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私たちが星座を盗んだ理由 [読書・ミステリ]

私たちが星座を盗んだ理由 (講談社文庫)

私たちが星座を盗んだ理由 (講談社文庫)

  • 作者: 北山 猛邦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/04/15
  • メディア: 文庫



評価:★★★

カバー裏の惹句には
「5つの物語のすべてに驚愕のどんでん返しが待つ」
って書いてあるのだが、
予め「どんでん返しがある」って知ってたら
「どんでん返し」にならないんじゃないか・・・?
なーんてツッコミはしてはいけないんでしょうか。
いけないんでしょうねぇ。

というわけで5編収録のミステリ短編集である。

「恋煩い」
 駅の反対側のホームに佇む、3年生の男子。
 同じ高校ながら彼の名前もわからない。
 しかし2年生のアキは、毎日駅で見かける彼に恋をしていた。
 折しも校内には「片思いの相手と両思いになれる」
 という "おなじない" が流行っていた。
 アキも早速その方法を試したところ、
 偶然にもその3年生が落とした学生証を拾ってしまう。
 "御利益" に有頂天になるアキだったが・・・
 ラブコメのようなホラーのような展開で、
 ラストはしっかりミステリになる。

「妖精の学校」
 少年が意識を取り戻したとき、彼は絶海の孤島にいた。
 直径4.5kmのほぼ円形の島は中央で仕切られ、
 少年たちと大人たちが別々に暮らしていた。
 島の中には2カ所、巨大な穴が空いている場所があり
 そこは "虚" (うろ)と呼ばれていた。
 "虚" が島の外部に通じていると信じる一人の少年が
 大人たちの監視をかいくぐって脱走を試みるのだが・・・
 最後まで読んでもよく分からなかった作品。
 ラスト1行の意味だけは分かったんだけど、
 それだけではこの物語の説明にはならないよなぁ・・・
 70年代のSFっぽい雰囲気もちょっぴり。
 

「嘘つき紳士」
 借金に追われて生活に窮していた "俺" は、
 交通事故で命を落とした青年・白井勇樹の携帯電話を拾う。
 そのケータイが、勇樹の恋人・キョーコからのメールを受信する。
 数百キロも彼方の田舎町に住み、勇樹の死を知らないキョーコ。
 "俺" は、なんとかキョーコから金を巻き上げようと思い、
 勇樹を装って彼女とメールの交換を始めるのだが・・・。
 悪人になりきれない "俺" の心の変化が哀しいなぁ~
 って読んでたら、ラストですくい投げを食らってしまいました。

「終の童話」
 これ1作だけ、ファンタジーになってる。もちろんミステリでもある。
 10歳の少年・ウィミィが住む東の国の村に、
 人間を石像に変えてしまう怪物 "石喰い" が現れる。
 なんとか退治したものの、村の人口の半数が石像に変えられてしまう。
 その中には、ウィミィのあこがれの女性・エリナも含まれていた。
 10年後、石像に変えられてしまった人間を元に戻す方法を携えて、
 西の国から医師がやってきた。しかし、人間に戻せるのは1ヶ月に1人。
 村人たちは、家族や恋人を元に戻してもらうために
 くじを引いて順番を決めることになる。
 20歳になっていたウィミィもまた、
 エリナを元に戻してもらうべく、くじ引きに加わるが・・・
 ウィミィの一途な恋心が泣かせる一編。

「私たちが星座を盗んだ理由」
 病院の待合室で、姫子は幼なじみの "夕(ゆう)兄ちゃん" と再会する。
 二人の思いは20年前に飛ぶ。
 10歳の姉・麻里と8歳の姫子、そして姉の同級生の夕兄ちゃん。
 腎臓移植の術後の回復が思わしくなく、入院が長引く麻里のもとへ
 夕兄ちゃんと一緒に通った日々。
 夜空に輝く "首飾り座" は、伝説ではお姫様の首飾りだったという。
 夕兄ちゃんは「七夕の夜、麻里に星の首飾りを贈る」と言い出す。
 そしてその夜、無理を言って夜空を見せてもらった麻里は言う。
 「本当に首飾り座が消えてる・・・」
 20年前、夕兄ちゃんはどうやって夜空の星座を消したのか。
 詩情あふれる星座のエピソードと人間の情念、
 その途方もない落差に驚かされる。


たしかに切れ味鋭い作品揃いとは言える。
ただ、本書に収められた「どんでん返し」は、
後味があまりよろしくないものばかりなんだよねぇ。

前半から中盤にかけて、
コメディだったり、リリカルだったり、ファンタジックだったり。
それがラストのオチで反転する。
そのギャップを楽しむ作品だってのは分かってるつもりなんだが・・・

その手の作品ばっかり集めるというのもねぇ。
読んでるとだんだん気が滅入ってくるんだよなぁ・・・


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