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化学探偵Mr.キュリー3 [読書・ミステリ]


化学探偵Mr.キュリー3 (中公文庫)

化学探偵Mr.キュリー3 (中公文庫)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2015/06/23
  • メディア: 文庫
評価:★★★

四宮(しのみや)大学理学部化学科の沖野晴彦准教授は
先祖の一人に ”キュリー” という姓のフランス人がいたために
「Mr.キュリー」と呼ばれている。

 ちなみに、有名なマリー・キュリー(キュリー夫人)とは、
 縁もゆかりもないそうな(笑)。

毎度、大学庶務課の新人職員・七瀬舞衣(ななせ・まい)が
学内で起こった厄介ごと(事件)を、沖野のもとに持ち込んでくる。
「俺の仕事じゃない」とぶうぶう文句を言いながらも
しっかり解決してしまう ”Mr.キュリー” の活躍が描かれる。

「第一話 化学探偵と呪いの藁人形」
理学部修士1年の村杉達弘と和弘は双子の兄弟。
何をやらせても優秀な弟・和弘と、その陰に隠れがちな兄・達弘。
その和宏が時折体調を崩すようになり、彼の恋人・三波桜は
和宏が住むアパートのベランダで ”呪いの藁人形” を発見する。
桜は庶務課の舞衣に相談するが・・・
ミステリ的なオチもよくできているが
今回は舞衣の意外な(?)特技が明らかになるのも一興か。

「第二話 化学探偵と真夜中の住人」
理学部生物学科の助教・今津志保里の指導する
学生・松尾理久(りく)の様子が最近おかしい。
研究室に顔を出すのは夜中、そして朝まで実験をして
他の教員や学生が来る前に帰ってしまう。
心配した志保里は、松尾が行っている深夜の実験をのぞき見て驚愕する。
彼は有毒ガス用のガスマスクを着用していたのだ。
ひょっとして松尾は、バイオテロを企んでいるのでは・・・?
真相は他愛もないと言ってしまえばそれまでなのだが
本人にとっては死活問題なのはわかる。

「第三話 化学探偵と化学少年の奮闘」
以前、「炎の魔術師事件」(第2巻収録)で沖野と知り合った小学生・大輔。
彼の隣家で飼われている犬が、末期がんに冒され、余命幾ばくもない。
アメリカで犬用の効果的な抗がん剤が発表されたことを
インターネットで知るが、まだ発表されて日も浅く、入手できない。
その犬を助けたい大輔は、一日でも早くその新薬を手に入れようと
自分で合成することを思い立ち、沖野に助けを求めてきた。
(なんともすごい小学生もいたものである。)
彼の熱意にほだされた沖野は協力を了承、公開されている構造式から
合成経路を推定し、大輔とともに合成に取り組み始める。
そして2週間後、ようやく合成に成功するが、
その直後に抗がん剤が何者かに奪われてしまう・・・
企業の製品である新薬を勝手に合成してもいいのかなあって思ったが
構造式が公開されてて、そこから合成経路が分かれば
「合成してみよう」って人は現れるよねえ。
大輔君が合成に取り組むシーンを読むと、
高校の頃の化学の実験を思い出す人いるだろう。
ミステリ的な要素よりも、大輔君の奮闘ぶりが光る作品だね。

「第四話 化学探偵と見えない毒」
四宮大学<美食探求サークル>が開いた食事会。
しかし、参加したメンバーが次々に体調不良を訴える騒ぎに。
メンバーの一人、津久野裕子は舞衣のもとに相談に訪れる。
”事件” の背後には、リーダーの我孫子と、元メンバー・長居の
”サークルの存在理由” をめぐる ”路線対立” があったらしい・・・
折も折、沖野のもとに、かつて同じ研究室で学んでいた
”因縁のライバル”・氷上(ひかみ)が現れる。そしてなぜか
沖野は舞衣に対して「今後は協力しない」と告げるのだった・・・
いままで明らかでなかった沖野の過去が語られるのは
とても興味深いのだけど、そのぶん事件の謎解きは
いささかなおざりっぽいようにも思う。
もちろんラストでは沖野は復帰し、シリーズは無事続行になります(笑)。

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