ特区 UNOで七億取り返せ同盟 I: プチ・コン編 (新潮文庫nex)

池袋カジノ特区 UNOで七億取り返せ同盟 I: プチ・コン編 (新潮文庫nex)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/07/28
  • メディア: 文庫
池袋カジノ特区 UNOで七億取り返せ同盟 II: グラン・コン編 (新潮文庫nex)

池袋カジノ特区 UNOで七億取り返せ同盟 II: グラン・コン編 (新潮文庫nex)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/07/28
  • メディア: 文庫
評価:★★★

舞台となるのはパラレルワールドの日本。

池袋はカジノ特区となって日夜を問わず巨額の金が飛び交い、
その裏では様々な地下勢力が蠢く無法地帯となっていた。

その "闇の帝国" を支配するのは、
池袋警察署長・有我法然(あるが・ほうねん)。

一介の交番勤務の警官から身を起こし、
類い希なる有能さで異例の昇進を遂げ、
特区となった池袋署長になると同時に
カジノと犯罪組織の融合、周辺のリゾート群からも資金を吸収して
"闇のネットワーク" を確立し、警視庁さえも介入できない
"治外法権区域" を作り上げたのだ。


さて、この作品世界は同じ作者の『天帝』シリーズと同一のもの。
主人公となるのも同じく古野まほろくん。

しかし本書が『天帝』シリーズと異なるのは、
時間軸が10年後になっていること。
まほろくんも高校生から成長して28歳の堂々たる若者に。
もっとも、職業は売れない劇団員をしているのだが。

そのまほろくんが池袋のカジノで、
何と6億を超える額を一夜にして稼ぎだしてしまう。
しかし有頂天になったのも束の間、
カジノ側の罠にはまって警察に逮捕され、もちろん6億円もフイに。

しかしそんなまほろくんに強力な助っ人が現れる。
彼への仕打ちに憤る高校時代の同級生3人が集まったのだ。

6億円を取り返し、有我法然の鼻を明かしてやるべく、
彼ら4人がまず目を付けたのは
有我法然の道楽息子・光然(こうねん)だった・・・


まほろくんとともに立ち上がったのは
『天帝』シリーズでもレギュラーとして活躍していた3人。
みな10年の歳月を経て様々に成長している。

柏木照穂は警視庁のキャリア官僚となり、現在は警視にして外事課長。
峰葉実香は大手出版社の敏腕編集者、
そしてビックリしたのは修野茉莉。
なんとイタリアの侯爵(実はマフィアのボス)に嫁いだが
その夫が暗殺され、未亡人になっていた。
しかし組織はしっかり彼女が掌握し、
今でも手足のように使いこなしてる(えーっ)。

裏表紙の惹句には「コン・ゲーム」ってある。
たしかに、この4人が有我法然をペテンにかけて
金をかすめ取ろうとする話を描いている。

だけど、通常のコン・ゲーム小説なら、
成功するか失敗するか綱渡り、
のるかそるかのハラハラドキドキな展開がお約束のはず。

ところが、この4人が集まると強力すぎて(笑)、
そのへんの緊迫感をあまり感じない。
だって10年前の高校生の頃だって、
このメンバーは超高校級の超人ばかりだったからねえ。
ましてやそれ以来幾星霜、地位・権力・経験・財力その他もろもろを
身につけてきた彼ら彼女らは、もう半端ない破壊力を持つ集団になった。
特に後半に入ってからは修野茉莉嬢の設定がチート過ぎて
「もう全部あいつ一人でいいんじゃないか」(笑)な状態。
(もちろん他の3人とも役割をしっかり果たしているけれどもね)

こうなってくると、この4人に狙われた法然が
逆に可哀想に思えてくる(笑)くらいだ。
とは言っても、今まで散々悪事の限りを尽くしてきたわけだから
同情心は湧かないけどね(笑)。

コン・ゲーム小説というよりは、
成長した『天帝』シリーズのメンバーによるクライム・コメディ。
高校卒業10周年を迎えた古野まほろくんの
ほろ苦くてちょっと危険な同窓会がユーモアたっぷりに綴られる。

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墓守刑事の昔語り 本格短編ベスト・セレクション [読書・ミステリ]


墓守刑事の昔語り 本格短編ベスト・セレクション (講談社文庫)

墓守刑事の昔語り 本格短編ベスト・セレクション (講談社文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/01/13
  • メディア: 文庫
評価:★★★

2012年に発表された短編本格ミステリから、
本格ミステリ作家クラブによって選出されたベスト・アンソロジー。

「バレンタイン昔語り」麻耶雄嵩
"神様探偵" シリーズの一編。
語り手・桑町淳は小学6年生。そして同級生の鈴木は
過去、二回の殺人事件で犯人を言い当てた "神様" である。
淳の同級生・川合高夫は、2年前に
神社裏の池で溺死体となって発見された。
殺したのは誰か?  淳の問いかけに鈴木は
「犯人は依那古朝美だよ」と答えるが、それは淳が知らない名前だった。
しかしその一週間後、転校してきた生徒・依那古雄一の
母親の名が "朝美" だということが判明する・・・
登場人物がみんな小学6年生の割に、思考が大人すぎるのに
ちょっと違和感を感じるが、ミステリとしては切れ味鋭い。
そして何より、主役の淳のキャラがユニークで面白い。私は好きだ。

「宗像くんと万年筆事件」中田永一
他のアンソロジーで既読。
"私" が小学6年生の時、その事件は起こった。
クラスメイトが持ってきた万年筆がなくなってしまったのだ。
そしてその万年筆が "私" のランドセルから見つかった。
犯人とされた "私" はクラスからいじめに遭い、
担任が "私" を見る目も厳しくなった。
しかしその中で一人、宗像くんだけは "私" を信じ、
クラスメイトを廻って情報を集め、ついにはクラス全員の前で
"私" の無罪を立証するべく奮闘するのだが・・・
ミステリなのだけど、心温まる話だ。
初読の時、いつか宗像くんと "私" が再会する話も読みたいなあ、
って書いたのだが、どうやらシリーズ化されるらしい。これは朗報。
ちなみに「中田永一」は、「乙一」氏のペンネームの一つ。

「田舎の刑事の宝さがし」滝田務雄
田舎の警察署に勤務する、黒川と白石という
二人の刑事の活躍を描くユーモアミステリ・シリーズの一編。
地元に伝わる『垂助(たれすけ)の隠し金』伝説。
江戸時代の大泥棒 "花不見(はなみず)の垂助" が、
この地に巨額の財宝を隠したというもの。
垂助が隠れ住んでいたと言われる蒼花(あおはな)山は、
現在その子孫とされる蒼花垂太(たれた)の私有地となっていて
垂助の財宝の実在を信じて捜す研究グループ「垂助会」と
トラブルを起こしていた。そんなとき、
「垂助会」会長・田唐有蔵(たから・ゆうぞう)の死体が発見される。
死因は高所からの転落かと思われたが、蒼花山は小高い丘に過ぎず、
高い崖のようなものはどこにも存在しなかった・・・
ユーモアたっぷりの黒川と白石の掛け合いが楽しい。
このシリーズを読むのはこれで2作目。
どちらも黒川の奥さんってちょっとしか出てこないんだけど
存在感は抜群。どんな人なんだろう。とても興味が湧くなあ。

「絆のふたり」里見蘭
妻に死に別れ、男手ひとつでクリーニング店を切り盛りする英輔。
その父に、親子を超えた愛情を感じている娘・萠絵美。
その英輔が、早苗という女性を連れてきた。彼女と結婚したいという。
しかし早苗の様子に不審なものを感じる萠絵美は・・・
いやあ、このラストが予想できる人はいないんじゃないかなぁ。
恐れ入りました。でも、このエンディングは
本格ミステリというよりはホラーですよねぇ・・・。

「僕の夢」小島達矢
他人の夢に入り込み、その夢を自由自在にコントロールする。
そんな特殊能力を持った "僕" は、大学の講義にも出ずに
「夢占い」の看板を出して、訪れた客の夢の中に入る日々。
そんな "僕" の現在と過去を描いていく。
ミステリというよりは不条理SFみたいな感じ。
こういうのはあんまり好きじゃないなぁ。

「青い絹の人形」岸田るり子
他のアンソロジーで既読。
主人公のゆかりは、大学准教授の父とその再婚相手・美咲との
3人でパリへ旅行に来ていた。
そこでゆかりは自分のパスポートを紛失してしまうが
日本大使館から連絡が入り、パスポートを拾って届けた者がいるという。
受け取りに行ったゆかりは意外な人物に遭遇する・・・
プロローグで撒かれた伏線が、ラストでかっちりと回収されて
切れ味鋭い結末を迎える。
サスペンス・ミステリのお手本みたいな作品。

「墓守ラクマ・ギャルポの誉れ」鳥飼否宇
中東の某国にあるジャリーミスタン刑務所には
世界中から集められた死刑囚が6000人も収監されている。
そこで起こる謎の事件の数々を綴ったシリーズの一編。
囚人の一人、ラクマ・ギャルボは刑が執行された囚人の墓を堀るという
皆が厭がる仕事をすすんで引き受け、周囲からは変人と見なされていた。
そのギャルボについて奇怪な噂が広がる。
刑が執行された囚人の墓を暴き、死体を喰らっていたというのだ。
さらに、噂を確かめようと彼を見張っていた囚人の前で
再び墓を暴いたことにより、
ギャルボは死体損壊の罪で死刑の執行が決定する・・・
なぜギャルボは墓を暴いたのか。
探偵役となる老囚人シュルツによって、
この特殊な場所ゆえに生じる、特殊で意外な動機が明かされる。
鳥飼否宇って、初期の作品は読んでたんだけど、
いつからか離れてしまったんだよねぇ。
でも、このジャリーミスタン刑務所を舞台にした
連作短編集「死と砂時計」(この作品も収録されてる)は
久々に手に入れたので、そのうち読む予定。

「ラッキーセブン」乾くるみ
ある女子高校の生徒会室。そこに集まった7人の生徒。
その7人は、その中の一人が考案した "ゲーム" を
始めることになるが、それがお互いの命を取り合う
サバイバルゲームになるとは誰が予想したろうか・・・
とにかく、ゲームのルールが難しい。
単純そうなんだが考え出すとけっこう大変。
1対1の対戦型なんだが、相手の手の内の読み合い、
どのカードを切っていくべきかの駆け引きが理詰めで語られていく。
このあたりが "本格ミステリ" に通じる論理性なんだろうが
私にはホラーにしか感じられなくて、まったく楽しめない。
やっぱり、この人とは
デビュー作「Jの神話」以来、相性が悪いみたいだ。

「機巧のイヴ」乾緑郎
江戸時代を思わせる世界を舞台にしたSFミステリ。
昆虫や鳥を、機械仕掛けで複製する幕府精錬方手伝・久蔵。
いわばロボット職人だ。その出来映えは、
本物と全く見分けがつかないほど。
その久蔵へ、江川仁左衛門はある依頼をする。
遊女・羽鳥とうり二つの機巧人形を作って欲しい、と。
書き下ろしSFアンソロジー「NOVA」で既読。
SFならではの "オチ" がその時はあまり好きになれなかった。
でも今回、ミステリのアンソロジーの中で再読してみたら、
けっこういけると思ったよ。

「コンチェルト・コンチェルティーノ」七河迦南
冒頭で「佐藤」という姓の看護師が殺されたことが明らかにされ、
本編に入ると時間を戻して、ある病院での
一人の医師を巡る看護師たちの人間模様が綴られていく。
ところが、登場する看護師たちがみんな名前でしか描写されない。
つまり、"誰が殺されるのか" がテーマのミステリなのか・・・?
このあと例によって捻りのあるラストが明かされるのだけど
最後の最後でもう一撃。いやあ参った。

「『皇帝のかぎ煙草入れ』解析」戸川安宣
これは創元推理文庫で刊行された同題のミステリの
巻末に収録された解説文である。
この長編はカーの代表作の一つであるのだけど、
内容の紹介が難しい作品でもある。
だって、この作品の「どこがすごいのか」を未読の人に説明するのは
ほとんどネタばらしをするようなものだからだ。
この文章は「解説」であるから、
本編を読了した人に向けてネタバレを気にする必要なく、
本書の "スゴさ" を微に入り細を穿って "解説" してくれる。
だから、この文章を読みたいと思う人は、まず本編を読みましょう(笑)。

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絞首台の謎 [読書・ミステリ]


絞首台の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

絞首台の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: ジョン・ディクスン・カー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/10/29
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

パリの予審判事アンリ・バンコランとその友人ジェフ・マールは
演劇「銀の仮面」を観るために霧深い晩秋のロンドンへやってくる。

2人は高級会員制クラブである「プリムストーン・クラブ」に滞在する
元ロンドン警視庁副総監サー・ジョン・ランダーヴォーンに会う。
クラブのラウンジで、サー・ジョンは不気味な話を語り出す。

彼の友人ダリングズが酒場からの帰りに霧の中で迷っていたところ、
ある家の横手に縄をぶら下げた首吊り台のシルエットが浮かび上がり、
何者かの影がその絞首台の階段を上がっていったという。

その話の直後、ラウンジの椅子の上に奇妙なものが見つかる。
それは精巧に作られた絞首台の模型だった。
従業員によると、クラブの滞在客であるエジプト人エル・ムルク宛てに
小包で送られてきたものらしい。

そしてその晩、観劇を終えて街路に出た3人が見たものは
警官の制止を振り切って暴走する1台のリムジン。

すれ違いざまにジェフの目に飛び込んできたのは
耳から耳まで喉を切り裂かれて絶命している運転手の姿。

直ちにタクシーで後を追う3人。
リムジンは交通法規一切を無視して爆走し、
やがてプリムストーン・クラブの前で停車するが
追いついた3人が車内で見つけたのは男の死体のみだった。

リムジンの持ち主はエル・ムルク、
死んでいたのは彼のお抱え運転手だったが
エル・ムルク自身はその晩クラブから
リムジンに乗って出かけた後、戻ってきていなかった。

そしてその晩、警察署に匿名の電話がかかってくる。
「エル・ムルクがルイネーション(破滅)街で絞首台に吊されたぞ」

しかし、ロンドンの地図には
"ルイネーション街" という地区は存在しない・・・


全体から受ける印象は、推理小説というよりは探偵小説。
全編にわたって怪奇趣味が満載で、横溝正史の初期作品とか
江戸川乱歩の怪奇短編に通じる雰囲気がある。

舞台となるのは、見るものすべてが霧に沈む街・ロンドン。
「霧に浮かぶ絞首台の影」とか
「死人が運転するリムジンが濃霧の中を疾走する」とか。
その手のものが大好きな人にはたまらないだろう。

ただ、ミステリとしてみるといささか残念な気もする。

リムジンの謎も分かってみるとちょっとがっかりだし
終盤で明らかになる "仕掛け" も、
90年前ならともかく(本書の発表は1931年)
現代でこれをやったら噴飯物だろう。
「少年探偵団」シリーズあたりでよく見たような気がするネタだ(笑)。

そして一番の問題は、ミステリを読み慣れた人なら
かなり早めに犯人の見当がついてしまうことかな。
カーといえば、密室や不可能犯罪のみならず、
犯人の意外性もかなりのもののはずなのに。

事件やイベントをつなげて、最後まで面白く読ませる
ストーリーテリングは充分に発揮されてると思う。
むしろ、作者には犯人を隠すつもりが
(あまり)なかったようにも感じさせるのだけど、まさかね。

本書はカーのデビュー第2作。
前作「夜歩く」で登場し、ジェフといい仲になった
シャロン・グレイ嬢の再登場が個人的には嬉しいところ。
もっとも、ジェフとの恋人関係は終わってたみたいだけど(笑)。

雰囲気だけなら★3つ半。ミステリとしてなら★1つ半。
あわせて★2つ半というところで。

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ウィンディ・ガール/ストーミー・ガール サキソフォンに棲む狐Ⅰ/Ⅱ [読書・ミステリ]


ウィンディ・ガール~サキソフォンに棲む狐I~ (光文社文庫)

ウィンディ・ガール~サキソフォンに棲む狐I~ (光文社文庫)

  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2014/11/20
  • メディア: Kindle版
ストーミー・ガール: サキソフォンに棲む狐II (光文社文庫)

ストーミー・ガール: サキソフォンに棲む狐II (光文社文庫)

  • 作者: 田中 啓文
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2017/02/09
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

主人公・永見典子は須賀瀬高校の吹奏楽部に所属する1年生。
2年前、典子が中2の時に父の光太郎は新宿で変死し、
今は母の瑤子と二人暮らしである。

典子は中1の時にアルトサックスと出会い、その魅力に取り憑かれて
吹奏楽部を3年間続けた。高校でも入学と同時に
質屋で中古のアルトサックスを見つけ、格安で手に入れた。

しかしそんな典子に対し、なせか瑤子はいい顔をしない。
ことあるごとに吹奏楽をやめ、サックスを手放すように言い続ける。
理解のない母親との間に口論が絶えない毎日である。

本書についた変わったサブタイトルだが、
実は典子が持つサックスにはキツネが "住んでいる" のだ。

楽器の管に入るくらい小さくて、人の言葉を話し、
自らを "クダギツネのチコ" と名乗る。
もちろん典子以外の人間には見えない。
どうやら妖怪か妖精の一種のようで、"本人" 曰く
「永見家は代々のキツネ持ち」なのだそうだ。

とは言っても本書は伝奇小説の類いではなく、
チコも超常の力を示したりはしない。
もっぱら典子の漏らす愚痴の聞き役である。

高校の吹奏楽部でサックス演奏に打ち込むうちに、
典子は次第に吹奏楽からジャズへと興味が拡がり、
やがて学校外へ演奏の場を求めるようになる。

その間、いくつかの事件に遭遇していくのだが
その都度、チコは推理を巡らせて典子に真相を囁いてくれる。
本書はなんと "妖怪" が探偵なのだ。

そして物語が進むうちに、彼女は少しずつ父の死の真相に近づいていく。

典子の音楽的な、そして精神的な成長の物語を
ミステリがらみで綴られていく連作短編集である。


「ブラックバード Blackbird」
典子の通う高校の近くに、
全身黒ずくめの怪人 "カラス男" が出没するという。
単なる噂だと典子たちは思っていたが、
吹奏楽部の練習中、部員の美登里祥子が何者かに襲われる。
そして彼女の唇にはカラスの羽が刺さっていた。

「ミッドナイト Midnight」
典子は、深夜の学校で楽器を演奏する音が聞こえたという話を聞く。
そんなとき、学校に耐震補強工事が入ることになり
吹奏楽部は2日間の活動休止に。しかし県大会が迫っているため
各自が家で練習することになっていた。
しかし典子はマウスピースを学校に置き忘れてしまっていた。
深夜の学校に忍び込む羽目になった典子は、意外な光景に出会う。
棚にしまってあったはずの楽器類が引き出され、
音楽室の床じゅうに散乱していたのだ。

「フェイバリット Favorite」
須賀瀬高校吹奏楽部は県大会を突破、
西関東支部大会へ出場することになった。
しかしアルトサックス担当の上級生が骨折してしまっため、
急遽、ソロパートの演奏者を決めるために
部内でオーディションを行うことになり、典子も候補となる。
自分の音に満足できない典子は新しいマウスピースを手に入れるために
新宿の楽器店を訪れるが、そこでジャズのプロ奏者・坂木と出会う。
彼が主催するジャズセッションへの参加を勧められた典子だが・・・

物語はこのあと、さらに5編の短編が続く。

「オーニソロジー Ornithology」
(ここまでが「ウィンディ・ガール」収録)

「チェイス Chase」
「ウォーキン Walkin'」
「ジューク Juke」
「エピストロフィー Epistrophy」
(この4編が「ストーミー・ガール」収録)

西関東支部大会をきっかけに典子は吹奏楽部を辞め、
楽器店から紹介されたプロ奏者・長谷部に師事することになる。

レッスン代を稼ぐためにジャズ喫茶でアルバイトを始め、
メンバーを募集していた学生ジャズバンドに参加し、
新宿でさまざまなプロ・アマの演奏者に刺激を受けながら
自らの音を求めて練習にのめり込んでいく。

目指すは、楽器メーカーが主催するジャズコンペでの優勝だ。

一方、父の死に絡んで謎の男たちが彼女の周囲に現れ、
やがて典子の持つサックスの来歴、父親の意外な過去、
そしてチコの "正体" が明かされていく。

ジャズを巡る連作ミステリであり、
父の死の真相に迫っていくサスペンスでもあるけれど
いちばんの読みどころは、典子の成長だろう。

彼女の前には次から次へと(音楽的な)障害が現れ、
必死に乗り越えたと思ったら、次の壁が立ちふさがったり
乗り越えたつもりが全くできていなかったり。
雑草のような努力家である典子に対し、物語の後半で現れる
ライバル・水之江由加里はエリートタイプだったり。
このあたりは昭和のスポ根ものを彷彿とさせる。

最後に明かされる、彼女の両親を巡る秘密には
あまり意外性はないけれど、
青春小説としてみればそれは重要ではないだろう。


上巻である「ウィンディ・ガール」を読み終わった段階では、
正直言ってあまり評価は高くなかった。
ミステリとしてはともかく、典子と瑤子の激しい確執が随所に描かれ、
読んでいて、とっても暗ーい気持ちになってしまったので(笑)。
何度か読むのをやめようかとも思った(おいおい)。

しかも、典子は吹奏楽部を辞めてしまい、
学校からも離れて校外に演奏の場を求めていく。
このまま学校生活からもドロップアウトしてしまい、
母親との関係もいっこうに改善されないままなんじゃないか?
彼女は何処へ向かうのか、いささか心配になってしまったよ。

しかし下巻である「ストーミー・ガール」のラストで、
作者は広げた風呂敷をきれいに畳んで見せる。

吹奏楽部から始まった典子の物語は、
再び吹奏楽部を舞台にして大団円を迎える。
典子は部員たちとの関係や母親との関係を修復し、
そして自らの将来の目標まで見つけていく。

物語がぐるっと一周回って、始まりの場所で締めるという
この構成、私は好きだなあ。

楽器修理を生業にしている尾之上や吹奏楽部の顧問・高垣など
魅力的なサブキャラも多いのだけど、
もうけっこう書いてきたのでそろそろ終わりにしよう。


最後に余計なことを。

私はジャズについては全くの素人である。
だから、全編に渡って頻出するジャズ用語や高名な演奏家の名前とかは
(いちおう巻末に解説は載っているものの)正直さっぱり分からない。
じゃあどうしたかというと、
そういうところは適当に読み飛ばしてしまったんだけど(おいおい)、
本書を楽しむにはとくに支障は無かったように思う(笑)。

もちろん、ジャズの知識や演奏経験がある人なら、
いっそう楽しめると思います。

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「宇宙戦艦ヤマト」の真実 -いかに誕生し、進化したか [アニメーション]


「宇宙戦艦ヤマト」の真実 (祥伝社新書)

「宇宙戦艦ヤマト」の真実 (祥伝社新書)

  • 作者: 豊田有恒
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2017/10/01
  • メディア: 新書

本書の中でも断り書きがあるのだけど、それに倣って
この記事の中でも人物名の敬称は略して記します。


著者は、ヤマトの「SF設定」として参加していた豊田有恒。

豊田有恒と聞いても、最近の若い人は知らないだろう。
知ってても「嫌韓本の執筆者」とか「原発賛成派の御用作家」とか
あまりいいイメージがないかも知れない。

豊田有恒は1938年生まれ、当年とって79歳。

1961年に早川書房主催のSF新人賞に佳作入選し、
63年に商業誌「SFマガジン」に短編が掲載されてデビュー。

同じ頃TVアニメ「エイトマン」のシナリオに参加、
64年には虫プロダクションに嘱託として入社して
「鉄腕アトム」のシナリオを書きはじめる。
その後「スーパージェッタ-」や「宇宙少年ソラン」等のシナリオにも
参加した後、65年にはアニメ界から離れて小説家に専念する。

その後「モンゴルの残光」(67年)、「退魔戦記」(69年)、
「地球の汚名」(70年)など初期の代表作となる長編を発表している。

その後、歴史ものにも活躍の場を広げて、古代史SFや
ヤマトタケルを主役としたヒロイックファンタジー等を執筆してる。

 歴史ものの執筆を通じて古代史、特に朝鮮半島の歴史にハマったらしく
 韓国語までマスターして、かなりの韓国通になったはずなんだけど
 なぜか最近は韓国に批判的な内容を発表している。
 このへんの事情は不明だけど「ヤマト」とは関係ない話だし
 当然ながら本書でも触れていない。
 そういえば、TV番組「クイズダービー」の解答者として有名になった
 明治大学の鈴木武樹教授(先日亡くなった篠沢教授の前任者)との
 古代史を通じたバトルも有名だったなあ。
 私が大学生だった頃、雑誌「奇想天外」で豊田が連載してた
 「あなたもSF作家になれる わけではない」にも、
 たびたび「古代史ゴロのS教授」として登場してた。

2000年には島根県立大学の教授になって(09年に定年退職)、
日本SF小説界の "大御所" の一人にもなってる。


さて、私がSFにハマったそもそものきっかけは、
中学時代に読んだ「SF教室」(筒井康隆・編著、1971年)だった。
私が自分で買ったのか、父が買ってきたのか覚えていないのだけど。

子供向けのSF入門書兼読書ガイドであるこの本で、
小松左京と星新一、さらには彼らに続いてデビューした
眉村卓や光瀬龍、平井和正などを知ることになるのだが
その中にこの豊田有恒の名もあった。

そんな彼が、1973年になって「宇宙戦艦ヤマト」の
立ち上げに関わることになるのだが、そのあたりの経緯も含めて
本書は「鉄腕アトム」時代から筆を起こし、
日本のTVアニメーションの黎明期を経て「ヤマト」第1作に至り、
そして82年の「ヤマト完結編」を以て
再びアニメ界から離れるまでを綴っている。

人間、トシを取ってから昔を振り返るとき、
どうしても過去は美化されがちである。
美化とまではいかなくても不快な記憶は封印したくなるものだし
その記憶だってだんだん怪しくなってくるし(笑)。

豊田有恒にとっても40年以上前のことであるから、
記憶違いもあるみたいだし(実際、そう思える記述もある)
自分にとって都合の悪い内容に触れるときは筆先が鈍るだろう。
そのあたりを割引して読む必要はあると思う。

とは言っても、「ヤマト」の誕生を担った当事者の一人の証言である。
なかなか興味深いことも記されているので
以下、目次に沿っていろいろ思ったことを書いてみようと思う。

まえがき

本書執筆に至る経過が書かれている。
某大新聞社から、「ヤマト」について取材が来たのだが
結果として本人の意図と異なる記事になっていたらしい。
作品について、一方的な解釈を読者に強要していると感じた著者は
作品制作の経緯と事実関係を書き残そうとした、ということだ。

 このあたり、もっと踏み込んで書いてもらって、
 一冊の本にしたら面白いだろうと思うのだが。

あと、豊田の原発に対する考えも多少述べられてる。
決して無条件に容認しているというわけではないのだが、
このへんは本書の趣旨と外れるので触れない。


第一章 日本アニメ誕生からヤマトに至るまで

豊田は、友人の平井和正から頼まれて
平井が原作のTVアニメ「エイトマン」のシナリオを書き始める。
当時はSFが書ける脚本家がいなかったからだ。

この時豊田が書いた「地球ゼロアワー」という話で、
核ミサイルが東京に向けて発射されるのだが、作中に
時々刻々と「東京壊滅まであと○○分○○秒」とテロップを入れたら
この回が高視聴率を叩き出したので、後の「ヤマト」での
「地球滅亡まであと○○日」の元ネタになったとか。

「鉄腕アトム」での手塚治虫とのエピソードも、なかなか面白い。
彼の「クリエイターは名前を貸したらおしまいです」という言葉が重い。

その後、「スーパージェッタ-」「宇宙少年ソラン」に携わるが、
小説を専業にするためアニメ界を去る。


第二章  本格的なSFアニメをやりたい!西崎義展との出会い

この章から西崎義展が登場する。

虫プロで一緒に仕事をした山本暎一(のちに「ヤマト」のスタッフになる)
から「本格的なSFアニメをやりたいプロデューサーがいる」との
電話があって引き合わされた西崎は、話術が巧みで
人の気を逸らさない魅力があり、他人の心をつかむコツを心得ている。

西崎は豊田にこう語るのだ。
「ハインラインの『地球脱出』のようなSFがやりたい」

 ロバート・A・ハインラインはアメリカの代表的なSF作家だ。
 『夏への扉』は海外SFのベスト選出では常に上位に入る名作だし
 『宇宙の戦士』は「ガンダム」の元ネタになったことでも有名だ。

西崎のこの一言で豊田はOKするのだが、このとき
口約束のみで確約をとらなかったことが後に災いする。


第三章 「アステロイド6」

豊田の仕事は、主にSFの面からストーリー原案と設定を考えること。
このあたりは今までもいくつかの書籍や媒体で紹介されているから
大筋を知ってる人も多いだろう。

章題の「アステロイド6」は豊田による原案のタイトルだ。
初対面で意気投合した松本零士もこの原案に賛成して
作品としての具体化に向けて動き出すが、
後に豊田は、主人公たちが乗る宇宙船に戦艦大和を改造したものを使う、
ということを聞いて困惑する。SF的な理屈づけに苦しむ設定に
豊田は反対するものの、のちの成功をみて納得することになるのだが。

このとき、大和を使うというアイデアは豊田の記憶によると
松本零士から出たものなのだが、後に西崎は
自分のアイデアだと言い張るようになる。

さらに脚本家の藤川桂介が加わり、
彼もまたいろいろ細部で肉付けしていったらしい。

豊田は本書の中で、「ヤマト」という作品に対して
「松本零士が "おおよその原作者"」という表記をたびたびしている。
多くのスタッフが集い、たくさんのアイデアをまとめた作品の中でも
彼の貢献がいちばん大きい、と認めていたのだろう。
後年の著作権裁判でも豊田は松本側の証人として参加しているが
その理由はこのあたりにあると思われる。

とにかく西崎義展という人はクリエイターに敬意を払わない人で
「ヤマト」初放映の時、裏番組にこれも豊田が関わった
「猿の軍団」があったことを理由に豊田がクレジットされる役職名を
「原案」から「SF設定」に格下げしてしまう。


第四章  「宇宙戦艦ヤマト」続編へ動き出す

続編(「さらば宇宙戦艦ヤマト」)の企画にも参加した豊田だが、
ここでもいろんな話が明かされていて面白い。

西崎が沖田艦長の復活を画策していたとか、
それに応じて、豊田が沖田のクローンを登場させようとした話とか。
ちなみに「完結編」で沖田が復活した経緯については
豊田には無断だったとか(笑)。

敵の本拠地として「白色矮星」を提案したら
「白色彗星」になったというのは有名な話だ。

 そしてこのあたりから、後に「2199」総監督を務める
 出渕裕の名がスタッフの中に出てくる。

「さらば宇宙戦艦ヤマト」という映画は
興行収入43億円の大ヒットになったが、
豊田が受け取った報酬は文庫1冊の初版印税にも満たない額だったとか。

メカデザインで参加したスタジオぬえも被害者で
加藤直之や宮武一貴といった人気イラストレーターにすら
相場の1/10しか支払わなかったとか。
旧作シリーズ後半では、スタジオぬえが
メカデザインから降りてるのもここが原因だろう。


第五章 さらばでない、「さらば宇宙戦艦ヤマト」。
     何匹目でもドジョウがいる

西崎は、柳の下にドジョウがいれば、
絶滅するまでドジョウを採り続ける人だったそうで、
さもありなんとは思う。

彼に求められて「ヤマトよ永遠に」の重核子爆弾、
「ヤマトⅢ」での太陽の新星化、
「完結編」における回遊する水惑星など
シリーズ作品の中核となるアイデアを出してきたのも豊田だという。

この章で驚いたのは、豊田の小説「地球の汚名」の映像化に
西崎が食指を動かしていたという話。

 「地球の汚名」とは、「忠臣蔵」の物語を未来SFとして翻案したもので
 「幕府」は星間連盟、「赤穂」はもちろん地球、
 「吉良家」は地球と敵対する異星人ザミーン。
 「勅使」ならぬ星間連盟からの使節を迎えた地球だが
 使節はザミーンによって暗殺され、その容疑が地球にかけられる。
 盟主は処刑され、地球は星間連盟によって占領される。
 しかし主人公たち一部の軍人は地球を脱出して太陽系内に潜伏、
 やがて宇宙艦隊を組織してザミーンの星系に侵攻、
 敵本星において陰謀の首魁を暴き、星間連盟に対して
 地球が無実である証しを立てる、というストーリーだ。

もし実現していれば日本初の本格スペースオペラの映像化になったはず。
でも結局実現しなかったので、
西崎がどこまで本気だったのかは疑問だったとも語っている。
この作品での「地球が占領される」という設定は
後に「ヤマトよ永遠に」で流用されることになる。


第六章 その後の西崎義展

ヤマト制作の最大の功労者である松本零士でさえ
豊田の数倍程度しか報酬を受け取っておらず、
西崎はヤマトで得た総合計にして200億とも300億とも言われる収入は
すべて自分の趣味(女、ヨット、バイク、車etc)につぎ込んでしまい、
クリエイターに対しては雀の涙ほどしか対価を支払っていないという。

このあたりを角川春樹と対比している部分がある。

角川にしても毀誉褒貶はある人だが、仕事に対しては誠実で
恩義を感じる作家も多かったという。
だから後に彼が角川書店を追われてハルキ文庫を立ち上げたときも
彼に協力して作品を提供する作家がたくさんいた。

西崎にとってクリエイターは(松本や豊田は例外として)使い捨てのもの。
いかに安くこき使うかしか考えていなかった。
だから、彼と一緒に仕事をしようという人間が
どんどん減っていってしまったのだと。

最後に語られるのは、リメイクである「2199」に関するエピソード。

総監督を務めた出渕が、松本の名も豊田の名も
クレジットに出せないことを謝っていたこと、
(出渕は制作プロに名を出すように掛け合ったが通らなかったらしい)
松本の元を訪れて謝りたいというので、引き合わせたこと。
そして、松本は文句を言うどころか
「わかった。作るからには、頑張っていい作品を作りなさい」
といって出渕を激励したこと。

つい何年か前にも槇原敬之と歌詞について裁判を起こしたりと
「権利にうるさいおじさん」というイメージもあるかも知れないが、
事前にきちんと筋を通せばすんなりOKする度量の広さも持っている。
松本零士とはそういう人なのだね。

なんだか西崎の悪口ばかり書いているみたいだけど、
西崎のプロデューサーとしての能力は随所で認めている。
(クリエイティブな能力はゼロと断定してるが)

彼なしに「ヤマト」は生まれなかったし、
TVで放映されることもなく、したがって
日本のアニメの歴史を変えるようなヒット作品になることもなかった。

豊田自身も、そんな作品を産み出したスタッフの一員として
誇りも感じたし、達成感も持っていた。
だからこそ「完結編」までつきあってしまったのだろうが。

オリジナルの「ヤマト」のスタッフも高齢化し、
物故された人も少なくない。
制作の真っ只中にいた著者のような人の証言は貴重だ。

とはいっても、本書の内容はあくまで
豊田の目から見た「ヤマト」制作の現場。
彼の記憶違い、勘違いもあるかも知れないし、
その場にいた別のスタッフからすれば、また違った見方もあるだろう。

少しでも多くの人に当時のことを語ってもらい、
資料として記録に残ればいいと思う。

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ラブ・ケミストリー [読書・ファンタジー]


ラブ・ケミストリー (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

ラブ・ケミストリー (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2012/03/06
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆


主人公は東大農学部で有機化学を専攻する大学院生・藤村桂一郎。

 本文中には「東大」って出てこないんだけど、
 いろんな描写からしてまちがいなくここ。

修士課程2年生の彼には、ある特殊能力があった。
それは、どんな化合物であっても、その構造式を見ただけで、
それをつくりだすための合成方法が頭に浮かぶ、というもの。

作中のたとえで言えば、どんな料理であっても
その写真を見ればレシピが頭の中に閃いてしまう、ということだ。

彼はその能力を駆使して様々な化合物の合成法を開発し、
大学院生としては桁外れに優れた論文を多数発表していて、
早くも将来のノーベル賞候補とも噂されている。

そんな彼の現在の研究テーマは「プランクスタリンの全合成」。
海洋生物から発見されたアルカロイドの一種で、
世界中の研究者が合成を試みているが
未だ誰も成功していないという難物だ。

しかし、その彼をスランプが襲う。
彼が師事する神崎教授の下に新規採用された秘書の真下美綾ちゃん。
いままで女性に全く縁がなかった桂一郎くんは彼女に一目惚れ。
初めての恋に悶々となったのが原因か、
すっかり特殊能力を失ってしまったのだ。

研究成果の発表日が迫る中、焦りまくる桂一郎くんの前に現れたのは
自らを "死神" だと語る謎の女性・カロン。
彼の前で物理法則を越えた超常能力を示してみせ、
さらには人の心に介入して記憶の改竄まで可能だという。
その彼女が、なぜか桂一郎くんの初恋に力を貸そうと言い出す。

かくして、死神に後押しされた桂一郎くんは
美綾ちゃんに告白するために、涙ぐましい努力を始めるのだが・・・


第9回『このミステリーがすごい!大賞』優秀賞を受賞した作品。
たしかにミステリ要素もあるけど、それよりは
ファンタジー仕立てのラブコメと言った方が近い。

「彼女いない歴=年齢」という、
女性に対する免疫ゼロの主人公・桂一郎くんが
恋の成就のために右往左往するドタバタぶりも微笑ましいが
特殊能力を失った桂一郎くんを心配し、支えようとする親友・東間、
桂一郎くんの恋愛指南を買って出る学部4年生の岩館愛子、
"二次元の恋人" とフィギュアにはまるオタク後輩の百瀬、
桂一郎の特殊能力に心酔し、彼を "師匠" と慕う有機合成バカ・上杉など
研究室の仲間や後輩たちもキャラが立ってる。

後半に入ると恋のライバルも現れるし
さらには美綾ちゃんの意外な秘密が明かされ、
桂一郎くんはとんでもない選択を迫られることになる。

そして、終盤ではストーリーも二転三転、
桂一郎くんの "初恋" は予想外なところへ向かっていく。

エンディングはいささか都合が良すぎる展開かなあとも思うが
コメディなんだからハッピーエンドで終わらなきゃね。


とにかくこの作者、発行点数が新人にしては半端なく多いので
なんでそんなに人気があるの? と思っていたんだが
読んでみれば、評判になったのも納得。

作者は東大の薬学部を出て、大手製薬会社で研究員をしてるとのこと。
研究室や実験の描写がリアルで板についているのも納得だ。
ものすごく優秀な人なんだろうけど、文章は平易でとても読みやすい。

文庫に限ってもけっこうな数の作品が出ているので
もう何作か読んでみようと思う。

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神津恭介の復活 [読書・ミステリ]


神津恭介の復活 (光文社文庫)

神津恭介の復活 (光文社文庫)

  • 作者: 高木 彬光
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2012/06/12
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

平成の世に復活した名探偵・神津恭介。
その活躍を描いた "最終三部作" の第二弾。

前作から引き続き、ヒロイン兼ワトソン役を務めるのは
東洋新聞社会部の記者・清水香織嬢。

彼女は大学時代からの友人・鈴木裕美の結婚式に出席した。

新婦の裕美は24歳、新郎となる河島幸一は34歳。
彼は資産数百億を超える大財閥の御曹司である。
昨年、父の健一郎が脳梗塞で倒れて以来、
河島グループ全体を統括する地位にあった。

800人を超える招待客に囲まれ、華やかに披露宴は進行するが
その最中、ウエディングケーキを運んできたホテルマンの一人が
幸一を刺殺、そのまま逃走してしまう。

犯人は新郎の実弟・悟だった。
悟は以前、裕美と交際していたことがあり
そのため婚礼には招かれていなかったのだ。

そしてその悟が焼死体で発見される。
自動車の中で頭からガソリンを被り、火を着けたのだ。
しかし遺体は損傷が激しく、顔の判別も出来ない。
悟の死を信じられない香織はDNA鑑定の結果を待つ。

さらに第二の殺人が起こる。季節は8月、真夏の盛りにもかかわらず
裕美が自宅マンションの一室で "凍死体" となって発見されたのだ。

香織は大学時代の友人から裕美が過去に関係を持った男たちを聞き出し、
調査を始めるがことごとく容疑から外れていってしまう。
やがてDNA鑑定の結果から、焼死体が悟に間違いないと判明する。

行き詰まった香織は、おりしも大学のシンポジウムに出席するために
伊豆から上京してきた神津恭介に助けを求める。
彼は香織に
「犯人が見つからないのは、間違った視点から事件を捉えているから」
とアドバイスを与える。

その数日後には、容体が悪化して入院中だった河島健一郎が死去、
さらに第三の殺人が起こる・・・


本書の特異なところは、物語の中盤にして
容疑者たり得る人物がすべて退場してしまうということ。
病死したり、自殺したり、そして殺人の被害者となって。

今まで、ミステリをけっこう読んできたと思ってる私だが
さすがにこの展開は予想を越えていて
最後の容疑者が消えた時点でしばし唖然としてしまった。

この時ばかりは「この先どうなるんだろう」って
ちょっと不安になってしまったよ(笑)。

物語は後半になってさらに二転三転する。
公開された幸一の遺言状には謎の人物が記載されており、
そして殺人の連鎖も続く。

しかし、どんなに頭の回る奴でも神津恭介の敵ではない。
彼の推理は、意外なところに潜んでいた犯人と
その精緻な犯行計画を暴き出していく。

そのあたりはちょっと込み入っているので、
流し読みしてるとよく分からない。
私はところどころ読み直してしまったよ。
我ながらアタマの悪さがイヤになる。

もしこれから本書を読む人がいたなら
謎解き部分はあせらずじっくり読むことをオススメする(笑)。

前回も書いたけど、古希を過ぎても
こんなに凝った構成の作品を仕上げるなんてたいしたもの。
"凍死" のトリックに一部難が(というか勘違い?)
あるんじゃないかと思うんだが、
まあそのへんはご愛敬ということにして(笑)。

"老大家" とか "大ベテラン" とかいう言葉は
まさにこういう人のためにあるのだろうと思う。

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