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高原のフーダニット [読書・ミステリ]


高原のフーダニット (徳間文庫)

高原のフーダニット (徳間文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2014/11/07
  • メディア: 文庫
評価:★★★

臨床犯罪学者・火村英生(ひむら・ひでお)と
ミステリ作家・有栖川有栖(ありすがわ・ありす)の
コンビが活躍するシリーズ。本書は3作を収録

「オノコロ島ラプソディ」
休暇で淡路島を訪れていた火村が巻き込まれたのは
廃品回収業者・蛭川の殺害事件。
しかし、容疑者たちはそれぞれアリバイを主張するのだが・・・
巻末の「あとがき」を読むと、もともと本作は
ドタバタ・ミステリにしたかったのだが
「ドタバタは難しい」と断念したとのこと。
たしかにこの作者にドタバタは似合わないかなあ。
クスッと笑えるくらいのユーモアは随所にあるんだけどね。
その名残か、本作のトリック(?)はほとんどバカミスに近い。
有栖川有栖でもこんなこと思いつくんだねぇって驚いたよ。
ちなみにタイトルの ”オノコロ島” とは、古事記・日本書紀などの
日本神話に登場する島で、イザナギノミコト・イザナミノミコトによる
国生み神話で神々がつくり出した最初の島のこと。
それを淡路島だとする説があることからタイトルに使われてるのだろう。

「ミステリ夢十夜」
”こんな夢を見た。” というフレーズから始まる、
原稿用紙12枚という超短編を10作並べたもの。
ミステリと言うよりはショート・ショート。
中身もバラエティに富んでる。
パズル、SF、コメディ、ホラー、そしてメタミステリ・・・
なかでもSFは、70年代の頃の香りがあってなんだか懐かしい。

「高原のフーダニット」
突然、火村の元へ電話をかけてきた男・大朔(おおさく)栄輔。
2年前、一卵性双生児の弟・光輔とともに殺人事件の容疑者となったが
火村によって真犯人が検挙され、冤罪を免れていた。
「光輔を殺した。明日自首する」と告げて電話は切られた。
翌日、二人の死体が発見されるがどちらも他殺だった。
火村とアリスは、現場となった風谷高原へ向かうが
そこで暮らしている人々(容疑者たち)は、みんな平穏で
およそ犯罪とは縁がなさそう。
火村が犯人指摘に至った決め手も、”高原” という舞台ならでは。
終盤、彼は犯人に対して自首を促すんだが
これが決して慈悲の心からじゃないのが、いかにも火村らしい。

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