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トワイライト博物館(ミュージアム) [読書・ミステリ]

トワイライト博物館 (講談社文庫)

トワイライト博物館 (講談社文庫)

  • 作者: 初野 晴
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/12/13
  • メディア: 文庫



評価:★★★

養護施設で暮らしていた天涯孤独な少年、勇介。
14歳になったばかりのある日、彼の運命は激変する。
大伯父が現れ、彼の元に引き取られることになったのだ。
しかし喜びもつかの間、その3日後に大伯父は事故死してしまう。

勇介に残された遺産は、地上三階、地下二階の建物を改造した
「暁埜(あかつきの)博物館」。そこは学芸課長の牧村や、
謎めいた青い瞳をもつ女性・枇杷(びわ)をはじめ
一風変わった学芸員6人が集う不思議な場所だった。

そんなある日、養護施設で勇介を慕っていた6歳の少女・ナナが
交通事故に遭い、脳死状態に陥ってしまう。

絶望する勇介に向かい、牧村は意外な事実を告げる。
ナナの "意識" は遥か時空を超え、中世のイギリスへ跳んでいると。

そして勇介は、枇杷とともに、
"ナナを連れ戻す" ために、時を超える旅に出る・・・


タイムトラベルSFとも読めるんだけど、
制限時間つきのタイムリミット・サスペンスでもあり、
歴史小説の要素もあり、少年の成長を描く冒険物語でもある。
でも一番大きな要素はミステリだろう。

ナナが跳ばされたのは、魔女狩りの嵐が吹き荒れた時代。
彼女を救うために、勇介と枇杷は "三つの謎" に挑むことになる。

 この "謎" はこの時代ならではのもので、私が愚考するに
 この "謎" を描きたくて舞台をこの時代に設定し、
 それを解くためには現代の人間が必要となり、
 そこからこのストーリーを紡ぎ出したのかも知れない。

そうは言っても、勇介と枇杷のミッションは過酷だ。
読んでる私の方が挫けそうになるくらい絶望感があふれてる。
ほとんど「無理ゲー」じゃないか・・・なんて思ってしまう。

でも勇介と枇杷さんは挫けない。
まあそれでこそ主人公なんだけど。


ストーリーは本書で完結しているけれど、できれば続編が読みたいな。
本文中で言及されている、枇杷のお姉さんのことも描いてほしいし、
何と言っても、ひと回り大きく成長した勇介くんにもまた逢ってみたい。


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「ヤマト2199」新作映画 チラシ入手 [アニメーション]

今日、我が家からさほど遠くない某ショッピングモールへ出かけた。
かみさんの買い物やら用事やらにお付き合い。
しかし女性の買い物というのはどうしてあんなに長いんだろう。

かみさんが衣料売り場で品定めしている間、
手持ち無沙汰なので併設してあるシネコンへ行ってみる。
実は、ここは我が家から一番近い「星巡る方舟」の上映館だったりする。
そしたら、やっぱりありましたよ、チラシ。

表面には「追憶の航海」と「星巡る方舟」の文字が。

20140915a.jpg
裏面にはそれぞれ細かな情報が。

20140915b.jpg
内容は公式サイト等で既報のものばかりだけどね。

でもまあ、嬉しくなって一枚もらってシネコンを出る。
ヤマトの新作映画が全国ロードショーなんて、
3年くらい前までは想像もできなかったよ。
その映画のチラシが映画館で見られるなんて、もうね・・・
ああ、長生きはするもんだねぇ・・・。

ちょっぴり心をうきうきさせて、
買い物を終えて落ち合ったかみさんに見せる。
「みてみて、ヤマトの映画のチラシ!」
「え~? なんでここにあるの?」
「12月の新作映画の方はここのシネコンで上映するんだよ」
「へぇ~、そうだったの」
「そうなんだよ!」
「ふーん、ところでそのチラシ、一枚しかないの?」
「ん? そうだよ」
「アタシの分は無いの?」
「え・・・」


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いとみち [読書・青春小説]

自慢じゃないが "メイド喫茶" って入ったことがない。
(ホントに自慢にならないね。)
半世紀以上生きてるオジサンには敷居が高そうで。

実は8月のお盆の頃に秋葉原に立ち寄った。
買い物に行ったんじゃなくて、昼飯を食べるためだったんだけど。
道ばたに可愛いフリフリのユニフォーム着たお姉さんが立って
なにやら黄色い声で宣伝してるんで、
「ああ、メイド喫茶ってまだあるんだなぁ」とは思ってたが。
セーラー服のお姉さんもいたけど、
年齢的にかなり苦しそうな方もいてちょっと "痛い" ことも。
あ、入ったのはケンタッキー。チキンが食べたかったもんだから。
フィレサンドのセットを食べて帰ってきました。
なぜか店内には外国の方が多かったなあ・・・

閑話休題。


読んだのは文庫版だったんだけど、単行本の表紙も貼っておく。
文庫の表紙も味があるけど、
やっぱ単行本のイラストのほうが可愛いんだもん(爆)。


いとみち (新潮文庫)

いとみち (新潮文庫)

  • 作者: 越谷 オサム
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/10/28
  • メディア: 文庫




いとみち

いとみち

  • 作者: 越谷 オサム
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/08
  • メディア: 単行本



評価:★★★☆

ヒロインの相馬いとは青森県在住の16歳。
弘前市内の高校へ入学したのを機に、極端な人見知りを直そうと
思い切って<津軽メイド珈琲店>でアルバイトを始める。
ちなみにこの店は "本州最北端のメイドカフェ" らしい。

しかしいとちゃんの前途は多難だ。
背は低いし、スタイルだってお世辞にも "抜群" とは言えないし、
それに加えて、やることなすこと失敗ばかりのドジっ娘体質のようだ。
何よりも、濃厚な津軽訛りのせいでお約束のご挨拶が言えない。

「おかえりなさいませ、ご主人様」のはずが
「おがえりなさいませ、ごスずん様」になってしまうのだから・・・

真面目な店長、シングルマザーの先輩メイド・幸子さん、
もう一人の先輩・智美さんは漫画家志望。
いとちゃんに、何かと目をかけてくれるオーナー。

そんな周囲の人々に鍛えられ、あるいは支えられ、
成長していくいとちゃんの姿が描かれていく。


いとの母・沙織は11年前に他界していた。
そのため、いとちゃんは父・耕一と祖母・ハツヱに育てられた。

このハツヱさんが超濃厚な津軽訛りの持ち主で、
つまりいとちゃんの訛りはハツヱさんが原因。
(あんまり発音が独特すぎてひらがな表記が出来ない。
 じゃあどんな風に表記されているか?は読んでのお楽しみ。)
津軽三味線の名手でもあり、じょんがら節はもちろん、
ヴァン・ヘイレンまで弾きこなしてしまうという
ロックンロールなグランドマザーだったりする。
本書中、ある意味もっとも強烈なキャラだ。

いとちゃんもまた津軽三味線の技量を祖母から受け継いでいる。
中学2年のときには名の通ったコンクールで
審査員特別賞を受賞したほどの腕前だったが、ささいなことから
いとちゃんは三味線から遠ざかってしまっていた。

そして、いとちゃんが高校生活最初の夏休みを迎え、
バイトにもちょっとずつ慣れてきて、
常連のお客さんとも顔なじみになってきたある日。
お店の存亡に関わる大事件が勃発する・・・


なにより、ヒロインのいとちゃんが可愛い。これに尽きる。
何事にもひたむきで一所懸命でとことん頑張る。
背は小っちゃいけど美人、ドジっ娘だけど楽器の名手。
物語の終盤近くで智美さんが言うとおり "萌え要素満載" だ。

ラスト近くで明かされる両親の馴れそめ話も素敵だし、
<津軽メイド珈琲店>にすべての関係者が集まるクライマックスでは
いとちゃんの奮戦ぶりに、感動で目がうるうるしてしまった。
ホント最近涙もろくて困る。
でもオジサンはこういうのに弱いんだよなあ。


本書は三部作のうちの一作目だとのこと。
三作でいとちゃんの高校三年間を描くらしい。
二作目以降はまだ文庫化されていないけど、楽しみに待ちたい。


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はやく名探偵になりたい [読書・ミステリ]

はやく名探偵になりたい (光文社文庫)

はやく名探偵になりたい (光文社文庫)

  • 作者: 東川 篤哉
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2014/01/09
  • メディア: 文庫



評価:★★★

人気ユーモア・ミステリの「烏賊川市シリーズ」、初の短編集。
私立探偵・鵜飼杜夫とその助手・戸村流平が活躍するんだが
今回は、朱美さんと砂川警部の出番はナシ。ちょっと残念。

「藤枝邸の完全なる密室」
 藤枝修作は、遺産目当てで資産家の叔父・喜一郎を殺害するが、
 現場を密室にする工作を行った直後、鵜飼が屋敷にやってくる。
 修作と鵜飼の頓珍漢な会話が笑える。でもラストの一行はなあ。
 仮にも探偵たるもの、あんなことを言ってはいけないよなあ。
 まあそれでこそ鵜飼なのだろうけど。

「時速四十キロの密室」
 資産家・小山田幸助の妻・恭子の浮気現場を押さえた流平。
 浮気相手の男は軽トラックの荷台に隠れて逃げ出した。
 バイクで追跡した流平だが、10分ほど走って赤信号で停車したとき、
 男はトラックの荷台で、のどをかき切られて殺されていた。
 うーん、ものすごくあり得ないような真相なんだけど
 それが笑って許せてしまうのがこのシリーズの良さ?

「七つのビールケースの問題」
 ペット探しの依頼人・田川のもとを訪れた鵜飼と流平。
 その帰りに近所の丸吉酒店の娘・沙耶香から、
 昨日の夜にビールケースが7つ、盗まれたことを聞く。
 披露されるトリックがまた、大胆かつバカバカしいのも
 このシリーズならでは。
 ○○○の○○○が実在するのかどうかなんてことも、
 だんだんどうでもよくなってくる。それも作者の筆力か。
 ちなみに表紙の絵はこの作品内のワンシーン。

「雀の森の異常な夜」
 老舗の和菓子店「雀屋」の孫娘・絵里に呼び出された流平。
 深夜の道をそぞろ歩く二人が目撃したのは、
 車椅子に乗った絵里の祖父・庄三と、それを押す謎の男。
 そしてその夜から庄三は行方不明となる。
 ミステリ的には、本書中いちばんの作品のような気もするのだが
 相変わらずトボけた雰囲気で笑わせる。

「宝石泥棒と母の悲しみ」
 鵜飼の高校時代の恩師、花見小路一馬の屋敷でルビーが盗まれる。
 折しもその夜は雪で、屋敷の内外に出入りした足跡はない。
 一馬に依頼された鵜飼が捜査に乗り出すが・・・
 なぜか本作品は、花見小路家のペット "マー君" の一人称で語られる。
 終盤まで読むとその理由が分かるのだが、そこで終わらず
 さらにもうひと捻り。うーん、良くできてる。


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「蒼穹のファフナー EXODUS」 Webラジオ 第3回 [アニメーション]

実はこの記事は8月下旬には書き上がってたんだけど
なんとなくupするタイミングを逸してしまい、放置してあった。

もう載せなくてもいいかな~って思ったんだけど
ここんとこ読書録の記事が続いたことだし
ちょっと目先を変えるのもいいかな・・・
というのは表向きの理由付けで、
実は昨日で読書録の記事の在庫が尽きてしまったのだ。

まあでも、今までの第1回も第2回も載せたので
これだけ載せないのも変だしね。そう思ってupした。他意はない。

(記事はここから)


さて、8/23(土)に行われた公開生放送第3回。
生放送中は、なんと居間で爆睡してた。
夕食でうどんを腹一杯食ってしまったのが原因。
最近、満腹になるまで食うと眠くなってしまうんだよねえ。

というわけで前回と同じくタイムシフト予約で
翌日(24日)の朝になっての視聴。

今回の出演は、一騎役の石井真さん、総士役の喜安浩平さん、
真矢役の松本まりかさん、剣司役の白石稔さん。

何と焼き肉屋での収録とのことで、
肉食べ放題・酒飲み放題という、
とんでもなく羨ましい場所で語り合ってる。

まあ、内容はいつも通りgdgdなんだけど、
まあ皆さん仲が良さそうで何より。
04年から数えて、10年経っても新作が作られてる『ファフナー』って、
演じてる声優さんたちにとっても思い出深いものになってるんだね。


さて、今回も新キャストの配役の発表があった。

キース・ウォーター
 名前から類推すると、人類軍かな。服からでは判別できない。
 演じるのは宇乃音亜季(うのね・あき)さん。
 寡聞にしてこの人のことは知らないので早速wikiで検索。
 アニメよりは洋画のお仕事が多そうな人ですね。
 所属事務所のサイトにボイスサンプルがあったので聞いてみた。
 落ち着いた大人の女性って感じで、私は気に入りました。

ウォルター・バーゲスト
 この人も人類軍らしい。演じるのは置鮎龍太郎さん。
 「ガンダムW」とか「SEED」でたくさん聞いた声ですねえ。
 声優歴も20年以上で大ベテラン。

ダスティン・モーガン
 この人もたぶん人類軍だね。演じるのは中村悠一さん。
 人気イケメン声優さんですね。私にとっては
 「ガンダムOO」のグラハム、というかMr.ブシドー。

前回も思ったが「EXODUS」はホント脇役が豪華。
普通なら主役が務まる人を何人も投入してきてる。
ギャラの方は大丈夫なのか心配になってしまうね。


ファンからのメールも何通か紹介してたけど
その中に甲洋について書かれたものがあった。
「HEAVEN AHD EARTH」でのMk.IVの再登場シーンで
涙腺が崩壊してしまった人、多かったんだね。私もその一人だ。
「EXODUS」にも登場して欲しい、とのこと。そして、ぜひ台詞も。
私も "激しく同意" だね。

wikiで見てみたら、入野自由さんは
「蒼穹のファフナー」('04)のときはなんと16歳だったんだねえ。
まりか様が19歳だったのは知ってたけど、
さらに年下の方がいたんだねぇ。


後半は皆さんアルコールが回ってしまっていて
さらに訳が分からなくなってきたけど
(まりかさん、かなりの酒豪みたいだね。)
まあ楽しそうでよかった。

次回は9月21日とのことで、一騎の誕生日だそうな。
カノン役の小林沙苗さんや咲良役の新井里美さんも出て欲しいけど、
私がぜひ一度は出演していただきたいと思ってるのは
史彦役の田中正彦さんと千鶴役の篠原恵美さんの
熟年カップルなんだが、無理かなあ・・・

(これ以下は9/10に追記分)

って書いたけど、実は公式サイトにはもう載ってる。

出演者:
 石井真(真壁一騎役)、松本まりか(遠見真矢役)、
 白石稔(近藤剣司役)、田中正彦(真壁史彦役)、
 新井里美(要咲良役)、森田成一(役名は当日発表)

私の願望が伝わったわけではないだろうが
田中正彦さんと新井里美さんの登場だ。これは嬉しい。

森田成一さんも参加するんですね~。
「TIGER & BUNNY」の主役二人のうちの若い方だね。
「EXODUS」ってホント脇役が凄い。


あとは篠原恵美さんが出てくれればカンペキだね。
千鶴さんって女性キャラで一番好きなんだ。これって "熟女萌え" ?


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ブラザー・サン シスター・ムーン [読書・青春小説]

ブラザー・サン シスター・ムーン (河出文庫)

ブラザー・サン シスター・ムーン (河出文庫)

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2012/05/08
  • メディア: 文庫



評価:★★☆

ミステリでもSFでもホラーでもファンタジーでもない。
3人の男女の、学生時代の出来事を点描した青春小説。

楡崎綾音(にれざき・あやね)、戸崎衛(まもる)、箱崎一(はじめ)の
"ザキザキトリオ" は、同じ高校から同じ大学へ進学する。

第一部「あいつと私」
 おりしも世間は「女子大生ブーム」だった頃。
 華やかに、そして "綺麗" になっていく女学生たちの中で、
 相変わらず垢抜けない綾音だったが、
 バイト先の飲み屋の客の何気ない一言で、
 自分の中に "ある願望" が潜んでいたことを自覚する。
 それはあとあと彼女の人生を大きく変えることになる。

第二部「青い花」
 モダンジャズのサークルに入り、練習に明け暮れる戸崎。
 同級生や先輩たちのテクニックやセンスに驚嘆するも、
 なんとか追いつくべく努力を重ねていく。
 めざすはサークルのトップに位置するレギュラー・バンド。
 綾音とは、お互いのアパートを行き来する仲なのに
 友人以上にはなぜか踏み出せず、時間だけが過ぎていく・・・

第三部「陽の当たる場所」
 大学を卒業し、金融機関に勤めながら自主映画を製作していた箱崎。
 毎年応募していた映画コンクールに入賞したことを機に、
 仕事を辞め、映画監督としての一歩を踏み出す。
 取材に来たライターの質問を受けながら、大学時代のことを回想する。
 映画サークルに所属し、部員たちの映画作りを手伝った日々。
 名画座でたくさんの映画を見たこと。
 その中の一本、「ブラザー・サン シスター・ムーン」を
 綾音・戸崎と一緒に三人で観た日のこと・・・

ボーナス短編の「糾える縄のごとく」は
 "ザキザキトリオ" が初めて顔を合わせた高校時代のエピソード。


本書は作者の自伝的作品との触れ込みなので
3人が入学した大学をはじめ、作品中の登場人物や出来事には
多かれ少なかれモデルがあるみたいだ。
てことは、作中の大学はたぶん早稲田、ということになるだろう。

大事件が起こるわけでもないし、ドラマチックな展開があるわけでもない。
学生時代のいくつかのシーンを切り取っただけなんだけど
読んでいると自分も学生時代に戻ってしまう。

そして、ちょっと(自分の心が) "痛い" って感じるところも。

私自身は、大学時代にあまりいい思い出がない。
学内の雰囲気だって、華やかな(と私には感じられる)早稲田とは違って、
田舎にあった地味~な大学だったしね。

とにかく、勉強するにしろ遊ぶにしろ、私は中途半端だった。
戸崎や箱崎みたいに、サークルに打ち込んだこともなく
綾音のように、一生を決めるような言葉に出会うこともなく。

もっと徹底的に勉強以外のことに熱中していれば、
それなりに充実した思い出が残ったろうし、
もっと徹底的に勉強していれば、たぶん修士までは進んでただろう。

どちらに転んでも、今の職業には就いていなかっただろうなぁ。

でもそうしたら、今のかみさんとも出会うことはなかっただろうし、
それどころかずっと独り身だったかも知れないなぁ・・・
まあ、手に入らなかったものを数えるのは建設的ではないし、
今の人生がことさら不幸だとか失敗だとは思っていないので
これでいいんだろうなぁ・・・

・・・なーんてことを考えてしまいました。


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NOVA10 書き下ろし日本SFコレクション [読書・SF]

NOVA 10 ---書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫)

NOVA 10 ---書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫)

  • 作者: 菅 浩江
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2013/07/05
  • メディア: 文庫



評価:★★☆

書き下ろしの短編SFアンソロジー、最終巻である。
シリーズ最多の12編収録。
ついでにページ数も最多のおよそ630ページ。

毎回書いてるけど、作家/作品ごとに、
相性の合う/合わないはやっぱりある。

「妄想少女」(菅浩江)
 奈緒花は55歳だけど、通っているスポーツクラブの
 トレーニングプログラムの中では18歳。
 わたしもこのように気持ちだけでも若くありたい。
 本書で面白かった第2位。

「メルボルンの思い出」(柴崎友香)
 SFというよりはホラーっぽい不条理小説のような作品。

「味噌樽の中のカブト虫」(北野勇作)
 頭の中でカブト虫が孵化し、
 それが脳味噌をだんだん食べていってしまうという話。
 よく考えたら怖い話なんだが、
 こういうのをブラックユーモアって言うのかな?

「ライフ・オブザリビングデッド」(片瀬二郎)
 ゾンビになっても会社への出勤を忘れない。
 そんなゾンビが数百万人、毎朝通勤ラッシュにもまれている。
 想像してみるとものすごいシュールな光景だなあ。

「地獄八景」(山野浩一)
 山野浩一って30年くらい前から名前だけは知ってたけど
 読んだのは初めて。
 ものすごい変わった話を書くんじゃないかって思ってたけど
 案外、普通に読める作品だったね。

「大正航時機奇譚」(山本弘)
 アインシュタインが日本を訪れた大正時代、
 タイムマシンをでっち上げて金を巻き上げる詐欺師親娘の話。
 これ、ラストの一行が書きたかったんだろなあ。
 本書で面白かった第3位。

「かみ☆ふぁみ!
 ~彼女の家族が「お前なんぞに娘はやらん」と頑なな件~」(伴名練)
 世界を思い通りに出来る "神様" の力を授かった少女・亜衣と、
 そんな彼女に恋をした "俺" との、
 時空を "駆けそうな" (笑) 純愛物語。
 ドタバタなラブコメなんだけど、
 終盤は怒濤の展開でラストはちょっとしんみり。
 本書で面白かった第1位。

「百合君と百合ちゃん」(森奈津子)
 作者の森さんがこういう世界が大好きなんだというのは分かった。
 則雄君の気持ちがちょっぴり理解できる自分が怖い。

「トーキョーを食べて育った」(倉田タカシ)
 前半は正直言って何が何だかよく分からなかった。
 後半になってやっと何がどうなっているのかが分かってきた。
 分かったけど、どうしても面白いとは思えなかったです。

「ぼくとわらう」(木本雅彦)
 遺伝子治療や薬物治療が進んで、ダウン症でも
 ほとんど健常者と同じ生活が出来るようになった未来。
 主人公はダウン症の青年で、余命が残り少ないという予感に囚われている。
 自伝を書くことになった彼は、今までの人生で関わった人に会う。
 学生時代の恋人、中学校時代の同級生、保育士・・・
 月並みな感想だが、本当にこんな時代が来ればいいと思った。
 本書で面白かった第3位(「大正-」と同点で)。

「(atlas)^3」(円城塔)
 作者が感じる「面白い」と、私が感じる「面白い」は、

 方向がかなり違うようです。
 

「ミシェル」(瀬名秀明)
 小松左京の長編「虚無回廊」の登場人物、
 天才言語学者ミシェルを主役にした "スピンオフ" (?) 作品。
 文庫で150ページもあって、もはや短編のボリュームではない。
 「虚無回廊」自体、私は未読なので
 ミシェルというキャラ自体になじみがない。
 本書だけ読むと、「なんだかめんどくさいキャラ」だなあ・・・
 凄い作品だとは思うんだけど、
 面白いかと聞かれたら正直なところ微妙。


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まっすぐ進め [読書・ミステリ]

まっすぐ進め (河出文庫)

まっすぐ進め (河出文庫)

  • 作者: 石持 浅海
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2014/05/08
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

5つの連作短編からなる "日常の謎" 系恋愛ミステリ。

タイトルの「まっすぐ進め」とは、
本作の主人公であり、"探偵役" でもある川端直幸が、
自分の名前の由来を他人に説明するときの言葉。
「幸せに向かってまっすぐ進め」と。

「ふたつの時計」
 直幸が新宿の大型書店で見かけた女性・高野秋。
 秋の美しさに惹かれた直幸だったが、
 彼女が左手に腕時計を二つはめていることに気づく。
 友人の黒岩正一と、その恋人・太田千草のはからいで
 秋に再会した直幸は、二つの時計の意味に思いを巡らす。

「ワイン合戦」
 時計の件がきっかけで秋と親しくなった直幸。
 正一と千草を交え、4人で居酒屋へ繰り出すが、
 同じ店内で呑んでいたカップルの不可解な行動を目にする。
 二人でワインを1本ずつ注文し、
 それぞれのボトルから自分のグラスについで呑む。
 さながら二人でワインを飲む勝負をしているような・・・
 直幸が解き明かした "真相" は意表を突くものだけど
 言われてみればそうかなあ、って納得できる。
 "日常の謎" ミステリとしては、本書中でいちばんの作品だと思う。

「いるべき場所」
 郊外のショッピングモールへ来た直幸と秋。
 そこで二人は、ひとりぼっちの幼児・みさきと出会う。
 両親が探している気配もなく、不審に思う二人だったが
 やがて、みさきを執拗につけ回している者がいることに気づく・・・
 みさきがしょっていたリュックサックには、
 実に意外な "もの" が入っており、
 そこから直幸が導き出した "真相" はかなり深刻だ。
 ミステリとしては、「ワイン合戦」と並んで本書の双璧だと思うが
 こればかりは直幸の推理が間違っていることを願ってしまう。

「晴れた日の傘」
 千草の母親の元へ、結婚の許しを求めに行った正一。
 彼女が中学生の時に病死した父親は、
 「千草の結婚相手に渡すように」と一本の "傘" を妻へ託していた。
 その "傘" を受け取ったものの、父親の真意がつかめない正一。
 直幸が辿り着いた結論は、ミステリのオチとしてはともかく、
 読者へ与える感動は抜群だ。
 凡百の言葉より、○○○○○のほうが遥かにものを言う。
 娘が花嫁になる姿を見ることなく逝ってしまった父親の
 深い愛情が泣かせる一編。
 私も涙腺大崩壊。ほんと最近、涙もろくなって困る。

「まっすぐ進め」
 直幸と知り合ってから初めて迎えた、秋の誕生日。
 二人は秋の故郷である仙台へ向かう。
 そこで、彼女の口から語られたのは、
 "ふたつの時計" に秘められた衝撃的な事実と、
 深い "心の闇" に苦しんできた日々だった。
 ラストで直幸が秋に示してみせる "真相" は、
 そんな秋の "闇" に一筋の光を投げかけようとする。
 でもそんなことよりも、彼女の "闇" をともに分かち合い、
 支えてくれる存在に、直幸がなってくれたことが
 秋にとっては何よりの救いになったのだろう
 静かだけど深い余韻を残す、素晴らしいラブ・ストーリーだ。


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レッドスーツ [読書・SF]

レッドスーツ (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

レッドスーツ (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

  • 作者: ジョン スコルジー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/02/07
  • メディア: 新書



評価:★★★★

時は25世紀半ば。
銀河連邦の新任士官・ダール少尉は、4人の新人仲間と一緒に
宇宙艦隊旗艦・イントレビット号に配属される。

未知なる大宇宙を旅するイントレビット号は様々な冒険に遭遇する。
しかし、やがてダール少尉たちはおかしなことに気づく。

遠征チームを組んで未知の惑星に降り立ったクルーたちから
毎回のように死者が出ることに。
そして、それを指揮する艦長や主任科学士官たちは
必ず生還することに。

航宙士が未知の宇宙ウイルスに罹患し、
全身の筋肉が溶け落ちるような瀕死の状態になっても大丈夫。
艦の宇宙生物学研究室には、謎の "ボックス" がある。

 21世紀の家庭なら、たいていの家に有り、
 中に食べ物を入れてボタンを押し、"チン" と鳴ったらできあがり、
 って "あれ" にそっくりな。

謎の宇宙ウイルスをその中に入れ、ボタンを押して、
"チン" と鳴ったらワクチンが完成してしまう。
そのおかげで、全身の筋肉が溶け落ちた航宙士も
一週間後には(!)すっかり回復し(!?)、ピンピンして任務に復帰する。

でも、誰もその "ボックス" の存在理由も作動原理も説明できない。

いったいこの艦では、何が起こっているのか?


解説によると、タイトルの「レッドスーツ」(原題:REDSHIRTS)とは、
アメリカのスラングで
『フィクションにおいて、登場してすぐ死んでしまう無個性な脇役』
という意味だという。
始まりは1966~69年のTVドラマ版「スター・トレック」において、
事件が起こるたびに、赤い制服を着た保安部員が
コロコロ死んでいったことから来ているらしい。


まさに「レッドスーツ」のように次々と死んでいく下級乗組員たち、
そしてどんな危機に巻き込まれても、決して死なない上級士官たち。

自分たちが "生き残るため" に、艦の秘密を探り始めるダールたちだが、
そんな彼らの前に現れた男・ジュンキンズは、
驚くべき "仮説" を告げるのだった・・・


序盤はユーモアとジョークが満載で、
本家の「スター・トレック」をおちょくったパロディにもなってて、
かなり笑えるコメディである。
ジェンキンズが登場してからは、お笑いコメディ路線は守りつつ、
物語は予想外の方向へ暴走を始める。


ダールたちの物語は、本編できっちりとけりがつくんだけど、
特筆すべきは終章。
この作品、新書で330ページあるんだけど、
なんとラスト80ページが終章。全体の1/4がエピローグ。

しかも終章自体も3つのパートに別れている。
どこか力の入れ方を間違っているような気もしたんだが
読み終えてみて分かる。
本書のキモは、実は終章にあったのかも知れない。

本編はドタバタコメディなんだけど、この終章はいたってシリアス。
パート1はともかく、パート2はけっこう胸にしみる。

そして大トリの終章パート3。およそ20ページしかないんだけど、
ああ・・・ダメだ・・・わたしはこの手の話に弱いんだよぉ・・・

ここで私の涙腺が大崩壊。もう涙で文字が追えなくなってしまった。

そしてこの感動は、本書がSFだからこそ、もたらされたもの。
「いやあ、SFってホントにいいものですねぇ」(by 水野晴郎)。


笑いあり涙あり冒険あり。アメリカで
ヒューゴー賞(SF大会参加者の人気投票で1位)と
ローカス賞(SF情報誌の読者による選出)の
ダブル受賞というのも納得の出来。

終章までは★3つだったんだけど、
ラスト20ページの感動で★1個増量だ!


ついさっき、ラスト数ページを再読してみたんだが・・・
やっぱり涙が止まらない・・・


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完盗オンサイト [読書・冒険/サスペンス]

完盗オンサイト (講談社文庫)

完盗オンサイト (講談社文庫)

  • 作者: 玖村 まゆみ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/08/09
  • メディア: 文庫



評価:★★★

第57回江戸川乱歩賞受賞作。

前回の記事で書いた「よろずのことに気をつけよ」と
同時受賞だったんだけども、両者には共通点が2つある。

一つはどちらも作者が女性だったこと。
(「乱歩賞史上初の女性ダブル受賞!」って当時は騒がれたらしいけど。
 歴史が長いせいか「乱歩賞初」って言葉がホント好きだよねぇ。)

もう一つは、どちらもいわゆる "普通の" ミステリではないこと。
(ここで言う "普通" ってのは、殺人事件が起こり、容疑者がいて、
 探偵なり警察の捜査があって、最後に犯人が明らかになる、
 っていう流れがあるミステリ、ていう意味。)


前置きが長くなってしまった。内容紹介に入ろう。

世界中の山を巡っていたフリークライマー・水沢浹(とおる)は、
パートナーだったプロクライマー・伊藤葉月との別れを機に、
日本へ帰ってきた。

金がない浹は、野宿しようとした公園で会った僧侶・岩代に導かれ、
彼が住職を務める寺に逗留することになる。
そこで出会った幼い少年・斑鳩(いかる)。
両親の愛情を受けられずに暮らす彼は、心を閉ざしていた。

食い扶持を稼ぐため、建設現場へ働きに出た浹は、
なまった体を鍛えようと工事用エレベーターの支柱をよじ登る。
その様子を見ていたのは、工事の発注主である
國生(こくぶ)地所の社長・國生環(たまき)だった。

環は、ある "仕事" を浹に持ちかけてきた。
『皇居内にある樹齢550年の盆栽「三代将軍」を盗み出してほしい。』
依頼人は環の兄にして國生地所会長の肇。報酬は一億円。

いったんは返事を保留した浹だが、葉月と再会した夜に、
彼女がスポンサーとの契約トラブルで
3000万円の違約金支払いを迫られていることを知る。

葉月のために、仕事を受けることを決意する浹だったが・・・


メインのストーリーラインと平行して、
瀬尾貴弘という男のパートが断片的に挿入される。

この男が斑鳩の父親であることは、かなり早い段階で明かされるが、
瀬尾は、精神の平衡をどんどん失いつつあり、
その行動も次第に常軌を逸していく。
このあたりはもうサイコ・サスペンスである。

彼がメインのストーリーと絡んできたとき、
どんなアクシデントが勃発するか、読む方は戦々恐々。
瀬尾という "時限爆弾" を抱え、ストーリーは進んでいく。


「オンサイト」という言葉は、登山用語で、
自分が一度もトライしたことのないルートを、初見で完登すること。

今回は、誰も潜入したことのない皇居を「オンサイト」し、
みごと「完登」ならぬ「完盗」を目指すわけだ。

でも、こういうタイトルをつけられたら、当然ながら
盆栽奪取を目指す浹の活躍がメイン、と思うよなあ。
遅くとも物語の中盤あたりで潜入し、
後半は皇宮警察との追いつ追われつの大騒ぎ、
なーんて「ルパン三世」みたいな展開を勝手に思い描いていた。

ところが我らが浹くんは、っていうよりストーリーが
なかなか皇居潜入までたどり着かない。

ページ数の残りが気になるくらいまで物語が進行しても、
いっこうに "仕事" が始まらないので、
「やっぱ皇居に盗みに入るなんて不届きな話はまずいのかなぁ」
「出版したらあちこちからいろいろ突かれそうだしなぁ」
「だから結局は皇居への潜入は "無し" よ、なんてことになったりして」
とかいろいろ考えてたんだけど、
大丈夫、ちゃんと浹くんは "仕事" します(笑)。

それも、斑鳩くんの行く末やら、
盆栽奪取を命じた肇の真の目的やら、
葉月の違約金をめぐるゴタゴタやらの、
物語上の "諸々のこと" に対して一気にカタをつけてしまうという、
実に "いい仕事してます" (by 中島誠之助)。


「よろずのことに気をつけよ」の時と同じことを今回も書く。
いわゆる普通のミステリではないけれど、
読み物としてはとても面白い。

なにより「皇居に盆栽を盗みに入る」って発想が素晴らしい。
とんでもなく突飛で、とんでもなくリスキーで。
でも、とんでもなくオモシロそうじゃないか。

新人作家さんらしい、フレッシュな感性のサスペンス小説だ。


最後に余計な一言を。

主人公の「浹」って名前、どうしても馴染めなくて
最後までいっても「浹」って字を素直に「とおる」と読めなかった。
今更ながら自分の頭の固さを痛感した。
でも、やっぱり主人公の名前はもっと読みやすいのがいいなあ。
「徹」でも「透」でも物語上で支障は無いでしょう?
それとも作者は、「浹」って字に深~い思い入れでもあるのかなぁ?


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