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おんみょう紅茶屋らぷさん ~陰陽師のいるお店で、あなただけの一杯を~ [読書・ファンタジー]


おんみょう紅茶屋らぷさん ~陰陽師のいるお店で、あなただけの一杯を~ (メディアワークス文庫)

おんみょう紅茶屋らぷさん ~陰陽師のいるお店で、あなただけの一杯を~ (メディアワークス文庫)

  • 作者: 古野まほろ
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2016/04/23
  • メディア: 文庫
評価:★★★

主人公かつ語り手は名古屋大学文学部4年生、佐々木英子さん。

彼女の弟・翔太は東大法学部へ現役で合格、
財務省ノンキャリアだった父の期待を一身に背負っていたが
交通事故で急死してしまう。

弟の意志を継ぐべく、英子は公務員へ志望変更したものの
上京して訪問した官公庁からは悉く振られてしまう。

失意のあまり、宿泊していた新宿のホテルへ帰る途中、
うっかりと電車を乗越して吉祥寺で降りてしまう。
彼女がそのホームで見たものは、風呂敷包みを背負って歩く、
一見すると "ゆるキャラ" の着ぐるみのような "牛"。

目が合ったとたん "牛" は逃げ出し、思わず後を追う英子。
駅前の商店街に逃げ込み、路地や横町を駆け抜ける "牛"。
気がつけば街は深い霧に覆われ、彼女の前には一軒のカフェ。
看板には「L'ABSENT 紅茶屋 らぷさん」の文字が。
そこで "牛" から当身を食らった英子は気を失う。

カフェの店内で意識を取り戻した彼女の前に現れたのは
平安貴族の直衣(のうし)を着た青年・本多正朝(まさとも)。
そしてそこには "牛" だけでななく "寅(トラ)" までいる。
実は正朝は代々続く陰陽師の家系で
彼の周囲にいる不思議動物たちは "式神" なのだという。

そして、正朝は語る。この店に来る人はみな
「人生を狂わせるほど病んでいる」のだと。そして彼は
そんな人たちのために美味しい紅茶を淹れ、癒しを与えるのだと。
もちろんお茶を出すだけで事態が解決するはずもないので
正朝と式神たちのさまざまな "活躍" がつづられていく。

「第1章 生き残ったダージリン」では英子と父親との確執を解き、
彼女は正朝の "姉" のとりなしで
カフェで「らぷさん」でアルバイトを始めることになる。

続く「第2章 吹き抜けるウヴァ」では
幼馴染の女子高生・ルミの謎の行動に煩悶する文雄くんを救い、
「第3章 祝福のキームン」では
占いにはまって結婚式の延期を言い出した婚約者・正樹の行動に
納得できないOL・小百合さんが来店し、
英子は正朝とともに正樹の抱える "秘密" の解明に乗り出していく。

日常の謎と伝奇風味をミックスしたミステリ、とも読めるが
どちらかというとファンタジー寄りな雰囲気のほうが濃いかな。
謎解きよりも式神の活躍のほうがメインなような気もするし。

優秀な兄弟を持つと何かと比較されて大変だろうと思う。
英子さん自身も一浪とはいえ名古屋大に入ってるんだから
十分大したものだと思うんだけど、親父さんはそう思ってくれないらしい。

その父親と和解した英子さんは、弟の身代わりとしてではなく
自分自身の望む新たな目標を定めて生活を始める。
正朝がカフェを構えているのにも何か目的があるらしいし、
彼の "姉" と称する女性も、井の頭大学の院生という以外は正体不明だ。

本書はシリーズ化されているので、
そちらもおいおい語られていくのだろう。

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