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共犯関係 [読書・ミステリ]


共犯関係 (ハルキ文庫)

共犯関係 (ハルキ文庫)

  • 作者: 秋吉理香子・芦沢央・乾くるみ・友井羊・似鳥鶏
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2017/10/12
  • メディア: 文庫
評価:★★★

”共犯” をテーマに5人の作家が競作したアンソロジー。

「Partners in Crime」秋吉理香子
主人公・智幸は零細企業で働く契約社員。
資産家の娘・綾子と結婚したものの、経済的には妻の実家に頼りっぱなし。
ヒモ状態の夫を軽んじる綾子に反撥し、女漁りに走る智幸。
真奈という人妻と深い仲になったものの、やがて彼女は智幸に対して
ストーカー的なほどの異常な執着を見せるようになる。
浮気の発覚を恐れる智幸は真奈の殺害を計画するのだが・・・
智幸の単独犯じゃないか・・・って思っていると
このあと意外な展開が待っていて、しっかり ”共犯” だったのが分かる。
でもまあ、私の好みとはちょっと外れるかなあ・・・

「Forever Friends」友井羊
小学6年生の隼(しゅん)は、クラスメイトの一花(いちか)が
夏休み中に転校するという噂を聞く。
一花にほのかな思いを寄せていた隼は、夏祭りの日の朝、
彼女を遠出に誘ってみるが、思いがけなくOKをもらう。
しかし彼女は夏祭りで御神楽を舞うことになっていた。
大人たちの追跡を振り切って、二人の逃避行が始まるが・・・
ジュヴナイルなラブコメかと思っているとラストに意外な背負い投げ。
”大人たちの事情” に翻弄される中で、子どもたちの友情が描かれる。
ほろ苦い結末だが読後感は悪くない。

「美しき余命」似鳥鶏
主人公の ”僕” は中学2年生。2年半前に交通事故で家族を失い、
一人生き残って今は親類の秋葉家に身を寄せている。
さらに ”僕” は、事故時の入院検査で ”ケストナー症候群” という
不治の病に冒されていることが判明、余命3年と宣告されていた。
つまり今の ”僕” に残された余命はあと半年。
秋葉家の人々は、実の息子のように ”僕” を愛してくれるのだが・・
物語はこのあと意外な展開を見せる。
そこまでだったら ”ありがちな話” で終わるのだろうが
さらにもうひと捻りふた捻りで、かなり異様な結末へ。
ある種のイヤミスかなあ・・・
どうもトシをとったせいか、この手の話は苦手です。

「カフカ的」乾くるみ
28歳の高校教師・相本真弥(まや)は、
妻ある男性・船村桔次(きつじ)と不倫関係にある。
ある日真弥は、高校時代の同級生・滝井玲奈(れな)と再会する。
近況を語り合ううちに二人は意気投合し、
その場で玲奈は真弥に交換殺人を持ちかける。
玲奈が船村の妻を殺し、
真弥は玲奈の双子の妹・亜恋(あれん)を殺さないか、と。
これぞ ”共犯” って展開だが、もちろん素直に進むはずもなく
意外なラストが訪れる。
これもいささか読後感が重いかなぁ。

「代償」芦沢央
売れない小説家・志藤(しどう)は、作家生活16年目にして
”代表作” といえるような傑作を書き上げた。
しかし、原稿を読んだ妻・依子(よりこ)は意外なことを告げる。
「これとよく似た話がwebで公開されている」と。
そのサイトを見ると、アップされたのは2年前。細部は稚拙だが
根本はほとんど同じで、このまま志藤がこの作品を発表したら
”盗作” の誹りは免れないだろう・・・
ミステリを読み慣れた人なら、ある程度見当がつくかとも思うが
作者の用意した真相は、その予想のさらに上をいく。
最後の1行が終わった直後、志藤がどう行動するのか知りたいが
そのへんは読者の想像に任せているのでしょうね。

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