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フェニキアの至宝を奪え・上下 [読書・冒険/サスペンス]


フェニキアの至宝を奪え〈上〉 (新潮文庫)

フェニキアの至宝を奪え〈上〉 (新潮文庫)

  • 作者: クライブ カッスラー
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/05/28
  • メディア: 文庫
フェニキアの至宝を奪え〈下〉 (新潮文庫)

フェニキアの至宝を奪え〈下〉 (新潮文庫)

  • 作者: クライブ カッスラー
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/05/28
  • メディア: 文庫
評価:★★

海洋冒険小説ダーク・ピット・シリーズのスピンオフである
「NUMAファイル・シリーズ」も本作で7作目になるそうだ。

アメリカのNUMA(国立海洋海中機関)に所属するダーク・ピットの
同僚にして、特別出動班を率いるカート・オースチンとその仲間たちが
活躍するシリーズだ。

ダーク・ピット・シリーズの著者クライブ・カッスラーが
ポール・ケンプレコスと共作する形で書かれているシリーズだなんだが
私としてはあまりこの二つのシリーズに差を感じなかったりする(笑)。


作品の冒頭ではカッスラー作品では恒例の遙かな古代の出来事が描かれる。
今回は紀元前900年頃。フェニキア人の駆る大型帆船が、
いずことも知れぬ地で繰り広げるエピソード。

続いて舞台は1809年に跳び、アメリカ合衆国第3代大統領
トーマス・ジェファーソンを巡るエピソードが綴られ、
そしていよいよ時間軸は現代へ移り、本編の開幕である。


イラク戦争時にバグダットの博物館から略奪され、
行方不明になった展示品群。
ユネスコ調査官カリーナ・メカディはその中の一つ、
<航海者>と呼ばれる古代フェニキアの彫像を取り戻すことに成功した。

カリーナは<航海者>をアメリカに運ぼうとするが、
積んでいたコンテナ船が謎の一団に襲われてしまう。
しかしたまたま近くで氷山の曳航作業をしていた
オースチンたちが駆けつけ、一味は撃退される。

なぜ<航海者>は狙われたのか。そしてそれを命じた者者は誰か。

オースチンたちは事件について調査を始めるが、
やがて<航海者>には世界の宗教地図を塗り替えかねない真実が
潜んでいることを知る・・・


トーマス・ジェファーソンの残した暗号の手紙とか、
ソロモン王の秘宝とか、いろいろ道具立ても賑やかで、
オースチンたちの "宝探し" の物語がアクションを交えて語られていく。


とまあ書いてきたけれど、本書への評価は★2つ。
けっこう辛いのはいささかマンネリ気味かなあと思ったから。

「タイタニックを引き揚げろ」に代表される
「ダーク・ピット」シリーズの初期作は
それこぞ手に汗握るサスペンスの名作揃いだったのだが
シリーズを重ねるにつれて、緊張感が薄れてきたように思う。

まあ長期シリーズものの弊害というか宿命なのだろうけど、
主人公たちが危機を迎えても、それがあんまり危機に感じられない。
危機の描写にも深刻さが足りないように感じるし、
だいたい主人公が危機と思っていなさそうだし。

 作者(たち)はそんなつもりで書いてはいないのだろうけど、
 読者にそれが伝わってこないと言った方が良いか。

悪い意味で「水戸黄門」化してるような気がする。

もっとも、そういう物語だから安心して読めるという人もいるだろう。
ダーク・ピット・シリーズも最初は12作だか16作で終了、とか
アナウンスされてたと思うんだがもう24作目になっているし(笑)、
2000年代に入ってからは、本シリーズのように共著の形で
新シリーズを続々と立ち上げて量産体制に入ってしまった。
それだけ、こういう読み物シリーズの需要があるということだよねえ。

まあ多作になってしまったぶん、
1作ごとの密度が下がってるのかも知れない。
世の中には質と量の両立を果たしている作家さんもいるようだが
すくなくともカッスラーは、量産しない時代の作品の方が
明らかに質は高かったよ。

あと、最後に明かされる "秘密" の内容だが・・・
キリスト教世界の人にとっては重大なことなのかも知れないが
日本人にはちょっと馴染みがないというかピンとこないというか・・・
まあこのへんは作者の責任ではないよね。
そういう意味では、読者の宗教観によっては本書の評価も変わるかも。

手元にはもう何作か未読のカッスラー&共著シリーズの作品が
あるのだけど、どうしようかなあ。
まあせっかく買ってあるんだから積ん読分だけは読むことにしようかな。
これから出版される分はその時に考えよう。

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