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臨床真実士ユイカの論理 文渡家の一族 [読書・ミステリ]


臨床真実士ユイカの論理 文渡家の一族 (講談社タイガ)

臨床真実士ユイカの論理 文渡家の一族 (講談社タイガ)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/04/19
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

表紙にも描かれている妙齢の美女が本書のヒロイン・本多唯花(ユイカ)。

 ちなみにタイトルの「臨床真実士」には
 「ヴェリティエ」ってルビがふってあるんだけど
 意味がわかりません。フランス語?

パリ第5大学で修士の学位を取り、現在は
井の頭大学文学部臨床心理学の博士課程の院生である。
それには理由があって、
彼女は言葉の真偽虚実を瞬時に判定できてしまうという
特殊能力(作中ではそれを一種の "精神障害" と見なしているようだが)
を持つのだ。

そして未だ20歳(!)の彼女は、
法学部においては学部の3年生という身分でもある。
本書の語り手は、その法学部の同級生・鈴木晴彦くんが務める。


そんな彼女のもとへある依頼が持ち込まれる。
依頼主は同じ井の頭大学に通う学生・文渡英佐(あやわたり・えいすけ)。
愛媛県を地盤とする大財閥・文渡家の
次期総帥の座を約束された青年だ。

文渡家は15年前、使用していたプライベートジェット機の
着陸失敗事故により、乗り合わせた12名のうち5名を喪うという
悲劇に見舞われていた。

以来、一族は四国の山中、外界から完璧に隔離された
"天空の村" とも言うべき地に全員で引き籠もって
生活するようになっていた。
しかしその地で、英佐の弟・慶佐(けいすけ)が殺されるという
事態が勃発した。
もとより閉鎖環境の中、犯人はその "村" の中にいるはずだ。

英佐の祖母にして文渡財閥の総帥・紗江子の意思により、
警察権力を介入させないことが決定された。

英佐は祖母の意向を受け、ユイカに対して
現地へ赴き、"村" の中にいて
"嘘" をついている者が誰なのか
鑑定することを依頼してきたのだ。
しかしそれはとりもなおさず、
慶佐殺害の犯人を特定することでもあった。

ユイカは晴彦君をお供に、その "天空の村" を訪れるが
彼女らが到着した早々、第二の殺人事件が発生する・・・


まず開巻当初は、ユイカ嬢の特殊技能の披露と、
それに振り回される凡人・晴彦君の慌てぶりが
ユーモアたっぷりに描かれる。
もっとも彼は全編にわたって振り回されっぱなしなのだが、
それもまたお約束だね。

特殊技能の描写については、論理のお遊びという感じもするのだが、
この作者の開陳する "理屈" は相変わらず超難解で
だんだんついて行けなくなってしまう(^^;)。

 「言葉の意味はよく分からんが、とにかく凄い自信だー!」
 ってどこかの漫画のフレーズが頭に浮かんでしまう。
 屁の突っ張りはいらんですよ!(笑)

まあそれでもミステリとして読む分には問題ないんだが
でも、これ完璧に分かる人いるのかなぁって毎回思ってしまう。

ページの1/4ほどを消化した時点でユイカ嬢は現地へ入るのだが
立て続けにイベントが次々に起こって休む間もない。

典型的なクローズドサークルものなのだけれど
本書には犯人当てだけはない、もう一つ大きな仕掛けがある。

ネタバレになるので詳しく書けないのが辛いが、いやあこれはスゴい。

本書は文庫で300ページちょっとなのだけど、
この大ネタをじっくり書きこめば、
この倍の長さにだって仕立てられるんじゃないかなあ。
そういう意味では、出し惜しみ無しで
"本格ミステリ" の醍醐味が味わえる作品になってると思う。

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皇帝のかぎ煙草入れ [読書・ミステリ]


皇帝のかぎ煙草入れ【新訳版】 (創元推理文庫)

皇帝のかぎ煙草入れ【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: ジョン・ディクスン・カー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/05/20
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

おっとりとしていて人を疑うことを知らない美女、イヴ・ニール。
25歳でネッド・アトウッドと結婚し、
フランスの避暑地ラ・バンドレットで暮らし始めたが
ネッドの浮気と(今で言うところの)DVに苦しめられ、3年後に離婚。

ネッドは出て行ったが、イヴはラ・バンドレットの家で暮らし続けた。
やがて、真向かいの家に住む純真な青年、トビイ・ローズと親しくなり
婚約するに至る。

しかしトビイの父親・モーリスが殺害され、
向かいの家に住むイヴが容疑者となってしまう。
さらに彼女にとって不利な状況証拠が次々と現れる。

しかし、イヴはアリバイを主張できなかった。
殺害時刻には、彼女の家に侵入してきた前夫ネッドが
寝室にいたイヴに対して復縁を迫っている最中だったのだ・・・


世間知らずのお嬢さんだったイヴを騙くらかして(笑)結婚しただけあって
ネッドという男は徹底して下衆に描かれている。
性格は最悪だが女性に対する魅力はムンムン(古い表現だね)という。

対するトビイは、その純真さが "間違った方向を向いた純真さ"
であることがだんだん分かってきて、ガッカリさせられることばかり。

イヴさんは「男運が悪い」のか「男を見る目がない」のか・・・

イヴに雇われているメイドのイヴェット、そしてその姪のプルー。
トビイの母ヘレナ・妹ジャニス・伯父ベンジャミン。
ミステリだから当たり前なのだけど、
ネッドとトビイ以外の登場キャラもみな一癖ありそうで胡散臭い。


本作はカー屈指の傑作と呼ばれているのだけど
なるべく予備知識を持たずに読まれることをオススメします。

実は私は、本作のネタバレを
40年ほど前に何かで読んで知っていたはずなんだが
いかんせん記憶があいまいで(笑)
結局のところ、しっかり最後まで引っ張り回されてしまいました。

カーがトリックの考案やストーリーテラーとして
一流であるのはもちろんだけど
何よりも "小説巧者" であることがよく分かる一編。

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砂漠を走る船の道 [読書・ミステリ]

砂漠を走る船の道 (ミステリーズ! 新人賞受賞作品集) (創元推理文庫)

砂漠を走る船の道 (ミステリーズ! 新人賞受賞作品集) (創元推理文庫)

  • 作者: 高井 忍
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/11/19
  • メディア: 文庫
評価:★★★

東京創元社発行のミステリー雑誌「ミステリーズ!」主催の
短編ミステリー大賞の新人賞を受賞した作品を集めた
アンソロジー、その第1弾。
実は5作中4作は、短編集や他のアンソロジーで既読。
言い換えれば、それだけ才能豊かな新人さんだったってことだね。
ちなみに第1回は "受賞作なし" だったそうな。

「漂流巌流島」高井忍(第2回受賞作)
人使いの荒い監督・三津木に引き回されて
時代劇映画の筋立てを考える羽目になった
シナリオライターの "僕"。
二人して居酒屋で "巌流島の決闘" の資料をこね回しているうちに
武蔵と小次郎の意外な姿が見えてくる・・・
吉川英治による決闘の様子は
フィクションの要素が多分に多いと知ってはいても
それを上回る結論を導き出すのはさすが。

「殺三狼」高梨惟喬(第3回受賞作)
口に入れる物は常に毒味を怠らなかった商人・李小遊が毒殺される。
唯一毒味をしなかったのは薬のみだったので、
薬屋・蒲半仙が捕らえられてしまう。その一人娘・蒲公英は
半仙の店に出入りする謎の老人・雲游の助けを借りて
父の容疑を晴らそうとするが・・・
シリーズものになっているけど、続巻は出ないのかな。

「田舎の刑事の趣味とお仕事」滝田務雄(第3回受賞作)
これだけ未読でした。「殺三狼」とダブル受賞。
農業の盛んな田舎に勤務する黒川巡査部長と、
その部下の白石刑事のコンビが活躍する。
畑から大量のわさびが盗まれ、その犯人を追う。
相棒の白石が典型的なおバカなキャラで
探偵役の黒川は白石をこき下ろしてばかりなんだが
彼もネットゲームにはまっていて、とても人のことは言えない(笑)。
刑事二人の探偵ものは多いと思うが
その二人がネットゲームの中で偶然チームを組むことになり
(黒川は気づいているが白石は知らない)
ネットの中で会話しながら捜査が進むという
ユーモアたっぷりなミステリ。

「夜の床屋」沢村浩輔(第4回受賞作)
慣れない山道に迷い、たまたま出くわした無人駅で
一夜を過ごす羽目になった大学生の佐倉と高瀬。
しかしその深夜、駅前にある理髪店に明かりが灯り、
営業を始めていることに二人は気づく。
好奇心に駆られて店に入る二人だが・・・
この発端から導かれる結末も意外の一言。

「砂漠を走る船の道」梓崎優(第5回受賞作)
サハラ砂漠を行くキャラバン隊に、
取材で加わった雑誌記者・斉木。
しかしその帰路で、連続殺人が起こる。
ごく少数のグループ内で、
犯人が特定される危険が大きいにもかかわらず
あえて殺人を行った理由が秀逸。
さらにもう一つ、読者を驚かせる仕掛けを用意していて
まさに傑作。

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漫才刑事 [読書・ミステリ]


漫才刑事 (実業之日本社文庫)

漫才刑事 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 田中 啓文
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2016/10/06
  • メディア: 文庫

評価:★★★


腰元興業所属の若手漫才コンビ、「くるぷよ」。
最近伸びてきたとの評判通り、今日もけっこう笑いをとる。

大阪をホームグラウンドにする彼らに
東京進出&TV出演の話も出てくるが
コンビの片割れ・"くるくるのケン" はなぜかその話に難色を示す。

実は彼には別の顔があったのだ。
大阪府警難波署の刑事・高山一郎。
それが彼のもう一つの顔。
相方である "ぷよぷよのプン" にさえ知られていない。

舞台用のぶ厚いメーキャップに隠され、同僚の刑事たちもまた
ケンの "もう一つの仕事" に気づいていない。

お笑いと刑事、どちらも "天職" と考えるケン。
なんとかその両立を目指して奮闘する毎日だが
なぜか彼の周囲では芸人を巻き込んだ事件が続発する・・・


「第一話 ふたつの顔を持つ男」
大ベテランのピン芸人・びっくり太郎が、演芸ホールの楽屋で
首を絞められて意識不明になっているところを発見される。
すぐさまホールは封鎖されたので犯人はまだ中にいると思われた。
たまたまホールに出演していた「くるぷよ」。
ケンは、仲間に悟られないように事件の解決に協力するが・・・
登場人物紹介と、ケンの名探偵ぶりが描かれる。
そして難波署員の中でただ一人、交通課の婦警・城崎ゆう子だけが
ケンの "正体" に気づいてしまう。

「第二話 着ぐるみを着た死体」
今日の「くるぷよ」の仕事は、着ぐるみを着て
演芸ホールの前の路上で宣伝すること。
特別ゲストはスリムドッカンブラザーズ。
スリム健四郎とドッカン大作の二人による大人気漫才コンビだ。
この二人も着ぐるみ姿で宣伝に参加したのだが
スリム健四郎が、彼が入っているはずの着ぐるみの中から姿を消し、
ドッカン大作が入っていたはずの着ぐるみの中から
死体となって発見される・・・
「中身がない着ぐるみが歩く」&「人間消失」トリックはなかなか。
ユーモアミステリなんだけど、そういうところは手を抜いてない。

「第三話 おでんと老人ホーム」
老人ホームでの営業にやってきた「くるぷよ」。
一緒に出演するのは上方演芸界最年長の
亀潟喜寿とその娘・喜美子の漫才コンビ。
しかし、漫才中に喜寿が心筋梗塞を起こし、死亡してしまう。
その様子にケンは不審なものを感じるが・・・
本筋には全く関係ないけど、
ロックバンドを組んでシャウトしまくるご老人たちがいい。
こんな高齢者は本当にいそうだし、私もこんな老後を迎えたいなあ。

「第四話 人形に殺された男」
TV局の楽屋で、腹話術師の縦縞ボストンが刺殺死体で発見される。
現場は密室状態で、死体の傍らには
ナイフを持った腹話術用の人形が座っていた。
ボストンは常々、この人形について語っていた。
「この人形には魂が宿っとるんや。
 最近俺に対して反抗的で、時々『殺してやる』って叫ぶんや」
いささか無理がありそうな気もするが、
この状況ならあり得るかもな~って思わせる密室トリック。

「第五話 漫才師大量消失事件」
お笑い新人グランプリ「N-マン」に出場した「くるぷよ」。
順調に一回戦・二回戦を突破し、三回戦を迎える。
何とか勤務を抜けて会場に到着したケンだが
10組参加するはずが、会場に現れたのは「くるぷよ」ともう一組だけ。
8組の漫才師がどこかに消えてしまったのか・・・
今回、「くるぷよ」のライバルとして現れる漫才コンビ「格差社会」。
 ネタ担当が京大理学部卒という超高学歴とか、
 どこぞにそんな漫才師がいたような。
今回、いよいよ署内の同僚刑事にバレそうな展開に。

「第六話 漫才刑事最後の事件」
腰元興行の擁する最大の劇場・なんばキング座への
出演が決まった「くるぷよ」。
しかし、出演中の一週間は昼夜ともに拘束されてしまう。
ケンは苦肉の策として城崎ゆう子と "偽装結婚" し、
一週間の新婚旅行休暇をとる。
順調に舞台をこなす「くるぷよ」だが、公演の終盤で大事件が起こる。
芸人の青海ドノバンが、観客の中にいたゆう子に
拳銃を突きつけて人質に取り、
刑務所に服役中の相方・三田村ギャラリーの釈放を要求したのだ。
ガンで余命三ヶ月となったドノバンは、
最後にギャラリー相手に漫才がしたいのだという。
 真面目なドノバンと破滅型芸人でトラブルメーカーのギャラリー。
 そんなコンビが昔いたような気がするが。
なんば署の署員が舞台を取り囲む中、
ゆう子を救うためにケンがとった行動は・・・
漫才刑事・完結編である。
芸人と刑事、ケンはどちらを選ぶのか。それとも・・・


舞台が上方演芸界とあっては、いやがおうでも
ユーモアミステリにならざるを得ないよねえ。
登場するのも、みな芸人らしく濃いキャラばかり。
私は生まれも育ちも関東なので、上方の芸人さんはさっぱりなんだけど
関西の人ならモデルになった芸人さんを予想できるのかな?

個人的には "大食い女王" なみの食欲と胃袋をもち
ヘタなお笑い芸人よりウケをとる城崎ゆう子さんがお気に入り。

動機もトリックも "芸" がらみのものばかり。
とは言っても、「実際の芸人世界は本書の通りではありません」と
作者があとがきで断っている(笑)。
でもまあ、そんなことを気にせずに楽しめばいいと思う。

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「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」第三章 純愛編 ディスク到着! [アニメーション]


以前の記事のコメントに書いたとおり、
かみさんは今月末の大きな仕事が入ってしまい、
土日返上で働いてる。

今日も朝から、頭から火を噴きそうな勢いで
パソコンのキーをパチパチ叩いてる。

ピリピリと気が立ってるみたいで下手にいじると引っ掻かれそう。
なるべく近寄らないようにする。触らぬ神に祟りなし(笑)。

じゃあ私はヒマかと言われればそうでもなく、
食事の支度から買い物からけっこう忙しい。

11時頃、近くのスーパーへ行ったら何と駐車場が満杯で
中へは入れない! やっぱ台風のせいか。
みなさん買い出しに来てるんだね。

しばし待たされたのち、ようやく入れたので
今日と明日、二日分の食材を買い込んで帰宅。

遅めの昼食を終えて、洗い物をしていたら
宅配が来て、届きました!
時刻は14時少し前くらいでしたかね。

1021a.jpg
でもまだまだ暇にならないんですねぇ。
この一週間でごっそり溜まった洗濯物を洗って、
乾かすために近くのコインランドリーに行って。
でも、こちらも満員でなかなか空きができない。

今日は4回くらいランドリーと家を往復したかなあ。
その合間に、かみさんが仕事で使う物を買うというので
その買い物につき合ったり。

気がつけばもう夜。
夕食が済んだらやっと一息つけたので
届いたディスクをまじまじと見る(笑)。

包装を外すとこんな感じ。

1021b.jpg
古代くん、そんなところにいると危ないんじゃないかと思うんだが
この章ではここにいることに意味があるかな。

裏側はこうですね。

1021c.jpg
これが噂のパワードスーツか。第10話でちょこっと映ってましたね。
ヤマトにもともと積んであったとも思えないので
第十一番惑星からサルベージしたのかな。
まあ、モビルスーツじゃ別作品になっちゃうけど
パワードスーツなら許容範囲かなぁ。活躍のさせ方にもよるけどね。
羽原監督のサジ加減次第でしょう。
おそらくテレザート星で、ザバイバルの戦車軍団と
死闘を繰り広げるものと思われます。

スリープを外すと、ヤマト航空隊の皆さんが。

1021d.jpg
絵コンテ絵の表紙はコスモタイガーⅠと山本。中身は第10話。
脚本の表紙は惑星シュトラバーゼなんだけど、何故かこちらも第10話。
第9話じゃないのがちょっと意外。

1021e.jpg
こちらは裏表紙。
1021f.jpg
コスモタイガーⅠの正面図と、シュトラバーゼの遺跡かな。

今夜はこのディスクをじっくりと鑑賞することになりそうです。


さて、明日は台風が私の住んでいるあたりを直撃しそうなので
たぶん一日中、家に籠もることになりそう。
第三章の感想の下書きでもちまちま書き始めましょうかね。


ちなみに我が家は全員、
昨日のうちに期日前投票を済ませてます(^_^)v

それでは皆さん、
無事に台風が行き過ぎてくれることを祈りましょう。

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小説版「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち Ⅰ 《地球復興》 」 [アニメーション]


小説 宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち (1)

小説 宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち (1)

  • 作者: 皆川 ゆか
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/10/13
  • メディア: コミック
堂々500ページ超のノベライズである。
内容は本編の第1話~第5話まで。

基本的にはアニメの内容をほぼ忠実に再現しているといえる。
ただ、展開はアニメの流れに沿ってはいない。
もっぱらキャラにスポットを当てたつくりになっている。

例えば、「第一章 古代進」では第1話の内容を
<ゆうなぎ>中心に描いている。
つまり、地球司令部におけるパートは一切出てこない。
雪や桐生、藤堂や芹沢のシーンは一切ないのだ。

ではそのシーンはカットされているのかといえばさにあらず、
「第二章 英雄の丘」において雪の回想シーンとして描かれるのだ。

他の部分でも同じように、本編の流れをいったん分解し、
その章でスポットを当てたキャラに合わせて再構成している。

とは言っても、重要なシーンで抜けているところはないと思う。
映像で描かれたところはだいたい文章化されているのではないかな。

読むほうとしては変化があって面白いのだけど
(まあこんな風に読む人はまずいないと思うが)
本編を見ないで、まず小説版から読もう、なんて思ったら
時系列が頻繁に前後するので、
戸惑うというか理解しにくいんじゃないろうか。
(繰り返すが、こんな風に読む人はまずいないだろうけど)

であるから、本書の正しい(笑)読み方は、
やっぱり「観てから読む」ことだろう。


上にも書いたが、500ページを越えるボリュームがあるので
書き込みも充分だし、映像にはなかったエピソードや
説明されなかった細かい設定なども網羅されている。

例えば、物議を醸した "敬礼の変更" も、
国連宇宙軍から地球連邦防衛軍への改組に伴うものだと明示されてる。
コスモリバースシステムで甦った地球の様子の詳細とか、
地球の復興もいまだ少数の大都市に留まっていて
全く進んでいない地域も多いこと、なども明らかになる。

大きなエピソードの追加は2つ。どちらも雑誌媒体で
発表済みのものなので、ちょっと内容に触れておくと
まずはキーマンが地球に潜んでいるガミラス人スパイに接触する話。
これはちょっとしたサスペンス短編だ。
2つめは、軍を辞めることにした島を巡る話。
実際、民間企業からオファーがあったりするし、
島の母は就職も大事だが息子の女っ気の無さも心配したりとかする。
そして最後は「さすがは島大介の母」で締める。
ついでに、島がヤマトに乗り込むにあたり、
どうやって制圧部隊の制服を手に入れたのかも分かる。

細かいところでは、本編で描かれた以外のヤマトクルーが
コスモウェーブで見た "幻" のこととか。
けっこう意外な人物も現れたりしてる。

キャラによっては、メッセージが「ヤマトに乗れ」だけでなく、
近未来に起こることを予言されたりしている。
このあたり、テレサはやはり高次元の存在で
過去から未来まで見通しているのかなぁと思わせる。
ならば、地球を旅立ったヤマトの辿る運命もまた
テレサはすべて知っているのかも知れない。

面白かったのは、旧ヤマトクルーの監視要員になっている人も
いろいろだ、というのが描かれてること。
例えば新見さんの病室を監視している人は・・・
まあこのへんも読んで下さい(笑)。

ちょっと驚いたところでは、
コスモリバースシステム起動の瞬間が描かれていること。
地球にヤマトが帰還したあと、どのタイミングで起動したのか。
まあこのへんも読んでのお楽しみだね。

ラストの十数ページは、ヤマトに合流するシーンの
加藤のモノローグで〆となる。
分かってはいるんだけど、この展開はずるいなぁ。
実際、読んでいて涙が出てきてしまったよ。

著者はガンダム関係の小説などで有名な人らしいんだけど
全体的に読みやすく、なかなか達者な文章を書いていると思う。

1巻で5話分なら、最低あと4~5巻は出るはず。
これもまた楽しみになってきたねぇ。

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「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」第三章 純愛編 & 舞台挨拶 を観てきました [アニメーション]


やって来ました10月14日。
指折り数えていた第三章を観てきました。
なんと、新宿ピカデリーでの舞台挨拶の回です。
以下は、第三章を鑑賞してきた顛末となります。

※本編のネタバレはありません。
※現時点を以て本ブログの "情報統制状態" を解除いたします(^_^)v

さて、新宿ピカデリーでの舞台挨拶回の上映開始は8:30。
これに間に合うために5:00に起床。
眠いなあと思っていたら何とかみさんはもう起きていて
「遅いわねぇ。アタシはもう『脱力タイムズ』観ちゃったよ」

 かみさんはフジTVの『全力!脱力タイムズ』が大好きで
 土曜の朝は、金曜の夜に録画したVTRを見るのが日課になってる。

「ふえぇ~」と言いながら近くのコンビニまで朝飯の調達へ。
実は昨日の夜、通勤の帰りにここへ寄って
『ヤマト2202新聞2』を買った。
この時は残部が5部だったのだけど、今朝の段階で残りは2部。
売れているのかいないのかよく分からないが・・・

そんなこんなで朝飯を済ませ、6時過ぎに出発。
やっぱり東京は遠いなあ・・・

行程は順調に進み、新宿ピカデリーへ到着したのは8時ころ。
すでにロビーにはお客さんがあふれていてもう大変。
「皆さん朝早くからすごいな~」
自分たちを差し置いてそう思ってしまいました。

そんなこんなで開場時間。
今回私たちが取れたのはかなり後ろの席。
うーん、スクリーンはまあまあ見られるけど
舞台挨拶の人たちの顔はわからんだろうな~
と思っていたらその通りでした(笑)。

さて、いよいよ上映開始。
ネタバレにならない範囲でちょっと書いておくと・・・

・そうだよねぇ。これじゃあ波動砲を撃たないわけにはいかないよねぇ。
・大帝陛下が、びっくりするほど饒舌だった件。
・「選べ!」「選ばせない!」「選ばない!」ああ、涙が・・・
・宇宙にもホタルはいるようですよ奥さん!(誰?)
・そしてそして、最後には・・・!

上映後には舞台挨拶がありました。
まず登壇したのは中村繪里子さん。
登場しただけで拍手が湧いて、喜んでおりましたね。
続いて羽原信義監督、桑島法子さん、宮川彬良さん、福井晴敏さん。
桑島さんを生で観たのは初めてですね。
美人なのに、遠くて顔がよく分からないのが悲しい(T_T)。
上映後の挨拶なので、第三章の内容を踏まえての話もありました。
ネタバレにならない範囲の内容はニュース等でも流れると思います。

相変わらず羽原監督は真面目で一生懸命な感じですね。
福井さんはけっこう笑いをとるのが上手でいつもの調子かな。
宮川さんは「悪魔」というお題で作曲した
BGMのお話が面白かったですね。
本編の内容にぴったりだったという監督の話にずいぶん喜んでいました。
桑島さんは声優らしくいい声です。
収録時は演じるのに一生懸命で、できあがったものを見て
「こうなってたんだ~」と思った、というのは実感でしょうね。
第三章は雪さんにとっても大きな山場でした。
以前の記事にも書きましたが、あなたが森雪役で本当によかった。
私は、雪と古代の愛が試された第9話で泣きました。

フォトセッションが終了したら、最後に一言ずつ挨拶されて
舞台挨拶は終了です。
中村さん、ほんとに仕切りがうまいですねぇ。
かみさんも
「あの子、話もうまいし進行もそつなく、しかも笑いまでとって」
と感心しきり。
降壇するときの歩く姿勢も綺麗で最後のお辞儀もきっちり決めて。
いやあ素晴らしい。

シアター1を出たら、廊下のポスターも変わってました。

2202-3b.jpg
第四章は「天命編」ですか。
なんだかどんどん深刻な状況へ進んでいくような気がします。
まあガトランティス編が平穏なわけはないので(笑)。
1月27日とは意外に早い。
てっきり2月中旬と思ってましたから。
早いのは嬉しいのですが、作画は間に合うのでしょうか?
第二章あたりが売れ行きが好調なので、
予算が上積みされて作画スタッフが増えたのでしょうかね?

さて、退場してロビーへ。
実は、この次の舞台挨拶の回のチケットもゲットしてあったのです。
休憩時間に売店でホットドッグを買って腹ごしらえ。
売店にはビックリするほどの長蛇の列なのでグッズ購入は後回し。

次回の開場もけっこう早かったので即入場。
今回もかなり後ろの席(T_T)。
皆さん、チケットの購入に気合い入り過ぎ(笑)。
でも、これが "ヤマト愛" なのか。

再び中村さん登場。

2202-3a.jpg
そして、続いて4人のゲストの入場。
今回は上映前なのでネタバレはできないのだけど
「もうご覧になった方は?」の質問に手を挙げた人の多いこと。
うーん、私の席から見る限り、2/3以上は手が挙がってましたかね。
下手したら8割くらいいたかも。
とは言っても、未見の方もいますから当然ネタバレなしの挨拶です。
既に見ている身からすると隔靴掻痒の感はありますが
それは致し方ないことですよね。

そんな中、宮川さんの「これ、TVでやるの?」という質問が
面白かったかな。まあみんなが抱く疑問ですね。
「まだ全然決まってません」と羽原監督。
「これ、日めくりみたいに一週間刻みで見るの?」
たしかに、まとめてみた方が絶対いいよね。
「実は、ディスクに収録されているものとちょっと異なってます」
つなぎを意識して、微妙に編集して変えてるみたいですね。
これも円盤を見るときの楽しみかな。

そんなこんなで挨拶終了。今回はフォトセッションなしで降壇です。

そして、その後はなんと他の映画の予告編無しで本編の上映。
これも舞台挨拶会ならではかな。

そして二度目の鑑賞なんですが、
また同じところで泣いてしまいました。
福井さんのシナリオにやられたのか、
トシのせいで涙腺がゆるんでるのか。

上映終了後、ロビーへ戻ったのですが
売店の前には既に長蛇の列。
第十一番惑星の上空に集結した大戦艦の群れのようです。

プログラムだけでも買っていこうと思ってたのですが
早々に諦めました。
そしたら、かみさんから意外な提案が。
「帰りに、さいたま新都心で買えばいいじゃない」
おお、帰る途中でMOVIXさいたまに寄る。こりゃ盲点でしたね。

というわけで、ピカデリーを出て新宿駅へ。
歩いて行くうちに何やら騒がしい。
駅前に選挙カーが出てたんですね。そういえば総選挙中でした。
とは言っても、私の選挙区ではないので・・・(^^;)

帰路の途中でさいたま新都心で下車。
MOVIXさいたまは駅前ですから、徒歩ですぐ。
なんと売店はガラガラでした。
ちょうどヤマトの上映中の時間帯だったのでしょうね。
さすがにグッズはけっこう売り切れてましたが
パンフレットはつつがなく購入できました。

無事に家に帰り着いたらなんと4時。

パンフレットとヤマト2202新聞2を読んでたら
あっという間に2時間くらい経ってしまいました。

流石に早起きが過ぎて晩飯を作る元気がなく
近所のファミレスで夕食を済ませました。

ついでに、ネット通販で注文しておいた
「ヤマト2202 小説版」も手元に届き、
本日のミッション・コンプリートとなりました。

本日の戦果。
2202-3c.jpg
原画は 大帝陛下 & 古代・雪 & コスモタイガー・ブースター仕様。

2202-3d.jpg
そして、MOVIXさいたまで購入したパンフレット。

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これは、前日にコンビニで購入したヤマト2202新聞2。

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内容はページ順に
「第三章 大予測」「キャラ紹介」
「第一章第二章 PLAY BACK」「旧作との違い・オマージュ」
「山崎直子✕桑島法子 宙(そら)ガール対談」
「徹底考察 波動砲は撃てるのか?」
「インタビュー 羽原信義✕福井晴敏✕岡秀樹」
「インタビュー 宮川彬良」「どうなる? 今後の展開」
「先行上映会報告」etc
あと、二つ折りで
「麻宮騎亜&小林誠の書き下ろしピンナップ」が
挿入されている。これはすごくカッコいい。

最後に、小説版「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」第1巻。
副題は《地球復興》とある。

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なんと500ページを越える厚さ。ちょっとした辞書並み。
2202-3h.jpg
どうもヤマトに関わる人たちは、
みんな限度を超えてたがが外れる傾向にあるみたいです(笑)。
いいぞ、もっとやれ。
まだ全然読んでいないのだけど、目次を見る限り
第1話~第5話までの内容になっているみたいだ。
ちなみに、巻末の告知では第2巻の副題は《殺戮帝国》となる模様。

ああ、長い一日がやっと終わろうとしていますが
充実した一日でもありました。
ヤマトの新作が見られて、感動できて、とても幸せです。

ネタバレ込みの感想は劇場公開終了後に
ぼちぼちと上げていこうと思います。

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 [読書・冒険/サスペンス]


槐 (光文社文庫)

槐 (光文社文庫)

  • 作者: 月村 了衛
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2017/06/13
  • メディア: 文庫
評価:★★★★☆

主人公・弓原公一は水楢(みずなら)中学校の3年生。
彼が部長を務める野外活動部が夏合宿のために訪れたのは
携帯の電波も通じない人里離れた湖畔にあるキャンプ場だった。

寄せ集めでやる気のない部員たち、
怪我をして参加できない顧問に代わって引率を買って出た
教頭・脇田は規則に厳しく口うるさいので有名。

前途多難を思わせる中、突如キャンプ場を惨劇が襲う。
無法者の集団である「関帝連合」が大挙して押し寄せ、
宿泊客を虐殺し始めたのだ。

彼らの目的は、キャンプ場のどこかに隠された大金を見つけること。
公一たちも囚われの身となり、絶体絶命の危機を迎えるが
そのとき、何者かが突如「関帝連合」に反撃を開始した。

その戦闘力は驚異的で、さしもの凶悪集団も
赤子の手をひねるように易々と屠られていく。
しかも無慈悲にして容赦ない。

そんな殺戮が続く中、公一たちは外部へ連絡をとろうと
決死の脱出を試みるのだが・・・


評価の星の数を見てもらえば分かるが、
本書は現在のところ「今年読んだ本」の中で、
暫定ながら堂々の第1位である。

面白い本を薦めるときにいつも書くことだが
これから私が書く駄文を読むヒマがあったら
本屋に行くかネットでポチりましょう。

余計な予備知識がない方が楽しめます。

以下、本書の紹介を続けるけど
構成上どうしてもある程度のネタバレは避けられない。
なので、これから読むつもりになった人は以下の文章は読まずに(ry


本書は基本的にはアクション小説なのだけど
そこがメインではない。

本書の登場人物はみな "苦悩" を背負っている。
"負い目" と言ってもいい。
それは家族の問題だったり、人間関係だったりするが
みな何かしらの葛藤を抱えてこの場にいる。

例えば部長の公一には、祖母が振り込め詐欺に引っかかって大金を失い
それを苦にして自殺したという過去がある。
そのために家族が崩壊寸前まで追い込まれたことも。

同じく3年生で生徒会副会長を兼務する小椋早紀は、
部員減少に悩む公一に泣きつかれて入部した。

2年生の浅倉隆也は札付きの問題児で、
3年生で副部長の久野進太郎は彼の言動がことごとく許せない。

2年生の小宮山景子はクラスでいじめに遭っており、
同級生の新条茜に引きずられて入部はしたものの、
内心では茜に対して反撥している。

唯一の1年生の日吉裕太だけはやる気満々だが。

お世辞にもまとまりがいいとは言えないこの7人が
極限状態の中に放り込まれ、必死になって勇気を振り絞り、
そして生き延びるためにあがいていく。

一人一人は弱いけれど、力と知恵を合わせて仲間を守り、
苦難を乗り越えようとひたすらもがいてゆく。

昨日までの自分という殻を打ち破り、
一回りも二回りも大きく成長していく。

そんな姿を描くことこそが本書の眼目なのだ


この先はネタバレではないものの、けっこう重要な要素を明かすので
ここまで読んできて「読もうかな」と思った人は
以下の文章は読まずに(ry    (^^;)


自らの殻を打ち破り、乗り越える。
そしてそれは大人も例外ではない。

今回、怪我のために参加できない顧問に代わり
引率を買って出た教頭・脇田大輔。

学園ドラマなどのフィクションにおける「教頭」って、
けっこう損な役回りを振られることが多いように思う。

あるときは校長の腰巾着になってお世辞を振りまき、
逆に若手の平教員には尊大に振る舞う、中間管理職の典型とか。

またあるときは、校長の座を狙って密かに陰謀を巡らせて
生徒や平教員まで巻き込む騒ぎを引き起こしたりする極悪人だったり。

しかしこの脇田は違う。
規則にやかましくて口うるさいが、
街中で不良に絡まれても毅然と対応できず、
それを目撃された生徒たちからは莫迦にされてしまう。
一見するとダメ人間みたいだがそれが実は・・・なのだ。

脇田教頭もまた、この極限状態に放り込まれる。
そして彼はこの修羅場の中で、意外な行動を示す。
いや、意外と言っては失礼か。
彼は、徹頭徹尾、"教師" として振る舞うのだから。

私が思うに、本書における脇田は
フィクション史上 "最高の教頭先生" だ。
"最もカッコいい教頭先生" と言ってもいい。
そして、"最も泣かせる教頭先生" でもある。
実際、彼の "活躍" するシーンを読んでいると
涙があふれて止まらない。

もしあなたが本書を未読なら、ぜひこの
"史上最高の教頭先生" の活躍を見ていただきたい。
このシーンを読むためだけでも、この本を買う価値がある。

彼の活躍するシーンは、本書でも屈指の名場面といっていいだろう。


タイトルの「槐」(えんじゅ)についてまだ何も書いてない。
この記事の冒頭に "何者かが突如「関帝連合」に反撃を開始した"
と書いたのだが、この人物の名が「槐」なのだ。

この正体については、読み始めれば早々に分かることなんだけど
明かしてしまうと読書の興を削ぐことになると思うので書きません。


「関帝連合」については、
全く同情の余地のない極悪集団として描かれている。
登場する早々、キャンプ場にいる何の罪もない人たちを
次々に虐殺していくのだから。
幼い子どもの前にして、平然とその両親を殺害するなど
その冷酷非常ぶりも徹底している。

逆に言うと、この段階でもう
「こいつらは殺されても文句言えないなぁ」と
読者に納得させてしまうのだ。

巻末の解説で、「槐」が次々と悪人どもを粛正していくシーンを
往年のTVドラマ「必殺シリーズ」になぞらえているが、
私はむしろ「破れ傘刀舟悪人狩り」を連想したよ。
「てめぇら人間じゃねえ! 叩き切ってやる!!」って思ったもの(笑)。


すべてが終わったあとに置かれるのは
やや長めのエピローグ。
子どもたちの "その後" が丹念に綴られて
彼らの成長ぶりが実感でき、
満ち足りた想いで読み終えることができるだろう。


熱く燃え、感動に泣く。最高のエンターテインメントだ。
極上の読書の時間を提供してくれることは間違いない。

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「月の鏡」(「ヤマト2202 第二章EDテーマ) CDを購入しました [アニメーション]


アニメ『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』主題歌シングル「月の鏡」

アニメ『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』主題歌シングル「月の鏡」

  • アーティスト: テレサ(神田沙也加),
    オオサカ・シオン・ウィンド・オーケストラ,S.E.N.S Project
  • 出版社/メーカー: ランティス
  • 発売日: 2017/10/11
  • メディア: CD

発売日は10月11日なのですが、

7netで購入したので、一日早くフライングゲット。

ジャケットは、テレザート星をバックに虚空に祈るテレサとヤマト。
裏面は人工太陽が輝く第十一番惑星ですね。

いやあでもこのジャケットは、
CDショップのレジに持っていくのはちょっとためらうかなぁ。
もうそんなことに恥ずかしがるようなトシじゃないんだけどね(笑)。
なにせ純情なもので・・・ ヽ(´o`; オイオイ

 しかし、6月公開の映画の主題歌が10月発売というのは
 どうにも理解できません。
 これも、なにかの "大人の事情" なんですかねぇ・・・
 第三章の公開に合わせた、ってことなのかなぁ・・・?

さて、さっそく聴いてみました。
「月の鏡」は、テレサを演じる神田沙也加さんが自ら歌う、
ヤマト史上初のキャラソン(?)ですね。

まず感じるのは声の美しさ。透明感あふれる澄んだ歌声です。

透明すぎて、歌詞カードがないと
ちょっと聞き取れないところもあったりして(笑)。

トシを取ると高音が聞こえにくくなるらしいので
そのせいかも知れない。 (  ゚ ▽ ゚ ;)エッ!!

その歌詞カード。眺めているといろんなことを考えます。
テレサのことを歌っているのでしょうから、
今後のストーリーを踏まえて作詞されているのでしょう。
ならば、テレサが今後どのように物語に関わってくるのか
ヒントになりそうな気も。

第二章までのところ、テレサは "意識の集合体" のようで
「宇宙の平穏を祈り続ける女神」とされていますが
この曲の歌詞を見る限り、少なくとも女神様のままではなく、
(たぶん)ヤマトのクルーと関わることによって
より人間的な面(意思や感情)を見せてくれるようになりそうな、
そんな予感を抱かせる言葉が並んでいるような気がします・・・

まあ、人によって感じ方はいろいろかと思いますが。

もう一曲、"「宇宙戦艦ヤマト2202」メインテーマ" と銘打たれたのは
オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラによる
吹奏楽版「宇宙戦艦ヤマト」。

想い出しますねえ「ヤマト音楽団2012」。
舞浜のアンフィシアターまで聴きに行きましたよ。
今回の演奏は、あの時よりもキレがいい感じですかね。

最初に聴いたときはちょっと物足りない感じもしたのだけど
慣れてきたせいか、これはこれでいいのかも、って気になってきました。

さて、いよいよあと3日ですか。
皆さん、体調に気をつけて10月14日を迎えましょう(笑)。

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深紅の碑文 上下 [読書・SF]


深紅の碑文(上) (ハヤカワ文庫JA)

深紅の碑文(上) (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 上田早夕里
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/02/24
  • メディア: 文庫
深紅の碑文(下) (ハヤカワ文庫JA)

深紅の碑文(下) (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 上田早夕里
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/02/24
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

文庫上下巻で1100ページ近いSF大作。

作者自ら《オーシャン・クロニクル・シリーズ》と
呼んでいる作品群の中の一編で、
長編『華竜の宮』の続編的位置づけになる。


舞台となるのは25世紀。
地球は、急激な地殻変動によって内部のホットプルームが上昇、
それによって海洋底が隆起し、海水面が260mも上昇してしまっている。

人類はその生活基盤のほとんどを失い、
高地に住む陸上民と海に生存の場を求めた海上民とに分かれた。

陸上民は、残された陸地のみならず海上都市をも建設し、
その科学技術をもって高度なネットワーク社会を構築していた。
一方、海と共生することを選んだ海上民は自らの遺伝子を改変し、
海上生活に適応した生態システムを手に入れていた。

しかし、乏しい資源や価値観の違いを巡って
両者は世界中で衝突を繰り返していた。

そして、IERA〈国際環境研究連合〉が擁する
環境シミュレータ〈シャドウランズ〉が驚くべき予測をはじき出す。
遅くとも、今後50年のうちに再び大地殻変動が起こり
地球は人類の生存できない環境へと激変するという。

そんな中、陸上民と海上民が平和的に共存するために
日夜、さまざまな組織との折衝に奔走する
外交官・青澄誠司(アオズミ・セイジ)の活躍を描いたのが
『華竜の宮』で、その<大異変>まであと50年を残した時点で
物語の幕は閉じられた。


本書では、その直後の時点から、<大異変>までの40年あまりの
出来事が綴られていく。

物語は主に3つの視点から語られる。

まずは前作から引き続き登場する青澄誠司。
外交官を退職した彼は海上民の救援組織<パンディオン>を設立、
その理事長として前作以上に海上民のために尽くしている。

二人目は、海上民の武装組織<ラブカ>のリーダー、ザフィール。
もともとは医師だったが、乗っていた舟が海上民に襲われたことを
きっかけに陸上民との武力衝突に巻き込まれ、
いつしか海上民の抵抗勢力を率いるようになっていく。

そして三人目はDSRD(深宇宙研究開発協会)のメンバー・星川ユイ。
彼女(というかDSRD)の目標は、恒星間宇宙船を建造すること。
しかし、地殻変動によって一度は滅亡の危機に瀕した地球に
宇宙へ進出する余力などなく、
宇宙開発技術の進歩は何世紀にもわたって停滞していた。


誠司は迫りくる<大異変>に備え、
海上民の収容所となる海上都市群の建設を目指していた。

しかし陸上民の了解を取り付けるためには、どうしても
"2つの人類" の和解が必要だった。

誠司は和解交渉のためにザフィールとの接触を試みるが
積年の恨みつらみが重なる彼らにその選択肢はありえない。

一方、ユイが関わる恒星間宇宙船の建造には
膨大な資金と資源を必要する。
しかも完成したとしても人は乗せない、というか乗れない。
載せるのは人類のすべての記録、そして生命の "種"、
そしてそれらを管理する人工知性体のみ。

しかし、この宇宙に人類が存在した証しを残し、
いつか理想的な惑星に到着したときには
そこで人類の再生を目指そう、という理念にユイは共鳴する。
しかし宇宙船建造計画は世界中からの厳しい非難に晒されるのだった。


前作『華竜の宮』と比べて、個人の描写が深くなったと思う。
誠司、ザフィール、ユイの "半生記" といった趣がある。

とくに誠司は、前作直後の40代で登場し、終盤では70代まで描かれる。
仕事人間だった誠司は、前作では全くといっていいほど
女性の影は無かったが、本作ではちょっぴり
"ロマンス" めいた描写もあって、
彼が決して木石ではなかったことがわかる(笑)。

ザフィールは自ら望んでリーダーの地位に就いたわけではなく
成り行きというかなし崩しというか、
いつの間にか周囲からトップに祭り上げられてしまうのだが
一度引き受ければ最後まで仲間を先導し続ける。

自分の進む道の終点には "破滅" しかないのは分かっているのに
それでも進むのをやめることができない。
後半の彼に感じるのは限りない悲哀だ。

ユイは幼少期から成年期までが描かれるが
一貫して宇宙への憧れ、そして宇宙船建造の夢を手放さない。

三者三様ではあるが、
みな理想に殉じて生きていくところが共通しているのだろう。


細かいところでは、短編『リリエンタールの末裔』に
登場したキャラがでてくる。

グライダーで空を飛ぶことに賭けた若者を描いたこの短編、
これは単独でも面白いのだけど
シリーズの中においてどんな位置づけにあるのか
今ひとつわからなかったんだけど、その疑問が氷解した。
そうかあ、こうつながるのかぁ・・・


恒星間宇宙船の動力としては、核融合エンジンが予定されていたが
<大異変>を乗り切るための人類のエネルギー源としても
核融合発電が必要となっていた。

しかし、人類の間には "核エネルギー" に関して
抜きがたいアレルギーもまた存在している。

しかし、宇宙船のためにも、人類の生き残りのためにも
核融合の技術を手にしなければならない。
そしてそのためには "実験" が必要になってくる。

このあたり、どう折り合いをつけていくかも読みどころの1つだろう。


誠司のパートナーとなる人工知性体・マキ。
『華竜の宮』では男性設定で、男性のボディだったが
本作では女性ボディに変更され、設定も女性に書き換えられている。
"彼女" もなかなか魅力的で
とても健気に誠司に尽くすところが素晴らしい。
もう惚れてしまいそうである(笑)


前作の時も書いたが、
「滅亡が迫りました」→「回避できました」
という安易な話ではない。

本書の最後でも<大異変>はすぐそこまで迫っており、
人類がそれを生き延びられる可能性は限りなくゼロに近い。

しかし、それでもなお "運命" に対して
抗い続ける人類の姿を作者は描きたかったのだろうし、
本作でそれをきっちりと描ききったとも思う。

あとは「人事を尽くして天命を待つ」のみだ。

作者は、<大異変>の時代を迎えた人類を描く構想もあるらしいので
いつの日か、さらなる "続編" が読めるのかも知れない。

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