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神津恭介の復活 [読書・ミステリ]


神津恭介の復活 (光文社文庫)

神津恭介の復活 (光文社文庫)

  • 作者: 高木 彬光
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2012/06/12
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

平成の世に復活した名探偵・神津恭介。
その活躍を描いた "最終三部作" の第二弾。

前作から引き続き、ヒロイン兼ワトソン役を務めるのは
東洋新聞社会部の記者・清水香織嬢。

彼女は大学時代からの友人・鈴木裕美の結婚式に出席した。

新婦の裕美は24歳、新郎となる河島幸一は34歳。
彼は資産数百億を超える大財閥の御曹司である。
昨年、父の健一郎が脳梗塞で倒れて以来、
河島グループ全体を統括する地位にあった。

800人を超える招待客に囲まれ、華やかに披露宴は進行するが
その最中、ウエディングケーキを運んできたホテルマンの一人が
幸一を刺殺、そのまま逃走してしまう。

犯人は新郎の実弟・悟だった。
悟は以前、裕美と交際していたことがあり
そのため婚礼には招かれていなかったのだ。

そしてその悟が焼死体で発見される。
自動車の中で頭からガソリンを被り、火を着けたのだ。
しかし遺体は損傷が激しく、顔の判別も出来ない。
悟の死を信じられない香織はDNA鑑定の結果を待つ。

さらに第二の殺人が起こる。季節は8月、真夏の盛りにもかかわらず
裕美が自宅マンションの一室で "凍死体" となって発見されたのだ。

香織は大学時代の友人から裕美が過去に関係を持った男たちを聞き出し、
調査を始めるがことごとく容疑から外れていってしまう。
やがてDNA鑑定の結果から、焼死体が悟に間違いないと判明する。

行き詰まった香織は、おりしも大学のシンポジウムに出席するために
伊豆から上京してきた神津恭介に助けを求める。
彼は香織に
「犯人が見つからないのは、間違った視点から事件を捉えているから」
とアドバイスを与える。

その数日後には、容体が悪化して入院中だった河島健一郎が死去、
さらに第三の殺人が起こる・・・


本書の特異なところは、物語の中盤にして
容疑者たり得る人物がすべて退場してしまうということ。
病死したり、自殺したり、そして殺人の被害者となって。

今まで、ミステリをけっこう読んできたと思ってる私だが
さすがにこの展開は予想を越えていて
最後の容疑者が消えた時点でしばし唖然としてしまった。

この時ばかりは「この先どうなるんだろう」って
ちょっと不安になってしまったよ(笑)。

物語は後半になってさらに二転三転する。
公開された幸一の遺言状には謎の人物が記載されており、
そして殺人の連鎖も続く。

しかし、どんなに頭の回る奴でも神津恭介の敵ではない。
彼の推理は、意外なところに潜んでいた犯人と
その精緻な犯行計画を暴き出していく。

そのあたりはちょっと込み入っているので、
流し読みしてるとよく分からない。
私はところどころ読み直してしまったよ。
我ながらアタマの悪さがイヤになる。

もしこれから本書を読む人がいたなら
謎解き部分はあせらずじっくり読むことをオススメする(笑)。

前回も書いたけど、古希を過ぎても
こんなに凝った構成の作品を仕上げるなんてたいしたもの。
"凍死" のトリックに一部難が(というか勘違い?)
あるんじゃないかと思うんだが、
まあそのへんはご愛敬ということにして(笑)。

"老大家" とか "大ベテラン" とかいう言葉は
まさにこういう人のためにあるのだろうと思う。

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