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全日本探偵道コンクール セーラー服と黙示録 [読書・ミステリ]


全日本探偵道コンクール セーラー服と黙示録 (角川文庫)

全日本探偵道コンクール セーラー服と黙示録 (角川文庫)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/11/25
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

三河湾に浮かぶ孤島に建設された聖アリスガワ女学校。
そこで学ぶ島津今日子・葉月茉莉衣・古野みづきを主役とする
シリーズの第4作めとなる。

聖アリスガワ女学校の実体は、探偵養成学校。
パラレルワールドのこの世界には『探偵士』という国家資格があり、
最高学府には「探偵学部」なんてものまで存在する。

だからタイトルにある「全日本探偵道コンクール」なるものも
毎年開催されている。その年の高校生探偵日本一を決める、
いわば「探偵の甲子園」なのだ。
ちなみに優勝チームに与えられる賞の名は「江神二郎杯」。

各高校は3人一組でチームを組んで参加する。
そして今年度の地区予選を勝ち抜き、決勝戦まで駒を進めたのは
島津たち3人の「聖アリスガワ女学校」、そして
穴井戸栄子・修野まり・峰葉実香の「愛知県立勁草館高校」だった。

つまり「天帝」シリーズとのクロスオーバーというか
”全日本プロレスvs新日本プロレス” みたいな
オールスターの団体交流戦というか。
ちょっと例が古くて分からない人もいそうだが(笑)。

決勝の舞台は人里離れた場所で行われる。
そこで起こった殺人事件を解決した方が勝ち、ということなのだが
もちろんそんな都合良く事件が起こるはずもない。
そこはあらかじめ用意された舞台、登場人物はすべて役者なのだ。

要するに決勝戦で起こる事件はすべて ”お膳立てされたもの”。
さらに、”参加選手” による ”捜査の模様” はすべて実況中継され、
東京ドームではパブリック・ビューイングまで行われる(おいおい)。

今回の ”試合会場” は四国の僻村・上原村。
村に君臨していた財閥の当主「綾小路欣蔵」が死去し、
遺言書が公開されたところから ”事件” は始まる。

欣蔵の娘の名が「斧子(おのこ)・琴子・菊子」とか
秘書の名前が「司秀子」とか、他にも「恩田リカ」とか
「ダージリンの尼」とか「等々力」警部とか、
ここには書ききれないくらい、それらしき ”もじり” が満載。
もう分かる人には分かる、角川映画的横溝正史ワールド全開なのだ。

ここまで書いてくると単なるパロディ作品かと思われるかも知れないが
本格ミステリとしてもきちんとできていることは
書いておいた方がいいだろう。

そんな舞台の中に放り込まれ、そのあまりのアナクロぶりに対して
女子高生たちがツッコミを入れていきながら物語は進行していく。

2校の対決は、それぞれ ”探偵” を一人ずつ出して推理を競う。
柔道や剣道と同じ方式なので、3本勝負となるわけだ。
そして先鋒を務めるのは葉月茉莉衣と穴井戸栄子である。


読んでみて驚いたのは、本作は文庫で350ページほどもある
立派な長編なのだが、なんと今回は ”第一試合” だけしか描いてない。

つまり残り ”2試合” は、あと2本の長編で
描かれることになるのだろう。
いやはや、作者の力の入れようには驚かされる。


巻末には「島津今日子の図書館」という120ページほどの中編を収録。
こちらは聖アリスガワ女学園の図書館で起こった殺人事件を
犯人の側から描いた倒叙もの。
島津今日子がコロンボ張りのネチっこさで犯人に迫っていく。
ついでに表題作の前日譚でもある。

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