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バチカン奇跡調査官 悪魔達の宴 [読書・ミステリ]


バチカン奇跡調査官  悪魔達の宴 (角川ホラー文庫)

バチカン奇跡調査官 悪魔達の宴 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 藤木 稟
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/10/24
  • メディア: 文庫
評価:★★★

カソリックの総本山、バチカン市国。
世界中から寄せられてくる "奇跡" 発見の報に対して
その真偽を判別する調査機関『聖徒の座』。

そこに所属する「奇跡調査官」である
天才科学者の平賀と、その相棒で
古文書の読解と暗号解読の達人・ロベルト。
この神父二人の活躍を描く第12弾。
長編としては10作目になる。


ある日、サウロ大司教に呼び出されたロベルトは、
ドイツへ赴くことを命じられる。

ニュルンベルク市長の娘ヘンリエッテが悪魔に取り憑かれたのだ。
男のような声で叫び、数人分の食事を平らげ
家中でポルターガイスト現象が多発するという。
対応に窮した現地の司祭・ベックマンから
バチカンに助けを求めてきたのだ。

エクソシズム(悪魔祓い)の実践経験が乏しいロベルトだったが
サウロの旧知のエクソシスト、ジャンマルコの補佐を命じられる。
ニュルンベルクへ到着した二人は、
ヘンリエッテの凄絶な変貌振りに戦慄するのだった。

一方、弟・良太の謎の予感に促され、ロベルトのもとへ向かった平賀は
ニュルンベルク駅で、一人の少女が
ホームから線路へ転落するところに出くわす。
間一髪、少女を救った平賀だが、駆けつけた刑事から意外な話を聞く。
ニュルンベルク駅ではこの1ヶ月で5回の人身事故が起こっていること。
しかもみな、同一時刻に起こっていること。

ロベルトと合流した平賀は、力を合わせて
ヘンリエッテに取りついた "悪魔" の正体、
そして駅の転落事故の真相に迫っていくが・・・


私も往年の映画「エクソシスト」を
おっかなびっくり観たくちなんだが
本書のヘンリエッタはまさに、
あの映画で描かれた "悪魔に憑かれた" 少女そのものである。

しかし、どんなに突飛な現象であろうと
とにかく "理屈づけ" してみせるこのシリーズ(笑)。

あるときは理詰めで、あるときは強引に、
「いくらなんでもそれはないだろう」
というような理屈でも、理屈には違いない(笑)わけで
今回の "悪魔少女" にも、意外な "真相" を提示してみせる。

駅の事故についても、それなりにきっちり説明してみせて
このあたりは懐かしの「怪奇大作戦」を彷彿とさせる。

終盤で二人が出くわすのは、かなり大がかりな陰謀だったりして
今回の物語の根っこは、次巻以降にも尾を引くのかも知れない。


「えー?」って思うような展開もあるし、"力業" な部分も多いが、
強引と言われようとも、とにかく説明してみせるという
その心意気が素晴らしい(笑)。
そして、それがけっこう面白いんだなあ。

毎回思うことだけど、「よく調べたなあ」「よく考えたなあ」。
作者の引き出しの多さは特筆に値すると思う。

前にも書いたけど、本書が楽しめるかどうかは
作者が次から次へと繰り出してくる "ネタ" の数々を
笑いながら「すごいすごい」って受け入れることができるかどうか。

まあ、ここまでシリーズが進んできているから
それができる人が残ってると思うんだけど
もし本書から読み始める人がいたら、
このことは頭の隅に留めておくといい。

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