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人造救世主 / ギニー・ピッグス / アドルフ・クローン [読書・SF]

人造救世主 (角川ホラー文庫)

人造救世主 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 小林 泰三
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/08/25
  • メディア: 文庫




人造救世主   ギニー・ピッグス   (角川ホラー文庫)

人造救世主   ギニー・ピッグス   (角川ホラー文庫)

  • 作者: 小林 泰三
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/02/25
  • メディア: 文庫




人造救世主  アドルフ・クローン (角川ホラー文庫)

人造救世主  アドルフ・クローン (角川ホラー文庫)

  • 作者: 小林 泰三
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/09/23
  • メディア: 文庫



評価:★★★

女子大生の橘ひとみは、留学生のジーンとともに
奈良の寺院を訪れた。拝観時間が終わり、
ひと気の無くなった境内に残った二人が遭遇したのは
空中を浮遊して現れた謎の男たち。
彼らは寺院に火を放ち、二人にも襲いかかる。
彼女たちを救ったのは、そこに現れたもう一人の男。
彼は "ヴォルフ" と名乗り、男たちの集団に戦いを仕掛ける。


全体を通して感じたのは、石ノ森章太郎の
「サイボーグ009」や「仮面ライダー」のような、
ちょっと懐かしい70年代のヒーロー・ストーリー。

遺伝子改造を通して "超人" を生み出す謎の組織MESSIAH(メサイア)。
歴史上の "偉人" たちの遺伝子を使ってクローンを作り出し、
さらにそこへ "ロンギヌスの槍" から取り出した
"ナザレの遺伝子" を組み込むことによって
"超能力" を持つ人間が誕生する。
彼らの目標は究極かつ真の "救世主" を作り出すこと。

ヴォルフは、MESSIAHが作り出した試作体の一人。
彼は超能力が発現しない "失敗作" だった。
ちなみに、試作体は番号で呼ばれ、名は与えられない。
(主人公であるヴォルフの試作番号がいくつであったかは
 予想がつく人も多いんじゃないかな。)
彼は、同じ失敗作の仲間たちとともに、"処分" される前に
組織から脱走したのだ。

 この脱走劇の模様は作中で断片的に語られるんだけど
 このへんはなかなか感動的で胸が熱くなる。

物語は、組織が次々に繰りだしてくる "超能力怪人" たちに対し、
孤軍奮闘するヴォルフの姿を描いていく。
ヴォルフ自身は超能力は持たず、通常兵器のみで立ち向かう。
誰にも知られることなく、知恵と勇気で戦い抜いていく。
その胸の中にあるのは怒りか復讐か。

こう書いてくると、重くてダークな話のように思えるかも知れないが
実際に読んでみた感じはかなり異なる。

 もちろん、戦い自体はガチである。
 爆発炎上電撃雷撃の大盤振る舞い、
 血飛沫があがり手足が吹っ飛び内蔵が砕け散る。
 触手はうねり粘液じゅるじゅる阿鼻叫喚。
 いかにも "ホラー文庫" な描写が続く。

・・・なんだけど、ヴォルフ自身が戦いの最中にも軽口を忘れず、
戦う "怪人" たちもかなりエキセントリックな性格の人(笑)が多くて
さらにそこへ現役女子大生のひとみ嬢がからむので
会話の部分だけを読んでるとけっこうコミカルで笑える。

スプラッターが苦手な私がとりあえず最後まで読めたのは
このあたりのさじ加減が上手いのだろうと思う。

2巻のラストでは、組織の "黒幕" が姿を現すが、
そこまでいかなくても、だいたい見当はつくと思う。
もっとも、作者はそのへんを隠そうとは全然思ってないだろうし。


ヴォルフを含め、登場するMESSIAHの怪人たちはみな
歴史上の偉人(というか有名人)のクローンなのだが
正直言って「なんでこの人のクローンなの?」ってのもいる。
卓越した "能力" はあったかも知れないが、
"個人としての戦闘力" には疑問符がつく人も多い(っていうかほとんど)。
それはヴォルフ自身の "オリジナル" も例外ではないが。

でも、本書はそんなツッコミを笑って楽しむのが正しい読み方だと思う。


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