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カーリーⅠ 黄金の尖塔の国とあひると小公女 [読書・その他]


カーリー <1.黄金の尖塔の国とあひると小公女> (講談社文庫)

カーリー <1.黄金の尖塔の国とあひると小公女> (講談社文庫)

  • 作者: 高殿 円
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/10/16
  • メディア: 文庫
評価:★★★

時は第二次世界大戦勃発の直前。
ヒロインのシャーロットは14歳の英国人少女。
彼女がイギリスの統治下にあるインドで過ごした日々を描いていく。

当時のインドは英国の統治のもと、
多くの「藩王国」と呼ばれる小国が存在していた。
その一つ、パンダリーコット藩王国の英国大使を務めていた父の招きで
シャーロットはイギリスを出国し、藩王国の首都・アーリアシティにある
全寮制のオルガ女学院へと転入することになる。
しかしそれは、折り合いの悪い継母による ”厄介払い” だった。

父の前妻(シャーロットの実母)は彼女を産んだ後、
愛人を追ってインドに渡り、そこで死んだという。
当然のことながら、インドへやってきたシャーロットは
母の手がかりを得たいとも思っている。

オルガ女学院はいわゆる花嫁学校で、
生徒たちを玉の輿に乗せるべく日夜教育に励んでいる。
しかしこの学院には、父親の職業によって生徒に厳格な序列が
つけられるなど、時代遅れの価値観や慣習が多々残っている。

当然ながら、スクールカーストのトップにいる者たちは
そういう価値観にどっぷりつかっているわけで、
イギリス本国からやってきた、異なる価値観をもつ
シャーロットはまさに異物。当然ながら、大きな軋轢を生じる。

その ”敵役” となるのは、学園一のお嬢様・ヴェロニカと
その取り巻きの双子・ベアトリスとサリー。

もちろん、心の許せる友人もできる。
世界的な服飾デザイナーの養女となったミチル。
神戸出身の日本人なせいか、彼女の台詞は関西弁で表記される
(実際は英語を喋ってるはずだが)。
そして外見からは想像できない変人ぶりを示すヘンリエッタ。

そんな中、一番の親友となるのはシャーロットとルームメイトになった
イギリスとインドのハーフである美少女・カーリーガード。
ちなみにタイトルの「カーリー」は彼女の名から来ていて
本シリーズのもう一人の主役と言える。

 実は彼女には、ある大きな秘密があるのだが・・・とは言っても
 作者は隠す気は全くなさそうで、読んでるうちにわかってしまう(笑)

物語の前半は、シャーロットと彼女を取り巻く様々なキャラたちの
”騒動” が続き、ある意味典型的な学園ものともいえるだろう。

そして後半は、意外にもスパイ・サスペンスの様相を帯びてくる。

当時のインドはガンジーらによる独立運動が起こっており、
ヨーロッパではナチス・ドイツと英仏の対立が続いている。

イギリスにとって植民地であるインドは ”生命線” であり、
独立はなんとしても阻止しなければならない。
ドイツからすればインドが混乱すればイギリスに痛撃となるので
なんとか独立運動を煽りたい。
つまりインドは列強諸国によるスパイが暗躍する地でもあるわけで
さらに、シャーロットの母親の存在もここにからんでくる。

母の消息を知りたいシャーロットは、そんな国際情勢を背景にした
スパイ同士の暗闘の中に巻き込まれてゆくことになる・・・


もともとはライトノベルとして出版された作品で、雰囲気は明るい。
主人公も引っ込み思案ながら芯の強さを併せ持ち、
自分の意見も言うべき時にはきっちり言うことができる。
周囲の少女たちも大人たちもキャラ立ちは十分で、
後半のスパイ合戦に入っても、暗く陰惨にならずに読めるのは良い。

イギリスから新天地インドへ来た少女が
支配・被支配の関係や戦争のこと、そして ”大人の事情” を知って
次第に成長していく姿を綴っている。

シリーズの第一巻と言うことで、多くの謎は次巻以降に引き継がれるが
先の展開が楽しみな作品だ。

ちなみに本書の続巻として「Ⅱ」「Ⅲ」が刊行されてる。
これを書いてる時点で「Ⅱ」は読了済み。ちなみに「Ⅰ」の直後の話。
「Ⅲ」は未読なんだけど、「Ⅱ」の4年後の話らしい。
これも手元にあるので、近々読む予定。


巻末には番外編「恋と寄宿舎とガイ・フォークス・デー」を収録。
ちなみに ”ガイ・フォークス・デー” というのは
英国版のハロウィンみたいなもの。
しかしここオルガ女学院にはここならではのローカル・ルールがあって
”罪人ガイ・フォークスの人形” なるものを作り、
これをババ抜きのジョーカーに見立てて
生徒同士で押しつけ合うのだ。
その人形を巡る大騒動を描いた中編である。
なんともたわい無い行事なんだが、本人たちは必死なんだろうねえ。

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Xperia XZ2 SO-03K に機種更新しました [日々の生活と雑感]


先日、スマホの機種変更をしました。
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今まで使ってきたのは ARROWS NX F-04G なんですけど
気がついたら3年使ってました。

機能的にそんなに不満はなかったのですけど、
3年の間に、あちこちぶつけてけっこう傷だらけになっていたし、
ちょっとこの夏は公私ともにいろいろあって気分を一新したかったし。

ここのところ、富士通の機種をずっと使ってきたけど今回はSONY。
富士通がスマホ事業を本社から切り離して売却してしまったせいか
現在出ている機種に今ひとつ魅力を感じなかったもので。

Xperia XZ2 には 姉妹機種としてcompact と premium があります。
compact はディスプレイが5.0型。
今まで使ってた F-04G が5.2型だったので
これだとちょいと小さくなってしまう。
老眼の身に小さい画面はつらいので選択肢から外して・・・

premium はダブルレンズ搭載や4Kディスプレイと
さすがにハイエンドな機能なんだけど、私が使うにはオーバースペック。
さらに、手に持ったときに驚いたのはその重さ。ずっしりと230g。
F-04G が155gだったのでざっと5割増し。これは重い。

というわけで、スタンダードな XZ2 にしました。
こっちも198gと、F-04G より40gほど重いけど、まあ許容範囲。
ディスプレイも5.7型と、premiumと比べても0.1インチしか違わず
F-04G の5.2型よりも一回り大きくなったけど、
全長は7mmしか違わないので、大きさもほとんど同じ。

というわけで、 XZ2(無印) に決定。

ドコモショップで購入した後
電子マネーの suica と nanaco の移行を完了、
(使用頻度は低いけど)LINEの引き継ぎも無事に終わり、
以前と同じ状況で使い始めてます。

Android のバージョンも6.0から8.0になり、
画面デザインも微妙に変わってるんだけど、
そんなにまごつくことなく使えてる。

全体的にレスポンスもよく、サクサク動いてます。
F-04G は、長時間使用していると背面が熱を持ってきたんだけど
いまのところはそういう兆候はありません。
(まだそんなにハードな使い方をしてないせいかも知れませんが)

あと、Qi規格(ワイヤレス給電)に対応しているので
専用の充電器を用意すれば、ワイヤレス充電が可能。
これは安いものなら1500~2000円くらいから売ってるらしいので
明日あたりヤマダ電機で購入してこようと思ってます。

 いちいちケーブルを抜き差しせずに
 ”置くだけ充電” できるのはいいよねえ。
 (思えば最初に買ったスマホも置くだけ充電だった)

ちなみに、バッテリーの持ちも一段と良くなった気が。
省エネが進んだのか、単に新品だからなのかはわかりませんが(笑)

SO-03K の機能である「指紋認証」とかはまだ使ってません。
何せ、まだ買って日が浅く、そんなに使ってないので

もう少ししたら、また記事を書くかも知れません。

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論理爆弾 [読書・ミステリ]


論理爆弾 (講談社文庫)

論理爆弾 (講談社文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/09/15
  • メディア: 文庫
評価:★★★

パラレルワールドの日本を舞台にした、大河ミステリ・シリーズ第3作。


第二次大戦終結直前の召和(しょうわ)20年9月、
北海道はソ連の侵攻・占領を受け、そのまま
<日ノ本(ひのもと)共和国>として独立することとなり
日本は分断国家として戦後の歴史を歩むことになる。

そして作品世界の “現在” は、平世(へいせい)21年と呼ばれる時代。
準戦時体制を続ける日本は、“北”(日ノ本共和国)への
対抗姿勢を強め、国民の “統制” に注力するようになる。

探偵という存在もまた体制への反逆分子と見做されていた。
犯罪捜査は警察(国家権力)にのみ許された行為であり
民間人による捜査(私的探偵行為)は違法となっていたのだ。

主人公は、高校2年生の少女・空閑純(そらしず・じゅん)。
秘密裏に探偵を生業としていた両親を持つが,
母・朱鷺子(ときこ)はある事件を調査中に消息を絶っていた。

前作「真夜中の探偵」では、母の手がかりを求めて大阪へ出てきた純が
両親に探偵の仕事を仲介していた人物・押井照雅とその仲間たちと出会い、
彼の周囲で起こった殺人事件を純が解決するところまでが描かれた。

そしていよいよ今作で、純は朱鷺子の足取りを追って九州の地を踏む。


純は押井の仲間・真行寺晴香から福岡に住む黒田伊都子を紹介される。
朱鷺子は、行方不明になる直前に彼女の元を訪れていたのだ。

5年前、朱鷺子が向かったのは深影村。
宮崎県の山奥にあって、平家の隠れ里との伝説がある場所だ。
さらに、朱鷺子の行方を探して村に入った探偵・花隈慎二もまた
消息を絶ってしまったのだという。
純は母の行方に繋がる手がかりをつかむため、深影村へ向かう。

同じ頃、中央警察の明神警視も宮崎へ向かっていた。
そこには ”北”(日ノ本共和国)からの亡命者・佐々木が暮らしている。
”北” が裏切り者である佐々木を暗殺しようとしているとの
情報を得た彼は、それを阻むべく宮崎入りしたのである。

密かに純の動静を探らせていた明神は、純が御影村へ向かったことを知る。
佐々木の暮らす場所と深影村は、直線距離にして
20キロと離れていなかった。

村へ到着した早々、拝み屋(祈祷師)の老女・茶部から
理不尽な罵倒を浴びせられるという荒々しい ”洗礼” を受けた純だが、
逗留することになった<民宿おがた>では、
5年前に母が宿泊した記録が見つかり、
さらに彼女は村の旧家・友淵家を訪ねたという情報を得る。

友淵家で事情を聞いた純は、
朱鷺子が会ったのはそこの長男・隆一であったこと、
そして隆一は2年前に自殺していたことを知る。

そのころ明神は、宮崎に ”北” の工作員の一団が
潜入したという情報を得る。
大がかりな山狩りが開始され、工作員たちは逃走を始めるが
その行く先には深影村があった。

警察は村へ通じるトンネルを封鎖していたが、
工作員たちの反撃でトンネルが破壊されてしまう。

外部との連絡を絶たれ、孤立した深影村で、
茶部が自宅で絞殺死体となって発見され、
さらに次々と村人が死体となっていく。

警察の組織的捜査が入れない状況で、
純は連続殺人犯を突き止めるべく行動を開始するが・・・


深影村のパートだけ観ていると、
平家の落ち武者伝説、拝み屋の老女、旧家、
クローズトサークルとなった村など、
ちょっと横溝正史を思わせる舞台設定なんだが
並行して描かれる ”北” の暗殺部隊と
それを阻止しようとする中央警察とのせめぎ合いのパートは
一転してスパイ・サスペンス風の味付けになっている。

一見して水と油のような2つの流れだが、
これがラストにおいて意外な形で交錯する。


本格ミステリの中の探偵というものは、
いろいろな犯人と対決しなければならないのだけど、
本書で純はシリーズ中で最凶の犯人と遭遇する。

なにがどう凶悪かはネタバレになるので書かないが
これもまた、探偵として成長しなければならないステップなのだろう。
しかし、作者が純に与える試練はホント過酷だなあ・・・

本書は分断国家となったパラレルワールドの日本を舞台にしている。
いままで ”北” の存在は、物語の背景として見えてはいたが、
ストーリーを構成する要素としては決して大きなものではなかった。
ただ、朱鷺子の失踪には何らかの形で ”北” が関わっていることも
前2作のあちこちで描かれてきている。

そして今作では、”北” の暗殺部隊が登場し、
純の ”事件” へ関わってくるなど、
今までになく ”北” の存在感が増してきた。

現時点(2018年8月)で、このシリーズの続刊は出ていないが
次作かその次あたりで、純自身が母の行方を捜すために
”北” へ渡っていってしまいそうで、
オジサンはとっても心配になりました。


タイトルの ”論理爆弾”(ロジック・ボム)とは、
IT用語でコンピュータウイルスの一種のこと。
コンピュータの内部に潜伏し、設定された条件が満たされると
起動して破壊活動などを行う、「論理的な時限爆弾」という意味。

作中にも同様のコンピュータウイルスが登場するんだけど
もちろんそれだけではなく、ダブルミーニングになってる。
そのへんは読んでのお楽しみかな。

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夏雷 [読書・冒険/サスペンス]


夏雷 (祥伝社文庫)

夏雷 (祥伝社文庫)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2015/07/24
  • メディア: 文庫
評価:★★★

元探偵の倉持は、東京・月島で ”便利屋” を営んでいる。
商店街のトラブル解決から屋根裏のネズミの死体処理まで
よろず何でも引き受ける彼のもとに、新しい仕事が舞い込む。

山田と名乗る初老の男からの依頼は
「私を北アルプスの槍ヶ岳に登れるように鍛えてほしい」というもの。

倉持は大学での登山部時代、槍ヶ岳において
自らの判断ミスで事故を引き起こしたという過去があった。
それ以来、登山から身を引いていた彼は山田の依頼に戸惑う。

しかも山田が槍ヶ岳に登るのは8月だという。そして今は既に5月末。
そんなわずかの期間に、登山についてはずぶの素人である山田を
鍛え上げるのは無理だと一度は断るが、
破格の報酬を提示されて了承することになる。


平均を下回るような体力しかない山田だったが
倉持の立てた練習メニューを黙々と、しかも着実にこなしていく。

依頼の理由に興味を覚えた倉持はそれとなく聞き出そうとするが
山田は頑なに自分のことは明かそうとしない。

トレーニングは順調に進み、
二人は丹沢・奥多摩と練習登山を無事にこなしていく。
しかし南アルプス・鳳凰三山の登山を終えた後、
山田は倉持の前から姿を消してしまう。

探偵時代の同僚・砂本の助けを借りて山田の自宅を突き止めたが
彼のマンションには家財道具も少なく、生活感がほとんどない。
しかし本棚には人気翻訳家・宮田勝治の著作がぎっしり詰まっていた。

山田と宮田の関係を探り始めた倉持だが、
その行く手にはなぜか様々な妨害が起こっていく。
そして、元精神科医と名乗る謎の女・伊佐木静香が現れて・・・


一度は山と決別した倉持が、
金のためとはいえ(そこにはある深刻な理由があるのだが)
再び山と向き合うことを決心する。
しかしそのきっかけを与えてくれた山田が失踪してしまう。

それでも倉持の決意は揺るがず、山田の背後を探り始めるが
明らかになったのは、彼もまた止むに止まれぬ理由で
槍ヶ岳に登らなければならない理由を抱えた身であったこと。

山田の ”願い” を叶えるため、倉持の孤独な戦いが始まる。

山田と宮田の関係は中盤あたりで見当がついてしまうなど
ミステリ的な風味は薄いが、その分、
倉持の前に現れて彼の邪魔をする(笑)人々には
アクの強いキャラが揃っていて飽きさせない。

中でも静香の曲者ぶりは只者ではない。
序盤からあちこちにチラチラ姿を見せていて、存在感は大きい。
本格的な登場は中盤以降になるのだけど、
彼女によって一気にストーリーの展開に弾みがつく。
ついでに混迷の度も増すが(笑)。


過去の過ちによって墜ちていった男が
復権をかけて再起を目指す話なので、
本来ならもう少し明るい話になっても良さそうなものだが
倉持の背負ったものが重い(重すぎる)せいか、全体的に雰囲気は暗め。
星の数がいまひとつ伸びなかったのもそのせい。

でも、希望を感じさせるラスト4ページに救われる。

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身元不明(ジェーン・ドゥ) 特殊殺人捜査官 箱崎ひかり [読書・ミステリ]


身元不明 特殊殺人対策官 箱崎ひかり (講談社文庫)

身元不明 特殊殺人対策官 箱崎ひかり (講談社文庫)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/12/15
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

2020年の東京オリンピックのために大規模再開発が行われた東京。
オリンピック特需もあり、首都は大きく変貌した。

その一つが東京メトロ湾岸線の開業だ。
日比谷・品川・お台場を巡り、南は羽田空港、
東は舞浜までをカバーする巨大環状線である。

その湾岸線日比谷駅構内に設けられたアクアリウム(水族館)。
その水槽の中で全裸の女の死体が発見される。
時は始発前の早朝、そしてなぜか遺体の片耳が切断されていた。

直ちに臨海署に捜査本部が設立される。
作者がもと警察官僚だっただけあって、
警察内部や捜査員たちの言動の描写は実にリアル。

しかし、ここからちょいと様子が変わってくる。

定年間近の無気力刑事・浦安も駆り出されるが、
彼がコンビを組むことになった相手はキャリア警視・箱崎ひかり。
なんとゴスロリファッションに身を包んだうら若き女性である。
浦安からすれば、ソリの合わないどころじゃない相手だが
命令には逆らえない。

しかし捜査員の努力とは裏腹に、
湾岸線各所で次々と死体が発見されていく。
しかも、すべて身元が不明で、体の一部が欠損していた・・・


死体が登場し、容疑者が登場し、捜査が進んで証拠が集まり、
そして犯人に・・・っていう形式の普通の警察小説ではない。

リアルな警察内部を描きながら、起こっている事件や
それを取り巻く状況は、限りなく虚構性が高いのだ。

まず死体の身元が不明、そして容疑者らしい容疑者も登場しない。
(まあ、死体が誰だかわからなくては容疑者の絞りようもないが)

そして、警察以外の ”謎の組織” が動いている。
例えば作中に登場する『図書館員』というグループ。
どうやら国会図書館に所属する職員らしいのだが、
その実態は警察上層部の直轄する諜報組織らしい。

これ以外にも防衛省の諜報組織もでてくるし、公安警察だっているし
いったいこの国には、こんな怪しげな奴らが
どんだけいるんだよぅ、って思う(笑)。

諜報員たちが跋扈するシーンでは、暗号めいた符帳が飛び交い
いったい何を話しているのか、何が起こっているのか、
読者は把握するのがとってもたいへん。
(いや、単に私のアタマが悪いだけなのかも知れないが・・・)

しかし箱崎警視は、そういう魑魅魍魎みたいな連中とも渡り合い、
情報を引き出していく。
こう書くと、スパイサスペンスなのか、と思われるかも知れないが
それもまた違うのだ。

死体の一部欠損、猟奇的な死体処理に加え、犯行現場が密室だったり
死体に犯人からのメッセージが残されていたりと、
このあたりには本格ミステリの要素が満載なのだ。

大都会を舞台にしたリアルな警察小説という土台の上に
古典的な本格ミステリ(サスペンスの風味付けあり)を
構築してみた、というのが本作の位置づけなのだろう。


このように、かなり特異な雰囲気を持つ作品なので
好みが分かれるかも知れない。

上記のように、読者は作者の話術に翻弄されていくままなんだけど
ヒロインの箱崎ひかりだけは、一人超然としていて揺るぎない。
もう読者は彼女の後ろ姿を追っていくしかない(笑)。
ラストでは、ちゃんと ”名探偵” 役を果たし、
”意外な犯人” を指摘してみせる、

さらに、犯人が分かった後も物語は終わらない。
まだまだ巨大な危機を抱えてサスペンスは続いていく。
ほんとにもうお腹いっぱいになる作品である。

消化できるかどうかは人それぞれだろうけど(笑)。
私には胃腸薬が必要なようですが。


あと、余計なことだけど「R.E.D.」シリーズって
この作品の(時系列的に)後の作品なのかなあ。
なんか微妙に繋がってないような気もするのだけど。

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化学探偵Mr.キュリー3 [読書・ミステリ]


化学探偵Mr.キュリー3 (中公文庫)

化学探偵Mr.キュリー3 (中公文庫)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2015/06/23
  • メディア: 文庫
評価:★★★

四宮(しのみや)大学理学部化学科の沖野晴彦准教授は
先祖の一人に ”キュリー” という姓のフランス人がいたために
「Mr.キュリー」と呼ばれている。

 ちなみに、有名なマリー・キュリー(キュリー夫人)とは、
 縁もゆかりもないそうな(笑)。

毎度、大学庶務課の新人職員・七瀬舞衣(ななせ・まい)が
学内で起こった厄介ごと(事件)を、沖野のもとに持ち込んでくる。
「俺の仕事じゃない」とぶうぶう文句を言いながらも
しっかり解決してしまう ”Mr.キュリー” の活躍が描かれる。

「第一話 化学探偵と呪いの藁人形」
理学部修士1年の村杉達弘と和弘は双子の兄弟。
何をやらせても優秀な弟・和弘と、その陰に隠れがちな兄・達弘。
その和宏が時折体調を崩すようになり、彼の恋人・三波桜は
和宏が住むアパートのベランダで ”呪いの藁人形” を発見する。
桜は庶務課の舞衣に相談するが・・・
ミステリ的なオチもよくできているが
今回は舞衣の意外な(?)特技が明らかになるのも一興か。

「第二話 化学探偵と真夜中の住人」
理学部生物学科の助教・今津志保里の指導する
学生・松尾理久(りく)の様子が最近おかしい。
研究室に顔を出すのは夜中、そして朝まで実験をして
他の教員や学生が来る前に帰ってしまう。
心配した志保里は、松尾が行っている深夜の実験をのぞき見て驚愕する。
彼は有毒ガス用のガスマスクを着用していたのだ。
ひょっとして松尾は、バイオテロを企んでいるのでは・・・?
真相は他愛もないと言ってしまえばそれまでなのだが
本人にとっては死活問題なのはわかる。

「第三話 化学探偵と化学少年の奮闘」
以前、「炎の魔術師事件」(第2巻収録)で沖野と知り合った小学生・大輔。
彼の隣家で飼われている犬が、末期がんに冒され、余命幾ばくもない。
アメリカで犬用の効果的な抗がん剤が発表されたことを
インターネットで知るが、まだ発表されて日も浅く、入手できない。
その犬を助けたい大輔は、一日でも早くその新薬を手に入れようと
自分で合成することを思い立ち、沖野に助けを求めてきた。
(なんともすごい小学生もいたものである。)
彼の熱意にほだされた沖野は協力を了承、公開されている構造式から
合成経路を推定し、大輔とともに合成に取り組み始める。
そして2週間後、ようやく合成に成功するが、
その直後に抗がん剤が何者かに奪われてしまう・・・
企業の製品である新薬を勝手に合成してもいいのかなあって思ったが
構造式が公開されてて、そこから合成経路が分かれば
「合成してみよう」って人は現れるよねえ。
大輔君が合成に取り組むシーンを読むと、
高校の頃の化学の実験を思い出す人いるだろう。
ミステリ的な要素よりも、大輔君の奮闘ぶりが光る作品だね。

「第四話 化学探偵と見えない毒」
四宮大学<美食探求サークル>が開いた食事会。
しかし、参加したメンバーが次々に体調不良を訴える騒ぎに。
メンバーの一人、津久野裕子は舞衣のもとに相談に訪れる。
”事件” の背後には、リーダーの我孫子と、元メンバー・長居の
”サークルの存在理由” をめぐる ”路線対立” があったらしい・・・
折も折、沖野のもとに、かつて同じ研究室で学んでいた
”因縁のライバル”・氷上(ひかみ)が現れる。そしてなぜか
沖野は舞衣に対して「今後は協力しない」と告げるのだった・・・
いままで明らかでなかった沖野の過去が語られるのは
とても興味深いのだけど、そのぶん事件の謎解きは
いささかなおざりっぽいようにも思う。
もちろんラストでは沖野は復帰し、シリーズは無事続行になります(笑)。

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共犯関係 [読書・ミステリ]


共犯関係 (ハルキ文庫)

共犯関係 (ハルキ文庫)

  • 作者: 秋吉理香子・芦沢央・乾くるみ・友井羊・似鳥鶏
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2017/10/12
  • メディア: 文庫
評価:★★★

”共犯” をテーマに5人の作家が競作したアンソロジー。

「Partners in Crime」秋吉理香子
主人公・智幸は零細企業で働く契約社員。
資産家の娘・綾子と結婚したものの、経済的には妻の実家に頼りっぱなし。
ヒモ状態の夫を軽んじる綾子に反撥し、女漁りに走る智幸。
真奈という人妻と深い仲になったものの、やがて彼女は智幸に対して
ストーカー的なほどの異常な執着を見せるようになる。
浮気の発覚を恐れる智幸は真奈の殺害を計画するのだが・・・
智幸の単独犯じゃないか・・・って思っていると
このあと意外な展開が待っていて、しっかり ”共犯” だったのが分かる。
でもまあ、私の好みとはちょっと外れるかなあ・・・

「Forever Friends」友井羊
小学6年生の隼(しゅん)は、クラスメイトの一花(いちか)が
夏休み中に転校するという噂を聞く。
一花にほのかな思いを寄せていた隼は、夏祭りの日の朝、
彼女を遠出に誘ってみるが、思いがけなくOKをもらう。
しかし彼女は夏祭りで御神楽を舞うことになっていた。
大人たちの追跡を振り切って、二人の逃避行が始まるが・・・
ジュヴナイルなラブコメかと思っているとラストに意外な背負い投げ。
”大人たちの事情” に翻弄される中で、子どもたちの友情が描かれる。
ほろ苦い結末だが読後感は悪くない。

「美しき余命」似鳥鶏
主人公の ”僕” は中学2年生。2年半前に交通事故で家族を失い、
一人生き残って今は親類の秋葉家に身を寄せている。
さらに ”僕” は、事故時の入院検査で ”ケストナー症候群” という
不治の病に冒されていることが判明、余命3年と宣告されていた。
つまり今の ”僕” に残された余命はあと半年。
秋葉家の人々は、実の息子のように ”僕” を愛してくれるのだが・・
物語はこのあと意外な展開を見せる。
そこまでだったら ”ありがちな話” で終わるのだろうが
さらにもうひと捻りふた捻りで、かなり異様な結末へ。
ある種のイヤミスかなあ・・・
どうもトシをとったせいか、この手の話は苦手です。

「カフカ的」乾くるみ
28歳の高校教師・相本真弥(まや)は、
妻ある男性・船村桔次(きつじ)と不倫関係にある。
ある日真弥は、高校時代の同級生・滝井玲奈(れな)と再会する。
近況を語り合ううちに二人は意気投合し、
その場で玲奈は真弥に交換殺人を持ちかける。
玲奈が船村の妻を殺し、
真弥は玲奈の双子の妹・亜恋(あれん)を殺さないか、と。
これぞ ”共犯” って展開だが、もちろん素直に進むはずもなく
意外なラストが訪れる。
これもいささか読後感が重いかなぁ。

「代償」芦沢央
売れない小説家・志藤(しどう)は、作家生活16年目にして
”代表作” といえるような傑作を書き上げた。
しかし、原稿を読んだ妻・依子(よりこ)は意外なことを告げる。
「これとよく似た話がwebで公開されている」と。
そのサイトを見ると、アップされたのは2年前。細部は稚拙だが
根本はほとんど同じで、このまま志藤がこの作品を発表したら
”盗作” の誹りは免れないだろう・・・
ミステリを読み慣れた人なら、ある程度見当がつくかとも思うが
作者の用意した真相は、その予想のさらに上をいく。
最後の1行が終わった直後、志藤がどう行動するのか知りたいが
そのへんは読者の想像に任せているのでしょうね。

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明日の子供たち [読書・その他]


明日の子供たち (幻冬舎文庫)

明日の子供たち (幻冬舎文庫)

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2018/04/10
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

私の家からさほど遠くないところに、児童養護施設がある。
時々、その前を自動車で通り過ぎるのだけど、
そこの建物はあくまで風景の中の一コマに過ぎず
普段は何も考えることはない。
だけど、たまに、ホントにごくたまに思う。

「この中には、どんな子どもたちがいて、
 どんな生活をしているのだろう」

私の持っていた乏しい知識では、かつては ”孤児院” と呼ばれていて、
『タイガーマスク』の伊達直人もそこの出身だった、くらいなもの。

 数年前、「タイガーマスク現象」なるものが起こって
 全国の児童擁護施設に ”伊達直人” さんが大量に現れたこともあった。
 これはこれでいろいろ議論が巻き起こっていたものだが・・・

ネットをちょっと見れば、詳しい定義やら現状やら載ってはいるが
実際は、縁のない人からすると「よく分からない」
というのが正直なところではないだろうか。


本書は、まさにその児童養護施設が舞台となっている。

主人公の三田村慎平は、児童養護施設『あしたの家』の
新米職員として働き始めるが、着任一日目にして
早々と先輩職員・和泉和恵(いずみ・かずえ)から
厳しい ”教育的指導” を受けてしまう。

よかれと思ってしたことが、必ずしも子どもたちのためにはならない。

世間と施設内の ”認識の違い” に戸惑いつつ、
早く職場に、子どもたちに馴染もうと奮闘していく慎平。

施設には様々な子どもたちがいる。
入所に至る事情も異なれば、子どもたち自身の個性も様々。

慎平はほとんどの子どもたちと良好な関係を築いていくのだが、
生活態度、成績、職員との関係、すべてにおいて
”問題のない子ども” とされる16歳の谷村奏子(かなこ)だけが
慎平に対して心を閉ざしたままだった・・・


本書における慎平の視点は、そのまま読者の "視点" でもある。
施設を扱ったドキュメント番組をTVで観て感動した、というだけで
転職を決意したという彼は、児童養護施設というものに対する
勘違い、思い込み、知識不足、その他諸々を
まとめて具現化した人物として登場する。

そして物語の中で起こるイベントを経験するたびに
ひとつひとつ間違った認識が正され、新しい知識を得ていく。
それもまた読者にとっての ”経験” となる。

もちろんこの作者のことであるから、
業界(?)の解説だけに終始するはずもなく、
登場してくるキャラクターそれぞれがしっかり書き込まれている。

物語の進行につれて慎平が恋心を抱くようになる和恵、
子どもたちが退所後に(施設が養育するのは通常、高校3年生まで)
大学へ進学することに対して頑なに否定的な職員・猪俣。
厳格に子どもたちを管理監督しようとする副施設長・梨田。
”理想” に燃える慎平は、当然ながら猪俣や梨田と反撥していく。
そんな様々な考えを持つ職員たちを上手く束ねてゆく施設長・福原。

和恵や猪俣や梨田にも、物語中に登場するまでの過去の経緯があり、
そのあたりのエピソードも物語中できちんと語られていく。

奏子のルームメイトは、とかく問題を起こしがちな坂上杏里。
防衛大学校への進学を目指している平田久志は
奏子と慎平の仲を心配して、いろいろ気配りもできるしっかり者。
この子たちにもそれぞれのドラマが用意されている。


先輩職員や子どもたちの間で、失敗を繰り返しながらも
奮闘を続けて、成長していく慎平の姿が
ユーモアたっぷりに、そして時には感動的に綴られていく。

扱っているテーマは決して軽くはないけれど、
エンターテインメント作品としてきちんと成立させてしまう手腕は
やはりたいしたものだろう。


もちろん本書だけで施設について語り尽くすことはできないし
小説にはならないような(しにくいような)事象も
実際には存在しているのだろう。

でも、児童養護施設そのものや、それを取り巻く状況、
その中で暮らす子どもたちについて知るための
とっかかりにはなると思う。


巻末の解説は、本書成立に関わった一人の女子大生によるもの。
児童養護施設出身の彼女が、作者・有川浩に送った
一通の手紙がきっかけで本書は生まれたという。
(「奏子」は彼女がモデルだろう)

23歳となった彼女が、素直に現在の心境や願いを語り、
児童福祉についても綴っているこの文章も、一読の価値があると思う。

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僕は長い昼と長い夜を過ごす [読書・ミステリ]


僕は長い昼と長い夜を過ごす (ハヤカワ文庫JA)

僕は長い昼と長い夜を過ごす (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 小路 幸也
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/06/05
  • メディア: 文庫
評価:★★★

普通の人間は1日の生活リズムは24時間だ。
しかし本作の主人公・森田明二(メイジ)のリズムはなんと70時間。
50時間起きたまま過ごし、その後20時間眠り続けるという
特異体質の持ち主なのだ。

実家は札幌だが、16年前に母は失踪し、
その1年後には父親が強盗に殺されていた。
メイジは兄・真一と妹・紗季とともに、
父が経営していた<モリタ金属加工所>の職人たちに
親代わりとして見守られながら育ち、
現在、真一はそこの経理として働いている。

通常の学校生活を送るのにも難渋したメイジは、
まともなサラリーマンになるのはまず無理。
情報系の大学を卒業したのち、東京のゲーム制作会社<トラップ>の
契約社員となり、プランナーとして働いて4年目を迎えていた。

そこの社長・バンさんは、メイジの特異体質を見込んで
本業以外にアルバイトを斡旋してきた。その内容は<監視>。

浮気の尾行とか、子供の夜遊び監視とかの ”仕事” を
個人的なコネで請け負い、メイジに実行させているのだ。
なにせその気になれば、まる二日間くらい休み無しに相手を
見張り続けられるのだから、メイジにぴったりの ”仕事” ではある。

今回の<監視>対象は49歳のサラリーマン・三島。
しかし、彼の行動を確認するためにマンションへ出向いた
メイジが発見したのは、自室の入り口で倒れている三島の姿。
しかしそれだけではない。
救急隊が駆けつけたどさくさに紛れて、うっかり現場から
持ち出してしまった三島のバッグの中には、なんと2億円の現金が。

返すに返せなくなって悩むメイジの前に現れたのは
”ナタネ” と名乗る謎の男。彼はこう告げる。
「その金はすべて君のものだ。好きに使っていい」

どうやらこの2億円は、奪われても公にできない ”裏金” の類いらしい。
そして「その金を奪還しようとする連中も現れるだろう」とも。

折しも、メイジは<モリタ金属加工所>がかなりの
経営危機にあることを知る。この2億円があれば兄たちは救われる。

メイジはナタネのアドバイスに従い、
2億円を奪還に来る連中をかわしつつ、
工場の苦境を救うべく行動を開始するが、その過程で
メイジの母と父の過去にそれぞれ ”何が起こったのか” もまた、
明らかになっていく・・・


ここまで書いてきて思ったが、けっこう設定というか背景が複雑。
でも、読んでいてさほど混乱なくすんなりとアタマに入ってくるのは
語り口がかなり上手いのだろう。

この物語の一番の謎はナタネなる男の正体、というか動機。
迅速な行動、正確な情報、的確な助言、そして人脈と
あらゆるものを駆使してメイジを支えていく。

最初はどうにも胡散臭いのだが、読んでいくうちに
どうやら本気でメイジを救うべく行動しているようにも思えてくる。

もちろん彼の真意と素性は、終盤で明らかになるのだが・・・
私は某名作長編アニメ映画を思い出しましたよ。


メイジとナタネ以外のサブキャラも魅力的。
父の工場で働く気のいい職人たち、
善人を絵に描いたような兄一家と妹夫婦。
会社の同僚で頼りになる親友・安藤、
ネットで知り合った凄腕ハッカー・リローは
情報面でメイジをサポートしてくれるし
成り行きでメイジと行動を共にすることになる看護師・笈川麻衣子とは
次第に心の距離を縮めていく。

そんなふうに多くの人たちの助力を受けられるメイジは
実は作品中でいちばん誰からも愛されているキャラだともいえる。


こう書いてくると、もっと高い評価をつけてもいい気もするんだが
今ひとつ星の数が伸びなかったのは
まず第一に、ナタネが有能すぎて(笑)、
(彼の言うとおりにするのが最善手なので、仕方がないとも言えるが)
メイジ独自の判断というか行動が少ないように思えて、
今ひとつ主役としての存在感が小さく感じられること。

 まあ、いわば ”プロ” であるナタネと
 ”素人” であるメイジを比べてはいけないんだろうが・・・

あと、50時間起きていて20時間眠り続けるという主人公の特異体質は、
あまり必要性がなさそうな気がして・・・
冒頭での ”巻き込まれる経緯” の中ではうまく使われているものの
その後の展開にはあまり関わっていないような。
(正直、この設定がなくてもこの物語は成立するような気がするし)
クライマックスあたりに、この特異体質ならではの
主人公の活躍とかがあれば、また違ったのだろうとは思うのだけどね。

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声優 石塚運昇さん ご逝去 [アニメーション]


今日、何気なくネットを開いてみていたら飛び込んできたこの知らせ。

声優の石塚運昇さんが13日、食道がんのため亡くなられました。
享年68歳。なんと、私とそんなに違わない歳ではないですか・・・

若い、若すぎます。日本の高齢者はみんな元気です。
っていうか68歳はまだまだ ”高齢” じゃありませんよ。
現役バリバリで活躍されている方もたくさんいるじゃないですか・・・

wikiをのぞいてみたら、参加された作品の多さに驚きました。
アニメに洋画にゲームに八面六臂の大活躍ではないですか。
まだまだお元気でいて、あの素晴らしい声を聴かせてほしかった。


私が石塚さんという声優を意識に登らせるようになったきっかけは
石黒昇版「銀河英雄伝説」(1988年)での
自由惑星同盟の指導者、ヨブ・トリューニヒト役でしたかねぇ。

アニメ1話分を収録したVHSテープが週に1巻ずつ送られてくるっていう
今では信じられないようなOVA販売方式でしたよねえ・・・

足かけ5年くらい付き合いましたが、その中で如何にも曲者っていう
トリューニヒトを演じられていたのが印象的でした。

私は未見なのですが、2018年版のリメイク
「銀河英雄伝説 Die Neue These」でも
メルカッツ提督役で出演されていたようですね。

 石黒版では納谷悟朗さんが演じられていた役です。
 その納屋さんも鬼籍に入られて久しくなりました。
 ああ、何もかもみな懐かしい・・・

そしてそして、2017年2月から公開が始まった
「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」では
二代目ヤマト艦長・土方竜役。
これもまたぴったりハマっていて
随所で作品を締めてくれていたように思います。


歳をとるということは、知っている人、懐かしい人が
どんどんいなくなっていくことでもあるのですね・・・


石塚さんのご冥福をお祈りします。合掌。

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