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恋する創薬研究室 片思い、ウイルス、ときどき密室 [読書・ミステリ]


恋する創薬研究室 片思い、ウイルス、ときどき密室 (幻冬舎文庫)

恋する創薬研究室 片思い、ウイルス、ときどき密室 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2015/05/13
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

ヒロイン・伊野瀬花奈は帝國薬科大学の修士2年。
新しい抗インフルエンザ薬の開発を目指して研究する毎日だが
実験中に失敗ばかり繰り返し、もちろん結果もパッとしない。
イケメン助教・北条智輝(ともき)へ片思い中だが
こちらも言い出せずに悶々とする日々。

そんなとき、大学内の<恋愛相談事務局>なるところから
花奈のもとへメールが届く。

この<恋愛相談事務局>なるもの、
内閣府の少子化対策の一環で設立された、
いわば国営の結婚相談所という作品内設定。

若い男女の交際を後押ししようという、いささかお節介な部署だが
花奈は相談員・早凪(はやなぎ)の助けを受けて
智輝との恋愛成就に向けて一念発起するのだが・・・

同じ研究室に所属する結崎は、研究成果も順調でしかも美人、
そして北条を巡る恋のライバルでもあることが判明、
さらには花奈に対して殺害を予告する脅迫状まで送られてきて
花奈の前途は多難である。

もちろん作者は現役の薬学研究者なので、恋愛要素だけでなく、
新薬開発に繋がる新化合物の合成に取り組む花奈の姿も描かれる。
しかも、今回の研究の結果如何によっては
花奈の恋の行方にも大きく関わってくるのだ。

サブキャラもなかなかユニーク。

花奈の指導教官は、智輝と同期の助教・相良(さがら)。
痩身に三白眼という近寄りがたい雰囲気を漂わせ、
彼の前では花奈はいつも戦々恐々である。

花奈の合成した化合物の活性を調べてくれるのは
博士課程3年の御堂(みどう)。
計算科学を専攻し、日がな一日、高性能コンピュータの前で
新薬開発のための計算に明け暮れている。
相良とは対照的に、だらけきったパンダのような肥満体の女性だが
親身になって花奈の研究の相談に乗ってくれる。

そして、花奈のパートと並行して
智輝の家族を巡るエピソードも綴られていくのだが
これがラストで意外な形で交錯する。

脅迫状を巡る真相はもちろん明かされるのだが
その後にもう一段、サプライズが用意されてる。

本当のところを言うと、この手のオチはあんまり好きではないんだが
読後感がよいのであまり気にならなかった。

欲を言えば、事件の数ヶ月後くらいの花奈の様子が知りたいんだけど
そのへんは読者の想像に任せるってことですかね。

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