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誤解するカド ファーストコンタクトSF傑作選 [読書・SF]


誤解するカド ファーストコンタクトSF傑作選 (ハヤカワ文庫 JA ノ 4-101)

誤解するカド ファーストコンタクトSF傑作選 (ハヤカワ文庫 JA ノ 4-101)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2017/04/06
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

ファーストコンタクトを扱ったSFアニメ『正解するカド』と
タイアップしたSFアンソロジー。
もっとも、私はこのアニメは未見。
これを機会に見てみようかなと思ってるんだが(笑)。

内容は、国内作品6編、海外作品4編を収録。


「関節話法」筒井康隆
たぶん20代の頃に読んだんじゃないかと思うんだけど
すっかり中身は忘れてた(笑)。
関節をポキポキ鳴らすことで会話する異星人との
交渉役を無茶振りされた男の苦闘を描く。
SFに執筆の重心を置いていた頃の筒井康隆らしい奇想が炸裂する。
本人が悲壮なまでに頑張れば頑張るほど喜劇的になってしまう展開は流石。

「コズミックロマンスカルテット with E」小川一水
他のアンソロジーで既読。
生命が存在する異星を目指して航行を続ける宇宙船。
乗組員は外交官の田村雅美(男性です)ただ一人。
ところがその宇宙船に美少女の姿をした謎の生命体が侵入、
田村に結婚を迫ってくるが・・・
ライトノベルによくありそうな異種婚姻譚の設定だが、
このあとの展開が予想できる人は少ないんじゃないかと思う。
終始笑いが絶えない、楽しいラブコメSFでもある。

「恒星間メテオロイド」野尻抱介
恒星間飛行が実用化された22世紀。
食料プラントの爆発事件の原因究明を依頼された
高木惣七と佐伯美佳の二人は、爆発を引き起こしたと思われる物体を
追跡して太陽系外へと向かうが・・・
ワープ航法は存在しないので、宇宙船は基本的に亜光速航行。
なので、1ヶ月の旅に出たつもりが地球では14年経ってるとかの
相対論的時間差が普通に存在する世界。
調査航行に行くたびに時間差が生じ、
やがて知人はみんな死んでしまうはずなんだが
二人はそれが仕事なのか気にしないようだ。
特に美佳さんが動じないのはすごい。
ガチガチのハードSFなんだが、主役二人の
まったりした雰囲気のおかげで堅さを感じさせない。

「消えた」ジョン・クロウリー
月軌道上に現れた巨大なマザーシップからやってきたのは
エルマーと呼ばれる異星人。
人間の家庭を訪ね、雑用をすすんで行ってくれる彼らの真の目的は不明。
何か見返りを要求するわけでもなく、ただ "善意チケット" と呼ばれる
アンケート用紙を差し出すだけだった・・・
ストーリーはわかるんだけど、
結局のところ作者は何を言いたかったのかよく分からない(笑)。
理解力がなくてスミマセン。

「タンディの物語」シオドア・スタージョン
主人公のタンディは、三人兄妹の真ん中の女の子。
兄のロビンと妹のノエルの間でもめ事ばかり起こしていた。
しかし、雨ざらしのぬいぐるみ・ブラウニーと出会った日から、
タンディは変わり始める・・・
SFといえばSFなんだが、ちょっと不気味なホラーな感じも受ける。

「ウーブ身重く横たわる」フィリップ・K・ディック
宇宙船の乗組員ピ-タースンは、ある星に立ち寄った際、
現地人からウーブという巨大な豚に似た生物を食料として買う。
しかし宇宙船が出発し、ウーブを調理しようとしたとき、
突然ウーブが語り出す。
「船長、他にも話し合うべきことがあると思うんだがね」
高度な知性を持つ豚を食料として買い込んでしまった船員たちは・・・
藤子・F・不二夫あたりが書きそうな話だなあって思いながら読んだ。

「イグノラムス・イグノラムビス」円城塔
やっぱり私のアタマでは
この人の作品を理解することはできないようです。

「はるかな響き Ein leiser Ton」飛浩隆
映画『2001年宇宙の旅』に登場する、人類の先祖に進化を促した
謎の黒い石版(モノリス)の正体に迫る・・・という作品なんだが
これもよく分かりません。

「わが愛しき娘たちよ」コニー・ウィリス
小惑星に建設された良家の子女向けの全寮制の学校で
一部の生徒が "テッセル" という謎の生物を飼い始める。
テッセルの正体はよく分からないんだが、これを飼うことによって
生徒たちにある変化が現れていく・・・
解説によると、発表時に賛否両論が巻き起こった問題作らしい。
じっくり読み込めば面白いのかも知れないが
ヒロインかつ語り手のタヴィが、あまりにも "あばずれ" 過ぎて
読み続けようという気力を削ぐこと夥しい。
内容を鑑みれば、この手法が効果的なのは分かる。
でも、オジサンにとってはこの手の女の子につき合うのは苦痛だなあ。
理屈ではわかっても感情が受け付けない。そういう作品もあるんです。

「第五の地平」野崎まど
他のアンソロジーで既読。
地球上をことごとく征服したチンギス・ハーンが
宇宙空間で生育する "宇宙草" の開発に成功、
太陽系内の黄道平面を "大平原" に変え、
さらなる版図の拡大を目指す・・・という途方もない展開。
まあ、「あり得ないような壮大な法螺話」ってのも
SFとしては "アリ" だと思うので、これはこれでいいんだが
ただ、それを面白がってくれる人がいるかどうかが問題。
私にとっては今ひとつだったかな。
あと、ふと思ったのだけどこれのどこが
ファーストコンタクトなんだろう?
解説では、編者の大森望氏が
「これはファーストコンタクトものの傑作です!」
って断言してるんだけど、私にはそう思えないんだよなあ。


大森氏が編んだアンソロジーを、今までにかなりの冊数読んできた。
前々から思ってたけど、アンソロジストとしての大森氏の評価基準は
私のそれとかなり異なるようだ。

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