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長い廊下がある家 [読書・ミステリ]


長い廊下がある家 (光文社文庫)

長い廊下がある家 (光文社文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2013/07/10
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

臨床犯罪学者・火村英生とミステリ作家・有栖川有栖の
コンビが活躍する本格ミステリ中短編4作を収める作品集。

「長い廊下がある家」
限界集落を研究している学生・日比野は山中でのフィールドワークで
道に迷い、住人のいなくなった廃村にたどり着く。
そこで出会ったのはオカルト番組の取材に訪れた男女3人組、
編集者の市原、心霊ライターの久谷、カメラマンの砂子。
彼らはもう1人のメンバー、宮松の到着を待っていた。
彼らが取材していたのは幽霊が出ると噂の館。
その地下には長い通路があり、130m離れた別棟とつながっている。
その通路は中央に閂のついた扉があって東西に二分されていた。
そしてその扉の西側で宮松の死体が発見されるが
犯行時刻には容疑者である3人組はすべて東側の家にいて、
現場へ行くことはできなかったことが分かる・・・
最後に明らかになるトリックは "コロンブスの卵" 的で
"目から鱗が落ちる" ような思い。

「雪と金婚式」
田所雄二・安曇(あずみ)夫妻は金婚式を迎えた。
しかしその翌朝、夫婦と同居している義弟・重森が
自室で絞殺死体となって発見される。
容疑者として2人の人物が浮上するが、どちらにもアリバイが。
そして死体発見から6日後、田所雄二は階段で転倒して側頭部を打撲、
そのため転倒以前の約1年分の記憶を失ってしまう。
転倒する直前、雄二は安曇に対して「犯人の見当がついた」と語っていた。
雄二の記憶を取り戻し、犯人を指摘するために火村が取った行動は・・・
ミステリなんだけど、半世紀にわたって苦楽を共にしてきた夫婦の
"ちょっといい話" でもある。

「天空の眼」
有栖は、彼の住むマンションの隣人で
高校教師の真野沙織から相談を受ける。
卒業生の広沢星子(ほしこ)が撮ったスナップ写真に
"謎の顔" が映りこんでいたのだという。
それを「心霊写真だ」と決めつけけて広沢を怖がらせたのは、
彼女と同じゼミの支倉明徳という男子学生。
そして支倉の友人・富士野研介は
姫路郊外の廃屋の屋上から転落死していた・・・
本作では火村は有栖の回想にだけ登場し、
心霊写真と転落死をつなぐ謎を解くのはあくまで有栖。
こういう回もあるんだね。
この真野沙織さんって、時たま出てくるキャラみたいなんだが
有栖さんとは今後どうにかなるんですかね?
もっとも本シリーズは "サザエさん時空" なので
ずっと隣人のままなのかな。

「ロジカル・デスゲーム」
火村の講義に潜り込んでいたニセ学生・千舟。
彼の父が過去の未解決事件について重大な事実を知っているという。
千舟に招かれ、彼の自宅を訪れた火村だが、
それは千舟の仕掛けた罠だった。
火村は千舟から命をかけた "ゲーム" を挑まれることになるが・・・
本作は他のアンソロジーで既読。初読時は、謎解きの部分の
確率論的なところが今ひとつよく分からなかったのだけど
今回はじっくり読み込んだので前回よりは理解できたと思う(笑)。
あと、火村が仕掛けた "逆転の一手" のシーン。
マジシャン並みの "技" が必要だなあ、って印象は変わらず。

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