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謎の館へようこそ 黒 新本格30周年記念アンソロジー [読書・ミステリ]


謎の館へようこそ 黒 新本格30周年記念アンソロジー (講談社タイガ)

謎の館へようこそ 黒 新本格30周年記念アンソロジー (講談社タイガ)

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/10/19
  • メディア: 文庫
評価:★★★

以前の記事に書いた
「謎の館へようこそ 白」と2ヶ月連続で刊行された
新本格30周年記念アンソロジー、第二集である。


「思い出の館のショウシツ」はやみねかおる
小学1年生の森永美月は、夏休みに不思議な体験をする。
近所にある洋館「冥宮館」の主人である
名探偵・能代省吾に招かれた美月は、
その前日の夜、屋敷内で密室殺人が起こっていたことを聞かされる。
しかし能代によって犯人が指摘されたのもつかの間、
突如「冥宮館」は火事になり、全焼してしまう・・・
このエピソードの背後にあった秘密に挑むのは、
成長して大人になった美月だが、それをも取り込んで
さらにもう一つ大きな物語が用意されている。
実際にこんなことをやってたらコスパが合わなすぎるとも思うが
そこはフィクションと割り切って楽しむべきか。
この作者のファンにとっては、
ラストにもう一つサプライズ(なのかな?)が用意されてるけど
ファンでなくても楽しむのに支障はない。

「麦の海に浮かぶ檻」恩田陸
北国の湿原(モデルは釧路湿原か)の中にある全寮制の中高一貫の学園。
男女の双子である要(かなめ)と鼎(かなえ)は、
転校生・タマラを迎え入れるが、鼎はやがてタマラを愛するようになる。
毎週行われる校長室でのお茶会に招かれるタマラだったが、
行く度に体調を悪くする彼女を見て、
毒を盛られているのではと疑い始める鼎だったが・・・
特殊な環境下での特殊な人間関係という、
私にとってはかなりハードルの高い話ですねえ。
うーん、でもこのオチはやっぱり好きになれないなあ。
同じ作者の長編「麦の海に沈む果実」と舞台を同じくするのだけど
作品間の関連については伏せておいた方がいいかな。
でもねえ、wikiで「麦の海に沈む果実」の項目を見ると
本作のネタバレが載ってるのはいかがなものか。

「QED ~ortus~ -鬼神の社-」高田崇史
藤沢鬼王(きおう)神社の巫女・春江友里(ゆり)は、
豆まきで賑わう節分の日、神社本殿で
鬼の面をつけた人物に遭遇する。
その日、友人・中島晴美とともに鬼王神社を訪れていた大学1年の
棚旗奈々(たなはた・なな)は、1年先輩の桑原崇と出くわすが・・・
時系列的にはQEDシリーズの前日譚にあたるのかな。
崇が蕩々と語り出す節分やら鬼やらにまつわる蘊蓄もなんだか懐かしい。
でもまあ、読者としてはシリーズ最終巻のあとの
後日譚が知りたいんだけど、書いてくれないのかしら・・・

「時の館のエトワール」綾崎隼
高校2年の折谷ひかりは、修学旅行で
「時の館」という名の宿に泊まることになる。
そこに泊まった1年前の先輩の中に、旅行の3ヶ月前の時点への
タイムスリップを経験した人がいるという。
そして宿泊した夜、ひかりは森下海都(かいと)という
挙動不審な少年と出会い、驚くべきことを聞かされる。
彼は実は32歳で、15年の時を遡って
17歳の海都の心の中に ”32歳の海都” が発現したのだという。
そして彼は語りだす。ひかりのこれからの未来を。
そして15年間の後、彼女は夫に殺されるのだと・・・
よくできた話だと思うが、そのぶん真相は見当がつきやすいかな。
探偵役として登場する、ひかりの同級生二人組が
なかなかユニークなので、シリーズものだったら読んでみたくなった。

「首無館の殺人」白井智之
この作者さん、「人間の顔は食べづらい」で
横溝正史ミステリ大賞を受賞してデビューした人だそうな。
タイトルを見ても、独特の感覚を持ってる人だと分かるけど
本作も最初の2,3ページを読んだだけでよーく分かった。
私にはついていけないと(笑)。
私はホラーが苦手なんだけど、グロもスプラッターもダメなんですよ。
一応最後まで読めたし、ちゃんと本格ミステリにもなってるんだが、
多分この人の本は今後も読むことはないと思う。

「囚人館の惨劇」井上真偽
主人公・佐伯と高校生の妹・ちなみ。
二人の乗っていたバスが峠道で転落事故を起こしてしまう。
佐伯とちなみは、生き残った乗客たちとともに
山中にあった、空き家と思われる館に逃げ込む。
ところがそこは、廃墟マニアの間では ”ホラーな噂” で名高い
“囚人館” と呼ばれる建物であったらしい。
そして生き残った乗客が、一人また一人と殺され始める・・・
まず、佐伯と妹の間にある ”過去” が重い。
それに加えて、夜の廃墟が舞台なせいか、全体的に話が暗い。
殺人事件なのだから明るくなるはずもないのだが
この暗く重苦しい雰囲気は読んでいて辛いものがある。
さらにこのラストがまたねぇ・・・。
たまたまなのかも知れないが、最近
この手のオチに遭遇する率が高いような気がする。

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