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「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」第三章 感想・・・のようなもの その8 [アニメーション]


第9話 ズォーダー、悪魔の選択  (3/5)

※ネタバレ全開です。未見の方はご注意ください!

■悪魔の選択

遺跡内での古代vs大帝の対決は続く。

「見せてやろう.お前の愛が何を救い何を殺すのか。
 地球の避難民を乗せたガミラスの船。
 そのすべてに屍よりつくりし蘇生体を潜り込ませた」

ここでの雪もまた大帝に見せられたビジョンなのか。
蘇生体がリアルタイムで見ているものを中継していたりするのか。

「この身体も蘇生体。
 ガトランティスの兵士と同様、自らを焔に替えることができる」

レドラウズ教授もまた蘇生体になっていることを告げ、
そして決定的なひと言が。

「一隻だけ助けてやる。その一隻をお前が選べ。
 お前が選ばねば三隻とも機関を失い、
 惑星の崩壊と運命をともにすることになる。
 お前に信じる愛にしたがって、選べ!」

爆散する教授の身体。間一髪、斉藤が助けに入る。
彼に答える間も惜しみ、100式で飛び立つ古代。
何があったのか無線で問う斉藤に告げる。

「一隻、一隻しか救えない。
 俺が選ぶ。それが奴らのルールなんだ!」

このときの古代は、大帝からの "精神攻撃" で
もう冷静な判断ができるような状態ではなくなっていたのだろう。
"選ぶ" というその一点にのみ思考が向けられてしまっている。

■「トロッコ問題」 ズォーダーver.

以下はwikiから引いてきた文章にちょっと手を加えている。

「トロッコ問題」というのは、
「ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるか?」
という倫理学の思考実験のこと。

いろいろなパターンがあるらしいのだが、典型的なのはこういうものだ。

「線路を走っていたトロッコの制御が不能になった。
 このままでは前方で作業中だった5人が
 猛スピードのトロッコに避ける間もなく轢き殺されてしまう。

 この時、たまたまA氏は線路の分岐器のすぐ側にいた。
 A氏がトロッコの進路を切り替えれば5人は確実に助かる。
 しかしその別路線でもB氏が1人で作業しており、
 5人の代わりにB氏がトロッコに轢かれて確実に死ぬ。

 A氏はトロッコを別路線に引き込むべきか?」

つまり、単純化すれば
「5人を助ける為に他の1人を殺してもよいか」
という問題である。

「1人を犠牲にして5人を助けるべき」という考えもあるだろうし
「誰かを他の目的のために利用すべきではなく、何もするべきではない」
という答えもありうるだろう。

大帝が古代に突きつけた "選択" について、
初見の時は、ただただその重さに戸惑うばかりだったが
時間が経つにつれて、この「トロッコ問題」が頭に浮かんできた。

「トロッコ問題」は、あくまで "思考実験" であり、
倫理学の "演習問題" であるから
"正解" というものはないのだという。

どちらを選んでも誰かは必ず死ぬし、誰かは助かる。
しかしその選択をする人間は、どちらを選んでも悔いが残る。

そして、ズォーダーからこの "選択" を突きつけられた古代もまた
どう選んでも救われない。
"正解" というものはないのだから。

人である限り、どの1隻を選んでも悔いが残る。
ましてや、雪の乗った1隻を選んだら、悔いと罪悪感で
「古代進」という人間は完全につぶれてしまうだろう。

■古代と雪

ヤマトに中継してもらい、避難民に語りかける古代。

「ここから先、何があろうと森一尉が地球へご一緒します」

この時点で既に古代は "選択" を終えている。
結果として、自分のエゴを優先してしまった選択だ。

そしてせつせつと雪へ語りかける。

危険な航海へ巻き込んで君を失うことが恐かったこと。
君と一緒にいると幸せで、他のことなんかどうでもよくなって
当たり前のことが当たり前にできない
今の地球に埋もれてしまいそうで恐かったこと。
だから君から離れようとしたこと。
でも君がヤマトに乗り込んでいて、ただただ嬉しかったこと。

「俺はどうしようもない、弱くて身勝手な人間だ。
 これから起こることは君には何の関係もない。
 生きていて欲しい。
 君を失うなんて耐えられない。
 どんな罪を、背負いきれない罪を背負うことになっても・・・俺は!」

これから行う "選択" についての、言い訳・・・なのだろう。
雪を救う。ただそれだけを願った選択である。
黙っていてもいいはずなのだが、それを言わずにはいられなのも
また古代という男の生真面目さなのだろう。

 ここでの絞り出すような声の小野大輔さん、大熱演だ。

私が第9話でいちばん感動を覚えたのもこのシーンだ。
愚直なまでに一途で、最後までバカ正直に行動する。
そのためなら、自分の中の恥ずべき部分をさらけ出すことも厭わない。

なんだか昭和の時代のスポ根ヒーローみたいじゃないか。
平成のこの世ではまずお目にかかれない、
いや半世紀を超える自分の人生を振り返っても
こんな不器用な奴に出会うことはなかった。

ほんとにいい奴じゃないか、古代進って男は。
だからこそ雪も惚れたんだろう。

                                                            (つづく)

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