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バチカン奇跡調査官 楽園の十字架 [読書・ミステリ]


バチカン奇跡調査官 楽園の十字架 (角川ホラー文庫)

バチカン奇跡調査官 楽園の十字架 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 藤木 稟
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2016/12/22
  • メディア: 文庫
評価:★★★

カソリックの総本山、バチカン市国。
世界中から寄せられてくる "奇跡" 発見の報に対して
その真偽を判別する調査機関『聖徒の座』。

そこに所属する天才科学者の平賀と、
その相棒で古文書の解析と暗号解読の達人・ロベルト。
「奇跡調査官」である神父二人の活躍を描く第14弾。
長編としては12作目になる。


平賀とロベルトは、ハイチへの出張を命じられる。
2010年の大地震で倒壊した首都の大聖堂が再建されたことを祝して
開かれる祝賀会へ、ラングロワ枢機卿の代理として出席するためだ。
二人はハイチの首都・ポルトープランスへ向かう。

そしてそのついでに、式典終了後には彼らには一週間の休暇が
"強制的に" 与えられることになっていた。
普段から多忙を極めてい二人は、ろくに休んでいなかったからである。
うーん、勤勉だね。

現地での祝賀会のあと、二人はルッジェリという男と知り合う。
彼は業界で第3位のクルーズ会社の社長である。
二人はルッジェリから誘われ、豪華客船エクセルシオール号に
乗り込んで、ハイチからマイアミへ向かう
カリブ海クルーズへ出発することになった。

出航して2日目、エクセルシオール就航10周年を祝うパーティのさなか、
乗客たちは異様な光景を目撃する。

突如として海から激しい飛沫が上がり、
水面が割れてそこから高さ30mあまりにもなる
巨大な十字架が出現したのだ。

乗客たちが驚嘆して注視する中、
十字架は再びゆっくりと海中へ没していく。

折しも、客船は、過去数十年にわたって怪奇現象が続発していた
バミューダ・トライアングルにさしかかっていた。
直ちに二人は奇跡調査に乗り出すことになる。
ああ、たとえ休暇中でも、"奇跡" の方からやってくるんだねぇ(笑)。

乗客たちは奇跡の話題で持ちきりになるが、
そんな中、凶悪な事件が発生する。

客室のベッドの上で、腹部を始めとして体中を切り刻まれた
青年ジェラールの死体が発見されたのだ。
部屋の壁にはヴードゥの秘文字で死に神の印が描かれ、
枕元には髑髏が置かれていた。

その現場へ、カルロスと名乗る男が現れる。
彼はCIAの捜査員で、ポルトープランスに潜伏する
テロ集団『ペトロの掟』を追ってきたのだという。
平賀とロベルトは彼に協力し、犯人を捜し始める。

カルロスは、ジェラールの部屋の通話記録から
ジャック・ルーモンとその妻シンディが怪しいと睨む。
しかし、船内で開かれた仮面舞踏会でシンディは突然錯乱し、
バーベキューの焔の中に飛び込んで全身やけどを負い、死亡してしまう。


船内で起こる事件の裏には、ハイチとマイアミを行き交う
客船を利用した陰謀が潜んでいる。
平賀とロベルトの活躍がそれを暴いていくんだが
このあたりは、通常のミステリやサスペンスとあまり変わらない。

本書でいちばんの謎は、やっぱり "十字架の奇跡" だろう。
なぜ海が割れたのか、なぜ海面を割って浮上してきたのか、
そしてそもそも、あの十字架の正体は何だったのか・・・

毎回、いかにも奇跡っぽいものが実はそうではないことが
平賀くんの手によって明らかになるのだけど
それなら、何故あんなことが起こったのかが
説明できなければいけない。

毎度のことながら、彼がひねり出してくる理屈づけ(説明)は、
「そういう解釈もできるよね」
「そうなる可能性もゼロではないかもね」レベルなんだけどね。
でもその内容がいかにももっともらしい法螺で、しかもとても面白い。

というか、それを面白いと感じる人がこのシリーズを読んでるんだろう。

毎回思うけど作者は勉強してる。
今回も、海や海底についての最新の知見を盛り込んで
魅力的な "奇跡" を創造、演出してみせる。

でもネタがわかってみると、今回の "十字架の奇跡" は
ストーリーの本筋にはほとんど関係なかったりして(笑)
まあそのへんはご愛敬だね。

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