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白戸修の狼狽 [読書・ミステリ]


白戸修の狼狽 (双葉文庫)

白戸修の狼狽 (双葉文庫)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2013/05/16
  • メディア: 文庫
評価:★★★

なぜか "中野" に行くとトラブルに巻き込まれてしまうという
不思議な "体質" をもっている主人公・白戸修。
そんな彼の出会う事件を綴ったシリーズ第二弾。

「ウォールアート」
なんとか中堅出版社への就職を果たした白戸。
模型雑誌の表紙を描いているイラストレーター・轟のところへ
届け物を言いつかるのだが、最寄りの中野駅を降りたあと
道に迷ってしまう。時は既に真夜中。
そこで白戸は、スプレーで落書きをしている謎の人物を目撃する。
そして白戸は落書き犯を見張っていた七倉という男に
犯人と思われて捕まってしまうのだった・・・

「ベストスタッフ」
就職して三ヶ月。やっと訪れた休日なのに、
大学時代の先輩・仙道に呼び出された白戸。
中野にある新日本会館で開かれる、アイドル・雛美(ひなみ)紀子の
コンサートのステージ設営に無理矢理駆り出されてしまったのだった。
そして、スタッフの間にはある噂が。
雛美紀子を狙うストーカーがコンサートの妨害を企んでいるらしい。
その噂を裏付けるように、準備中にもトラブルが起こって・・・

「タップ」
中野の駅前でポーチを拾った白戸。そこに現れた女性・諸刃冴子は
「そのポーチには盗聴電波が出ている」と告げる。
二人はそのままポーチの持ち主・柳沢由美のマンションへ向かう。
由美の部屋で二人はさらに盗聴器を発見するが・・・
ここから先は予想のつかない展開の連続なんだが、
ラストはちょっぴりほっこりする。

「ラリー」
白戸が中野駅ですれ違った男は定期入れを落とした。
拾った白戸は男を追いかけるが、なぜか相手は悲鳴を上げて逃げていく。
そこへ現れた男・宇田川は、白戸にアルバイトを持ちかける。
それは複数のグループが都内を巡る、謎の "ラリー" だった。
宇田川は現在一位。そして、他のグループが
宇田川と白戸を標的に次々と襲ってくるのだった・・・
ラリーの賞品もユニークだが、この価値が分かる人は少なそう。
そしてもちろん、宇田川の意外な "目的" に気づく白戸くんだった。

「ベストスタッフ2 オリキ」
仙道から再びアルバイトへ無理矢理駆り出されてしまった白戸。
こんどは男性アイドルグループのコンサートの警備だ。
一回目のコンサートのラスト、興奮する観客を押し止めていた仙道は
負傷して病院送りになってしまう。
コンサートの客である君川結花と知り合った白戸は、
彼女の話から仙道の負傷は何者かの陰謀であった可能性に気づく・・・
私はこの手のアイドルコンサートやロック系のコンサートに
行ったことがないんだが、イベントの裏側の描写もけっこうあって
意外な仕組みが分かったりするのも面白いところ。
今回のゲストの結花さんは最優秀助演女優賞なみの大活躍。


白戸くんは毎回毎回、四苦八苦する羽目になるのだけど、
だからといって他人を恨むことのないお人好しな性格。
そしてなぜか洞察力は鋭く、トラブルに振り回されているうちに
いつの間にかその裏に潜む事情を見抜いてしまう。
そんな主人公の穏やかな性格故か、どの物語も
収まるところに収まっていい案配の結末を迎える。

いやあ、やっぱり最後は人間性の問題になるのだね。

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