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臨床真実士ユイカの論理 文渡家の一族 [読書・ミステリ]


臨床真実士ユイカの論理 文渡家の一族 (講談社タイガ)

臨床真実士ユイカの論理 文渡家の一族 (講談社タイガ)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/04/19
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

表紙にも描かれている妙齢の美女が本書のヒロイン・本多唯花(ユイカ)。

 ちなみにタイトルの「臨床真実士」には
 「ヴェリティエ」ってルビがふってあるんだけど
 意味がわかりません。フランス語?

パリ第5大学で修士の学位を取り、現在は
井の頭大学文学部臨床心理学の博士課程の院生である。
それには理由があって、
彼女は言葉の真偽虚実を瞬時に判定できてしまうという
特殊能力(作中ではそれを一種の "精神障害" と見なしているようだが)
を持つのだ。

そして未だ20歳(!)の彼女は、
法学部においては学部の3年生という身分でもある。
本書の語り手は、その法学部の同級生・鈴木晴彦くんが務める。


そんな彼女のもとへある依頼が持ち込まれる。
依頼主は同じ井の頭大学に通う学生・文渡英佐(あやわたり・えいすけ)。
愛媛県を地盤とする大財閥・文渡家の
次期総帥の座を約束された青年だ。

文渡家は15年前、使用していたプライベートジェット機の
着陸失敗事故により、乗り合わせた12名のうち5名を喪うという
悲劇に見舞われていた。

以来、一族は四国の山中、外界から完璧に隔離された
"天空の村" とも言うべき地に全員で引き籠もって
生活するようになっていた。
しかしその地で、英佐の弟・慶佐(けいすけ)が殺されるという
事態が勃発した。
もとより閉鎖環境の中、犯人はその "村" の中にいるはずだ。

英佐の祖母にして文渡財閥の総帥・紗江子の意思により、
警察権力を介入させないことが決定された。

英佐は祖母の意向を受け、ユイカに対して
現地へ赴き、"村" の中にいて
"嘘" をついている者が誰なのか
鑑定することを依頼してきたのだ。
しかしそれはとりもなおさず、
慶佐殺害の犯人を特定することでもあった。

ユイカは晴彦君をお供に、その "天空の村" を訪れるが
彼女らが到着した早々、第二の殺人事件が発生する・・・


まず開巻当初は、ユイカ嬢の特殊技能の披露と、
それに振り回される凡人・晴彦君の慌てぶりが
ユーモアたっぷりに描かれる。
もっとも彼は全編にわたって振り回されっぱなしなのだが、
それもまたお約束だね。

特殊技能の描写については、論理のお遊びという感じもするのだが、
この作者の開陳する "理屈" は相変わらず超難解で
だんだんついて行けなくなってしまう(^^;)。

 「言葉の意味はよく分からんが、とにかく凄い自信だー!」
 ってどこかの漫画のフレーズが頭に浮かんでしまう。
 屁の突っ張りはいらんですよ!(笑)

まあそれでもミステリとして読む分には問題ないんだが
でも、これ完璧に分かる人いるのかなぁって毎回思ってしまう。

ページの1/4ほどを消化した時点でユイカ嬢は現地へ入るのだが
立て続けにイベントが次々に起こって休む間もない。

典型的なクローズドサークルものなのだけれど
本書には犯人当てだけはない、もう一つ大きな仕掛けがある。

ネタバレになるので詳しく書けないのが辛いが、いやあこれはスゴい。

本書は文庫で300ページちょっとなのだけど、
この大ネタをじっくり書きこめば、
この倍の長さにだって仕立てられるんじゃないかなあ。
そういう意味では、出し惜しみ無しで
"本格ミステリ" の醍醐味が味わえる作品になってると思う。

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