SSブログ

レッドスーツ [読書・SF]

レッドスーツ (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

レッドスーツ (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

  • 作者: ジョン スコルジー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/02/07
  • メディア: 新書



評価:★★★★

時は25世紀半ば。
銀河連邦の新任士官・ダール少尉は、4人の新人仲間と一緒に
宇宙艦隊旗艦・イントレビット号に配属される。

未知なる大宇宙を旅するイントレビット号は様々な冒険に遭遇する。
しかし、やがてダール少尉たちはおかしなことに気づく。

遠征チームを組んで未知の惑星に降り立ったクルーたちから
毎回のように死者が出ることに。
そして、それを指揮する艦長や主任科学士官たちは
必ず生還することに。

航宙士が未知の宇宙ウイルスに罹患し、
全身の筋肉が溶け落ちるような瀕死の状態になっても大丈夫。
艦の宇宙生物学研究室には、謎の "ボックス" がある。

 21世紀の家庭なら、たいていの家に有り、
 中に食べ物を入れてボタンを押し、"チン" と鳴ったらできあがり、
 って "あれ" にそっくりな。

謎の宇宙ウイルスをその中に入れ、ボタンを押して、
"チン" と鳴ったらワクチンが完成してしまう。
そのおかげで、全身の筋肉が溶け落ちた航宙士も
一週間後には(!)すっかり回復し(!?)、ピンピンして任務に復帰する。

でも、誰もその "ボックス" の存在理由も作動原理も説明できない。

いったいこの艦では、何が起こっているのか?


解説によると、タイトルの「レッドスーツ」(原題:REDSHIRTS)とは、
アメリカのスラングで
『フィクションにおいて、登場してすぐ死んでしまう無個性な脇役』
という意味だという。
始まりは1966~69年のTVドラマ版「スター・トレック」において、
事件が起こるたびに、赤い制服を着た保安部員が
コロコロ死んでいったことから来ているらしい。


まさに「レッドスーツ」のように次々と死んでいく下級乗組員たち、
そしてどんな危機に巻き込まれても、決して死なない上級士官たち。

自分たちが "生き残るため" に、艦の秘密を探り始めるダールたちだが、
そんな彼らの前に現れた男・ジュンキンズは、
驚くべき "仮説" を告げるのだった・・・


序盤はユーモアとジョークが満載で、
本家の「スター・トレック」をおちょくったパロディにもなってて、
かなり笑えるコメディである。
ジェンキンズが登場してからは、お笑いコメディ路線は守りつつ、
物語は予想外の方向へ暴走を始める。


ダールたちの物語は、本編できっちりとけりがつくんだけど、
特筆すべきは終章。
この作品、新書で330ページあるんだけど、
なんとラスト80ページが終章。全体の1/4がエピローグ。

しかも終章自体も3つのパートに別れている。
どこか力の入れ方を間違っているような気もしたんだが
読み終えてみて分かる。
本書のキモは、実は終章にあったのかも知れない。

本編はドタバタコメディなんだけど、この終章はいたってシリアス。
パート1はともかく、パート2はけっこう胸にしみる。

そして大トリの終章パート3。およそ20ページしかないんだけど、
ああ・・・ダメだ・・・わたしはこの手の話に弱いんだよぉ・・・

ここで私の涙腺が大崩壊。もう涙で文字が追えなくなってしまった。

そしてこの感動は、本書がSFだからこそ、もたらされたもの。
「いやあ、SFってホントにいいものですねぇ」(by 水野晴郎)。


笑いあり涙あり冒険あり。アメリカで
ヒューゴー賞(SF大会参加者の人気投票で1位)と
ローカス賞(SF情報誌の読者による選出)の
ダブル受賞というのも納得の出来。

終章までは★3つだったんだけど、
ラスト20ページの感動で★1個増量だ!


ついさっき、ラスト数ページを再読してみたんだが・・・
やっぱり涙が止まらない・・・


nice!(2)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ: