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Love 恋、すなわち罠 ミステリー傑作選 [読書・ミステリ]


Love 恋、すなわち罠 ミステリー傑作選 (講談社文庫)

Love 恋、すなわち罠 ミステリー傑作選 (講談社文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/10/13
  • メディア: 文庫
評価:★★★

2013年に発表された短編ミステリから選ばれた10編を収録した
ベスト・アンソロジーの二冊目。
前巻収録の5編に続き、本書では残りの5編が収録されている。

「人魚姫の泡沫(うたかた)」森晶麿
新人恋愛小説家・夢宮宇多とその担当編集者・井上月子のコンビが
出会う事件を描いた連作短編集「偽恋愛小説家」中の一編。
新作執筆を迫る月子から逃れ、夢宮は行方をくらましてしまう。
月子は彼を追って伊豆高原へ向かうが
そこで彼女は高校時代の片思いの相手・美船と再会。
そして美船の婚約者は、月子のかつての親友・喜代だった。
穏やかではない心を抱えて、二人と同じ宿に泊まる月子だが・・・
意外な出会いから明らかになる過去の秘密。
そしてそこから生まれる殺意。やっぱり嘘はいけませんね。
自分を偽って生きても幸せをつかむことはできないという教訓(笑)。

「言えない言葉~The words in a capsule」本田孝好
"死神狩り" に誘われた小学四年生のボク。
同級生の仲間たちと一緒に出かけるが、出会った死神は
制服を着た女子中学生、そして葬儀店の一人娘だった。
その "死神" に掴まってしまったボクは、
ある事件の犯人捜しを手伝わされることに・・・
ラストに登場するのはこの "事件" から6年後、高校一年生のボク。
そして明らかになる意外な事実。うーん、これは一杯食わされた。
連作シリーズの中の一編。この作者、何年か前に
読むのをやめてしまったのだけど、このシリーズだけでも
読んでみようかな、ってちょっと思ってる。

「恋文」西澤保彦
エミールこと日柳永美(ひさなぎ・えみ)は高校一年生。
彼女は祖母・道子の蔵書に挟まっていた手紙を見つける。
37年前の学生時代に道子のルームメイトだった友人・工富多津子が
書いたものらしい。しかしその内容は
「もしも私が不審死を遂げたら、犯人は以下のどちらかの男です」と
実名を挙げて "告発" するものだった・・・
一通の手紙が時を超えて青春の思いを甦らせる。
"暗号もの" としても面白い。

「春の十字架」東川篤哉
雑誌記者の村崎は遠戚の緑川静子に頼まれ、鎌倉の緑川邸を訪れる。
静子が言うには、彼女の夫・隆文が浮気をしており、今晩あたり
離れにその相手を連れ込むか、抜け出して会いに行くと睨んでいる。
その離れを一晩中監視する役目を押しつけられた村崎。
しかしその翌朝、離れの中で隆文が絞殺死体で発見される。
しかも遺体は十字架に縛り付けられた状態で。
現場のドアはロックされ、出入り可能なのは天窓のみだった・・・
"準" 密室な殺人の謎解きも面白いが、
一番驚くのは、探偵役として登場する人物の名前。
いやあこいつは「いくらなんでもそれはないだろう」
奇抜すぎるネーミングに、思わずぎゃふん(笑)。

「不惑」薬丸岳
結婚式のビデオ撮影を生業とする窪田。
彼の婚約者・麻里子は13年前に強盗に襲われた。
それが原因で彼女は自殺を図り、一命は取り留めたものの
病院で寝たきりの状態になってしまっていた。
犯人は当時17歳。少年法の壁に阻まれてその素性を知ることは
できなかったが、窪田は独自に調査を続けていた。
そして今日、結婚式を挙げるカップルの新郎が
13年前の事件の犯人だと窪田は知ってしまう・・・
ラストに明かされる、窪田の心の中にあった真の "思い"。
自らの身に置き換えてみると、なんとも重く苦しい。
ミステリとしてはありだと思うが、物語としてこれを読むのは辛いなあ。

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