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バチカン奇跡調査官 ソロモンの末裔 [読書・冒険/サスペンス]


バチカン奇跡調査官  ソロモンの末裔 (角川ホラー文庫)

バチカン奇跡調査官 ソロモンの末裔 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 藤木 稟
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/02/25
  • メディア: 文庫
評価:★★★

カソリックの総本山、バチカン市国。
世界中から寄せられてくる "奇跡" 発見の報に対して
その真偽を判別する調査機関『聖徒の座』。

そこに所属する天才科学者の平賀と、
その相棒で古文書の解析と暗号解読の達人・ロベルト。
「奇跡調査官」である神父二人の活躍を描く第13弾。
長編としては11作目になる。


政府軍、反体制勢力、イスラム過激派などが入り乱れ、
戦火が絶えない中東地域。
ヨルダンの教会に保護された老人は爆撃での負傷がもとで亡くなるが
その遺品の中に、暗号のような記号がぎっしり書かれた
羊皮紙の束があった。

羊皮紙はバチカンに持ち込まれ、ロベルトによって
暗号ではなく3000年以上前に使用されていた古代文字と判明。
ソロモン王とシェバの女王の交流が記録されていることが判明する。

 ちなみに「シェバの女王」とは一般的に「シバの女王」として有名。
 シェバ王国の所在地はエチオピアにあったという説と
 イエメンにあったという説があるらしいが
 本書ではエチオピア説を採っている。

そんなとき、エチオピアから奇跡調査の依頼が入る。
モーセの十戒を記した石板を収めた "契約の箱" (聖櫃)は、
かつてエルサレム神殿にあったが、
ソロモン王とシェバの女王との間に生まれた子が
その "契約の箱" をエチオピアに持ち帰ったとの伝説があった。
そのため、エチオピアでは『タボット』と呼ばれる
"契約の箱" のレプリカを各教会に祀る習わしがあるが、
そのタボットの一つが奇跡を起こしたらしい。

タボットの上空に、回転する巨大な炎の剣が現れ
その中に智天使ケルビムの姿が浮かび上がったというのだ。

現地入りした二人の前に現れたのは、
学者兼冒険家を自称するマヌエル・パチェッティ。
彼によると、奇跡を起こしたタボットは
既に盗まれてしまって行方不明になっているという。

盗んだのはタボットを守っていた司祭・アボットとその弟ベハイル。
エチオピア正教会はその事実を隠し、
ひそかに二人を追ってタボットを取り戻して
犯人は殺してしまうつもりだとマヌエルは語る。

彼から協力を求められたロベルトと平賀。
三人は犯人たちが通った "巡礼の道" をたどり、
彼らが目指した "栄光の門" と呼ばれる場所へ向かうことになる。

その途中でロベルトと平賀は殺人事件の容疑を着せられたり、
"栄光の門" に辿りついたのもつかの間、
砂漠の真ん中に身一つで放り出されたりとか
とにかく過酷な試練の連続にさらされる。

でもって、毎度のことながら驚かされるのは平賀くん。
絶体絶命かと思われた砂漠での放置プレイも
何とか切り抜けてしまうんだから彼のサバイバル能力の高さには恐れ入る。
ただの科学オタクではないのが実証されて誠に目出度い(笑)。

そして、今回のメインゲストとなる元シエナ大学准教授マヌエル。
TVではヤラセ満載の探検番組で隊長役を務めたりとか
吉村教授と川口浩を一人二役でこなしているような胡散臭さ100%の男。
(「川口浩探検隊」なんて今の若い人は知らんだろうなぁ)
口がよく回る上にへんに愛嬌があって、堂々の怪演ぶりである。

ソロモン王とかシェバの女王とか "契約の箱(聖櫃)" とか、
伝奇小説の世界ではおなじみの "用語" が頻出し
クライマックスではインディ・ジョーンズばりの展開もあって、
「いつもより余計に冒険しております」(笑)
 ↑by 海老一染之助・染太郎 (これも若い人は知らないだろうなぁ)

毎回恒例の、奇跡についての謎解きというかこじつけ(笑)というか
平賀くんによる "解釈" が語られるけど、
細かい整合性とかリアリティよりは「考えるな、感じろ」(爆)の世界。

毎回書いてるがこのシリーズでは、小難しいことは考えずに
壮大なスケールでの "ほら話" を楽しんだもん勝ちだ。

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