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真夏の異邦人 超常現象研究会のフィールドワーク [読書・SF]


真夏の異邦人 超常現象研究会のフィールドワーク (集英社文庫)

真夏の異邦人 超常現象研究会のフィールドワーク (集英社文庫)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2014/09/19
  • メディア: 文庫
評価:★★★

主人公は東王大学<超常現象研究会>に所属する1年生・星原俊平。
部長の天川(てんかわ)創一朗、先輩部員の月宮秋乃、
日野劉生(りゅうせい)ら3人と共に、謎の現象が起こっているとの
ネットの書き込みがあった冥加(みょうが)村へ調査に赴くことになる。
そこは俊平が小学校時代までを過ごした故郷でもあった。

到着した夜、実家のベランダから空を見ていた俊平は
謎の飛行物体を目撃する。
物体が落下したと思われる場所へ向かった俊平が見つけたものは
棺のような形をした漆黒の謎の物体だった。
そして、その中から現れたのは白い肌に金髪碧眼の美少女。

少女を保護して実家へ連れ帰るが、彼女は日本語を解しない様子。
身振り手振りで意思疎通を図るうち、
彼女は "ユーナ" と呼ばれることになった。

<超現研>の一行はユーナを伴って村の調査を始めるが
村はずれで人間の手首が発見されたとの報せが。
そこは、俊平がユーナを見つけた場所でもあった・・・


異星人(らしき)少女・ユーナとのファーストコンタクトSFであり、
彼女に恋してしまった俊平くんがひたすら頑張るラブコメでもあり
切断された手首の謎を解く本格ミステリでもあり、
そしてなにより、中学校時代のトラウマから、
オカルト・超常現象に対して心を閉ざしてしまっていた俊平くんが、
再び "不思議なものへの憧れ" を取り戻す "成長" の物語になっている。

ベースはSFなのだけど、手首の謎を巡る "犯人" は、
きっちりと論理的に導かれる。
もっとも、メインの謎であるところの
「なぜ犯人は手首を切断したのか」「なぜ手首だけ残していったのか」
この真相は本書ならではのユニークなもの。
詳しく書くとネタバレになってしまうのが歯がゆいが
SFもミステリも好きな人なら一読の価値があると思う。

SFで始まり、ミステリとして展開し、そのミステリが解決した後、
物語はSFとして終結を迎える。

俊平君に訪れたひと夏の "恋"。
「初恋は実らぬもの」と言われるけれど、
希望を残したエンディングが心地よい。

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