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カーリーⅠ 黄金の尖塔の国とあひると小公女 [読書・その他]


カーリー <1.黄金の尖塔の国とあひると小公女> (講談社文庫)

カーリー <1.黄金の尖塔の国とあひると小公女> (講談社文庫)

  • 作者: 高殿 円
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/10/16
  • メディア: 文庫
評価:★★★

時は第二次世界大戦勃発の直前。
ヒロインのシャーロットは14歳の英国人少女。
彼女がイギリスの統治下にあるインドで過ごした日々を描いていく。

当時のインドは英国の統治のもと、
多くの「藩王国」と呼ばれる小国が存在していた。
その一つ、パンダリーコット藩王国の英国大使を務めていた父の招きで
シャーロットはイギリスを出国し、藩王国の首都・アーリアシティにある
全寮制のオルガ女学院へと転入することになる。
しかしそれは、折り合いの悪い継母による ”厄介払い” だった。

父の前妻(シャーロットの実母)は彼女を産んだ後、
愛人を追ってインドに渡り、そこで死んだという。
当然のことながら、インドへやってきたシャーロットは
母の手がかりを得たいとも思っている。

オルガ女学院はいわゆる花嫁学校で、
生徒たちを玉の輿に乗せるべく日夜教育に励んでいる。
しかしこの学院には、父親の職業によって生徒に厳格な序列が
つけられるなど、時代遅れの価値観や慣習が多々残っている。

当然ながら、スクールカーストのトップにいる者たちは
そういう価値観にどっぷりつかっているわけで、
イギリス本国からやってきた、異なる価値観をもつ
シャーロットはまさに異物。当然ながら、大きな軋轢を生じる。

その ”敵役” となるのは、学園一のお嬢様・ヴェロニカと
その取り巻きの双子・ベアトリスとサリー。

もちろん、心の許せる友人もできる。
世界的な服飾デザイナーの養女となったミチル。
神戸出身の日本人なせいか、彼女の台詞は関西弁で表記される
(実際は英語を喋ってるはずだが)。
そして外見からは想像できない変人ぶりを示すヘンリエッタ。

そんな中、一番の親友となるのはシャーロットとルームメイトになった
イギリスとインドのハーフである美少女・カーリーガード。
ちなみにタイトルの「カーリー」は彼女の名から来ていて
本シリーズのもう一人の主役と言える。

 実は彼女には、ある大きな秘密があるのだが・・・とは言っても
 作者は隠す気は全くなさそうで、読んでるうちにわかってしまう(笑)

物語の前半は、シャーロットと彼女を取り巻く様々なキャラたちの
”騒動” が続き、ある意味典型的な学園ものともいえるだろう。

そして後半は、意外にもスパイ・サスペンスの様相を帯びてくる。

当時のインドはガンジーらによる独立運動が起こっており、
ヨーロッパではナチス・ドイツと英仏の対立が続いている。

イギリスにとって植民地であるインドは ”生命線” であり、
独立はなんとしても阻止しなければならない。
ドイツからすればインドが混乱すればイギリスに痛撃となるので
なんとか独立運動を煽りたい。
つまりインドは列強諸国によるスパイが暗躍する地でもあるわけで
さらに、シャーロットの母親の存在もここにからんでくる。

母の消息を知りたいシャーロットは、そんな国際情勢を背景にした
スパイ同士の暗闘の中に巻き込まれてゆくことになる・・・


もともとはライトノベルとして出版された作品で、雰囲気は明るい。
主人公も引っ込み思案ながら芯の強さを併せ持ち、
自分の意見も言うべき時にはきっちり言うことができる。
周囲の少女たちも大人たちもキャラ立ちは十分で、
後半のスパイ合戦に入っても、暗く陰惨にならずに読めるのは良い。

イギリスから新天地インドへ来た少女が
支配・被支配の関係や戦争のこと、そして ”大人の事情” を知って
次第に成長していく姿を綴っている。

シリーズの第一巻と言うことで、多くの謎は次巻以降に引き継がれるが
先の展開が楽しみな作品だ。

ちなみに本書の続巻として「Ⅱ」「Ⅲ」が刊行されてる。
これを書いてる時点で「Ⅱ」は読了済み。ちなみに「Ⅰ」の直後の話。
「Ⅲ」は未読なんだけど、「Ⅱ」の4年後の話らしい。
これも手元にあるので、近々読む予定。


巻末には番外編「恋と寄宿舎とガイ・フォークス・デー」を収録。
ちなみに ”ガイ・フォークス・デー” というのは
英国版のハロウィンみたいなもの。
しかしここオルガ女学院にはここならではのローカル・ルールがあって
”罪人ガイ・フォークスの人形” なるものを作り、
これをババ抜きのジョーカーに見立てて
生徒同士で押しつけ合うのだ。
その人形を巡る大騒動を描いた中編である。
なんともたわい無い行事なんだが、本人たちは必死なんだろうねえ。

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コメント 3

mojo

xml_xslさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-09-02 19:25) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-09-02 19:25) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-09-02 19:26) 

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