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夏雷 [読書・冒険/サスペンス]


夏雷 (祥伝社文庫)

夏雷 (祥伝社文庫)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2015/07/24
  • メディア: 文庫
評価:★★★

元探偵の倉持は、東京・月島で ”便利屋” を営んでいる。
商店街のトラブル解決から屋根裏のネズミの死体処理まで
よろず何でも引き受ける彼のもとに、新しい仕事が舞い込む。

山田と名乗る初老の男からの依頼は
「私を北アルプスの槍ヶ岳に登れるように鍛えてほしい」というもの。

倉持は大学での登山部時代、槍ヶ岳において
自らの判断ミスで事故を引き起こしたという過去があった。
それ以来、登山から身を引いていた彼は山田の依頼に戸惑う。

しかも山田が槍ヶ岳に登るのは8月だという。そして今は既に5月末。
そんなわずかの期間に、登山についてはずぶの素人である山田を
鍛え上げるのは無理だと一度は断るが、
破格の報酬を提示されて了承することになる。


平均を下回るような体力しかない山田だったが
倉持の立てた練習メニューを黙々と、しかも着実にこなしていく。

依頼の理由に興味を覚えた倉持はそれとなく聞き出そうとするが
山田は頑なに自分のことは明かそうとしない。

トレーニングは順調に進み、
二人は丹沢・奥多摩と練習登山を無事にこなしていく。
しかし南アルプス・鳳凰三山の登山を終えた後、
山田は倉持の前から姿を消してしまう。

探偵時代の同僚・砂本の助けを借りて山田の自宅を突き止めたが
彼のマンションには家財道具も少なく、生活感がほとんどない。
しかし本棚には人気翻訳家・宮田勝治の著作がぎっしり詰まっていた。

山田と宮田の関係を探り始めた倉持だが、
その行く手にはなぜか様々な妨害が起こっていく。
そして、元精神科医と名乗る謎の女・伊佐木静香が現れて・・・


一度は山と決別した倉持が、
金のためとはいえ(そこにはある深刻な理由があるのだが)
再び山と向き合うことを決心する。
しかしそのきっかけを与えてくれた山田が失踪してしまう。

それでも倉持の決意は揺るがず、山田の背後を探り始めるが
明らかになったのは、彼もまた止むに止まれぬ理由で
槍ヶ岳に登らなければならない理由を抱えた身であったこと。

山田の ”願い” を叶えるため、倉持の孤独な戦いが始まる。

山田と宮田の関係は中盤あたりで見当がついてしまうなど
ミステリ的な風味は薄いが、その分、
倉持の前に現れて彼の邪魔をする(笑)人々には
アクの強いキャラが揃っていて飽きさせない。

中でも静香の曲者ぶりは只者ではない。
序盤からあちこちにチラチラ姿を見せていて、存在感は大きい。
本格的な登場は中盤以降になるのだけど、
彼女によって一気にストーリーの展開に弾みがつく。
ついでに混迷の度も増すが(笑)。


過去の過ちによって墜ちていった男が
復権をかけて再起を目指す話なので、
本来ならもう少し明るい話になっても良さそうなものだが
倉持の背負ったものが重い(重すぎる)せいか、全体的に雰囲気は暗め。
星の数がいまひとつ伸びなかったのもそのせい。

でも、希望を感じさせるラスト4ページに救われる。

nice!(4)  コメント(4) 
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コメント 4

mojo

xml_xslさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-08-25 17:26) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-08-25 17:26) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-08-25 17:26) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-08-25 17:27) 

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