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ホテルモーリスの危険なおもてなし [読書・ミステリ]


ホテルモーリスの危険なおもてなし (講談社文庫)

ホテルモーリスの危険なおもてなし (講談社文庫)

  • 作者: 森 晶麿
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/05/13
  • メディア: 文庫
評価:★★★

かつては高級リゾートとして急成長を遂げた<ホテルモーリス>。
しかし副支配人が大手ホテルにヘッドハンティングされ、
スタッフをごっそり引き連れて "移籍" してしまった。

そのショックで支配人が自殺してしまい、業績は急降下。
夫人が後を継いだものの経営経験はゼロ。
廃業まで時間の問題かと思われたホテルに
臨時の支配人として送り込まれたのが本作の主人公・美木准。

芹川コンサルティング社長・芹川鷹一の妾腹の息子として生まれた准は
就職活動をしなくてすむとばかりに父の会社に入ったが
間もなく社長は他界、会社は弟(准から見れば叔父)・鷹次が継ぐ。
准は一転、新社長からすると目の上のこぶとなってしまった。

芹川コンサルティングは<ホテルモーリス>の筆頭株主であったため
名目上は「経営のてこ入れ」、実質は「厄介払い」、
准からすれば「貧乏くじを引かされた」わけだ。
入社一年目の若造でありながら支配人に選ばれたのには
そんな事情があった。

准くんの前にはさらに試練が立ちはだかる。
一般客が遠のいた<ホテルモーリス>は、いつのまにか
"ギャング" 御用達のホテルになってしまっていたのだ。

ちなみに "ギャング" とは、作品中の説明によると
「公正な取引に基づいて殺人・脅迫・恐喝を請け負う企業向け団体」
とのこと。いわゆる "そのスジの方々" ですね(笑)。

現在のホテル利用の大多数を占めるのは<鳥獣会>。
新興著しいギャング集団として知られる。
その<鳥獣会>が近々<ホテルモーリス>で宴会を開くという。
准くんに与えられたミッションは、この宴会を無事に乗り切ること。

ホテルに到着した准くんは、人的にも物的にも荒廃した有様を見て
即刻逃げ帰ろうとするが、そこで "運命の人" と再会してしまう。

5年前、17歳の時に父に連れられて<ホテルモーリス>へ来た准くんは
そのとき出会った20歳の女性・るり子に一目惚れしてしまった。
そして5年振りに再会した彼女は、
自殺した支配人の未亡人にしてホテルのオーナーとなっていた。
彼女への想いが再燃した准くんは、
一転してホテル建て直しに奔走し始めるのだが・・・

働く人々もまたユニーク。
化粧がケバいコンシェルジェ・那美は、
3つも年上の准に対してタメ口をきくし
チーフ・コンシェルジェの日野は
スキンヘッドにサングラスで元殺し屋(!)という経歴。

毎日のように起こる "そのスジの方々" とのトラブルを解決しながら
准くんの恋模様も綴られていき、やがて "その日" がやってくる。

基本的にはコメディなので、肩の力を抜いて楽しめる。
特異な状況下で起こる事件に、エキセントリックな登場人物が絡んで
大騒ぎをする様子を描いたユーモア・ミステリで、
クライマックスでは<鳥獣会>と対立するギャング団体や
准の叔父・鷹次まで登場し、様々な人々の思惑が絡み合いながらも
全てが一挙にカタが着く大団円を迎える。
ラストでは意外な事実が明かされて、仕掛けもなかなか。

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