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池袋カジノ特区 UNOで七億取り返せ同盟 Ⅰ プチ・コン編 / Ⅱ グラン・コン編 [読書・ミステリ]


池袋カジノ特区 UNOで七億取り返せ同盟 I: プチ・コン編 (新潮文庫nex)

池袋カジノ特区 UNOで七億取り返せ同盟 I: プチ・コン編 (新潮文庫nex)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/07/28
  • メディア: 文庫
池袋カジノ特区 UNOで七億取り返せ同盟 II: グラン・コン編 (新潮文庫nex)

池袋カジノ特区 UNOで七億取り返せ同盟 II: グラン・コン編 (新潮文庫nex)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/07/28
  • メディア: 文庫
評価:★★★

舞台となるのはパラレルワールドの日本。

池袋はカジノ特区となって日夜を問わず巨額の金が飛び交い、
その裏では様々な地下勢力が蠢く無法地帯となっていた。

その "闇の帝国" を支配するのは、
池袋警察署長・有我法然(あるが・ほうねん)。

一介の交番勤務の警官から身を起こし、
類い希なる有能さで異例の昇進を遂げ、
特区となった池袋署長になると同時に
カジノと犯罪組織の融合、周辺のリゾート群からも資金を吸収して
"闇のネットワーク" を確立し、警視庁さえも介入できない
"治外法権区域" を作り上げたのだ。


さて、この作品世界は同じ作者の『天帝』シリーズと同一のもの。
主人公となるのも同じく古野まほろくん。

しかし本書が『天帝』シリーズと異なるのは、
時間軸が10年後になっていること。
まほろくんも高校生から成長して28歳の堂々たる若者に。
もっとも、職業は売れない劇団員をしているのだが。

そのまほろくんが池袋のカジノで、
何と6億を超える額を一夜にして稼ぎだしてしまう。
しかし有頂天になったのも束の間、
カジノ側の罠にはまって警察に逮捕され、もちろん6億円もフイに。

しかしそんなまほろくんに強力な助っ人が現れる。
彼への仕打ちに憤る高校時代の同級生3人が集まったのだ。

6億円を取り返し、有我法然の鼻を明かしてやるべく、
彼ら4人がまず目を付けたのは
有我法然の道楽息子・光然(こうねん)だった・・・


まほろくんとともに立ち上がったのは
『天帝』シリーズでもレギュラーとして活躍していた3人。
みな10年の歳月を経て様々に成長している。

柏木照穂は警視庁のキャリア官僚となり、現在は警視にして外事課長。
峰葉実香は大手出版社の敏腕編集者、
そしてビックリしたのは修野茉莉。
なんとイタリアの侯爵(実はマフィアのボス)に嫁いだが
その夫が暗殺され、未亡人になっていた。
しかし組織はしっかり彼女が掌握し、
今でも手足のように使いこなしてる(えーっ)。

裏表紙の惹句には「コン・ゲーム」ってある。
たしかに、この4人が有我法然をペテンにかけて
金をかすめ取ろうとする話を描いている。

だけど、通常のコン・ゲーム小説なら、
成功するか失敗するか綱渡り、
のるかそるかのハラハラドキドキな展開がお約束のはず。

ところが、この4人が集まると強力すぎて(笑)、
そのへんの緊迫感をあまり感じない。
だって10年前の高校生の頃だって、
このメンバーは超高校級の超人ばかりだったからねえ。
ましてやそれ以来幾星霜、地位・権力・経験・財力その他もろもろを
身につけてきた彼ら彼女らは、もう半端ない破壊力を持つ集団になった。
特に後半に入ってからは修野茉莉嬢の設定がチート過ぎて
「もう全部あいつ一人でいいんじゃないか」(笑)な状態。
(もちろん他の3人とも役割をしっかり果たしているけれどもね)

こうなってくると、この4人に狙われた法然が
逆に可哀想に思えてくる(笑)くらいだ。
とは言っても、今まで散々悪事の限りを尽くしてきたわけだから
同情心は湧かないけどね(笑)。

コン・ゲーム小説というよりは、
成長した『天帝』シリーズのメンバーによるクライム・コメディ。
高校卒業10周年を迎えた古野まほろくんの
ほろ苦くてちょっと危険な同窓会がユーモアたっぷりに綴られる。

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