SSブログ

太陽が死んだ夜 [読書・ミステリ]

太陽が死んだ夜 (創元推理文庫)

太陽が死んだ夜 (創元推理文庫)

  • 作者: 月原 渉
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/06/12
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

第20回鮎川哲也賞受賞作。

舞台は1984年のニュージーランド。
義務教育を終えた主人公ジュリアンは、
親友のバーニィとともに故郷を離れ、
全寮制のラザフォード女子学院へ編入することになる。

旅立つ前夜、ジュリアンは同学院の卒業生でもある
祖母が残した手記を発見する。そこには、
1943年に学院の教会堂で起こった不可解な殺人事件が記されていた。

不安な気持ちを抱えて学院での生活を始めるジュリアン。
やがて、伝統行事の "お籠もり" がやってきた。
7日間、選ばれた生徒が教会堂の中で寝泊まりをするのだ。
ジュリアンとバーニィを含む7人の生徒が代表に決まり、
老シスターのナシュとともに "お籠もり" が始まる。

しかしその夜から天候は急変、豪雨によって教会堂を囲む堀は
水であふれ、外部へとつながる橋が流されてしまう。
そして、孤絶した教会堂内部で、
41年前の状況と酷似した密室殺人が起こる・・・


1943年のニュージーランドで実際に起こった、
日本人捕虜収容所での殺傷事件(フェザーストン事件)を
からめているが、それはあくまで題材の一つに過ぎず、
メインとなるのは41年の時を隔てた不可解な密室殺人、
そして "吹雪の山荘" ならぬ "嵐の教会堂" を舞台とした
クローズト・サークルものの本格ミステリである。

出てくる女の子たちはみんな個性豊かに描かれている。
ホームズ・ファンのバーニィ、謎めいた日本人留学生・"ベル" 、
真面目でおとなしいキャサリン、フランス系美少女・ジェニファ、
お嬢様のロティ、そしてエキゾチックなイライザ。
彼女たちが繰り広げる緊張感あふれる会話劇も読みどころ。

そして、クローズト・サークルものは容疑者の数が限定されるので、
複数の殺人が起こると、だんだん犯人が絞られてきてしまうのが
この手の話の難しいところだと思うんだが、
本書は非常にうまく最後まで緊張感を持続させながら読ませる。

41年の時を隔てた2つの事件、その中に複数の密室殺人をちりばめ、
しかもクローズト・サークル。
普通なら500ページを超えてもおかしくない内容だと思うんだが
それを文庫で280ページとコンパクトかつ綺麗にまとめてある。
高密度な本格ミステリで、鮎川哲也賞受賞もうなずける。


最後に余計なことを。

41年の時間を隔てた2つの事件の真相が明かされたとき、
日本の某巨匠の某有名長編ミステリをちょっと思い出した。
もっとも、物語の背景が似てるだけで
トリックも犯人もストーリーも、全くの別ものなんだけどね。


nice!(3)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ: