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凍雨 [読書・冒険/サスペンス]


凍雨 (徳間文庫 お 41-1)

凍雨 (徳間文庫 お 41-1)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2014/10/03
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

福島県北部にそびえる単独峰、嶺雲岳(れいうんだけ)。
登山シーズンも終了した10月末、そこを訪れた一人の男。
彼の名は深江、そしてそこは6年前に親友・植村が遭難死した場所だった。

登山口から林道に入った深江は、先客がいることに気づく。
植村の妻・真弓と一人娘の佳子(よしこ)が
3人の登山ガイドとともに夫の慰霊に訪れていたのだ。
植村の死に責任を感じていた深江は、そのまま引き返してしまう。

しかし深江を乗せたタクシーは、下山している途中で
謎の男たちを載せたワンボックスカーから銃撃を受ける。
辛うじて切り抜けた深江だったが、男たちがそのまま
登山口へ向かっていくのを見て、自分もまた後を追っていく。

さらに、男たちを追う新たなグループまで出現し、
嶺雲岳を舞台に壮絶な銃撃戦が始まる。
その中に飛び込んでいく深江。
彼には真弓と佳子を守らなければならない理由があったのだ。

植村の死の原因となった過去の記憶。
そして、彼から託された言葉。
「なあ、嫁さんと子供をたのむよ」

亡き友との約束だけを胸に、たった一人の戦いが始まる・・・


いくらなんでも、単独であんな重武装の連中に
立ち向かうなんて、普通に考えたら無謀の極みなんだが、
実はこの主人公、常人離れした戦闘能力を秘めているのである。

中盤あたりでその理由というか正体が明かされるのだが
そうはいっても多勢に無勢、激闘に次ぐ激闘で
どんどん満身創痍になっていくのはお約束の展開だろう。

そして、敵方の中にも深江に匹敵する実力の持ち主がいて、
こいつが終盤にかけて最大の敵となって立ちはだかる。


亡き親友のために戦う、という理由は『ホワイトアウト』(真保裕一)、
相手を一人ずつ倒してその武器を奪っていく展開は
映画『ダイ・ハード』と、有名作品のいいとこ取りみたいだが、
深江と植村の過去の因縁も十分納得できるものだし
山岳地帯という独特の条件を活かしたアクションシーンも秀逸。
戦闘/格闘シーンも迫力十分で、山岳活劇小説の傑作だと思う。

作者は本格ミステリ(それもユーモア・ミステリ)を
ホームグラウンドにする人なんだが、本書を読むと
もう、どんなジャンルでも書けるんじゃないかって思うよ。

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