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福家警部補の再訪 [読書・ミステリ]


福家警部補の再訪 (創元推理文庫)

福家警部補の再訪 (創元推理文庫)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2013/07/21
  • メディア: 文庫
評価:★★★

日本ではあまり見かけない "倒叙ミステリ"。
まず犯人の側から犯行の経緯が語られ、
続いて、犯人が巡らしたトリックを探偵側が突き崩していく。
往年の名作TVドラマ「刑事コロンボ」のパターンである。
若い人なら「古畑任三郎」と言った方が分かりやすいかも知れない。

その「コロンボ」の日本版とも言えるのがこの福家警部補シリーズ。
本書はその2巻目で前巻同様、4編を収録している。


「マックス号事件」
警備会社社長・原田は、零細探偵社を経営していた10年前、
フリーの調査員・直巳(なおみ)と組んで恐喝をはたらき、
巻き上げた資金を元手に会社を大きくしてきた。
最近になって直巳が口止め料を増額してきたのを機会に
彼女を排除することを決意する。
現場に選んだのは、フェリー船<マックス>。
東京沖をクルーズ中の船内で原田は直巳を殺害する。
たまたま別件の捜査のために<マックス>に乗り込んでいた
福家警部補が捜査にあたることになるが・・・
タイトルを見て、『ウルトラセブン』の第4話を連想した人。
あなたは私の同類です(笑)。

「失われた灯」
映画脚本新人賞を受賞してデビューした人気シナリオライター・藤堂。
しかし受賞作は盗作だった。
それを知る古美術商・辻から脅迫されていた藤堂は
売れない役者・三室を使って架空の誘拐事件をでっち上げて
アリバイを作り、首尾良く辻を殺害した。
さらに三室をも始末して、後顧の憂いを絶ったかに見えたが・・・

「相棒」
漫才師 "山の手のぼり" こと立石、"山の手くだり" こと内海。
二人は人気漫才コンビだったが、
立石はコンビを解散してピンでの活動を目論んでいた。
しかし相棒の内海は頑として解散を認めようとしない。
思いあまった立石は、稽古場として借りた一軒家で
話し合いをしようとするが、はずみで内海を殺してしまう・・・
ラストで、内海が解散に応じなかった理由も明らかになるが
なんとも切ない事情だったりする。

「プロジェクトブルー」
玩具の企画専門会社社長・新井は
学生時代に有名玩具の違法コピーを製造していた。
町工場を営む造形家・西村から過去の犯罪行為について
法外な口止め料を要求された新井は、
事故に見せかけて西村を殺害することに成功するが・・・
タイトルを見て、『ウルトラセブン』の第19話を連想した人。
あなたは私の同類です(笑)。
この作品では怪獣の玩具がキーアイテムになっている。
「ソフビ人形」なんて単語、久しぶりに聞いたなあ・・・


コロンボ警部(原語を直訳すると "警部補" らしいが)は
ヨレヨレのコートを着た風采の上がらない、
冴えない中年刑事の姿で犯人の油断を誘っていた。

本書で登場する福家警部補は小柄で童顔、縁なしメガネを愛用し
現場ではよく一般人に間違われ、
犯人からも警官だと信じてもらえないこともたびたび、
というキャラクター。
しかし頭脳の切れは抜群で、意外に雑学(特にオタク系)の知識が豊富で、
現場に残された物証や供述の細かい矛盾点を丹念に突いて
犯人の偽装工作を切り崩していく。
このあたりは "本家" コロンボに勝るとも劣らない。
犯人がみな、功成り名を遂げたひとかどの人物であるところも、
ラストで福家警部補にトドメを刺されたときに
慌てたり激高したりせず、静かに負けを認めるところも
本家を踏襲している。

福家警部補シリーズは過去に2度ドラマ化されている。

まず2009年に「オッカムの剃刀」(第1巻に収録)が
NHKの単発ドラマになっていて、この時の福家は永作博美さん。
これは観た。けっこうイメージに合ってるかなと思う。
ちなみにこの時の犯人は草刈正雄だったなあ。

2回目は2014年。フジテレビ系で全11回の1クール作品。
この時の福家は檀れい。
うーん、彼女に恨みがあるわけじゃないがちょいと華やかすぎないか?
あ、永作さんが地味というわけではないので念のタメ(^^;)。


シリーズ第3巻も既に文庫化されていて手元にある。
これも近々読む予定。

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