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カンナ 出雲の顕在 [読書・冒険/サスペンス]

カテゴリを「ミステリ」から「サスペンス」に変えた。
「SF」でも「ファンタジー」でも
間違いじゃないような気もしてきたんだけど・・・

カンナ 出雲の顕在 (講談社文庫)

カンナ 出雲の顕在 (講談社文庫)

  • 作者: 高田 崇史
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/09/12
  • メディア: 文庫



評価:★★★

カンナ・シリーズ全9巻のうちの8巻目。
ラス前と言うことですね。

出賀茂神社の社伝「蘇我大臣馬子傳暦」を奪い、
逃走を続ける諒司から呼び出しを受けた竜之介は出雲へ。

待ち受けた諒司が語るのは、歴史の影に隠されてきた
"二つの天皇家" 、「金烏」と「玉兎」。
そして竜之介は「玉兎」の中でも "最重要人物" だということ。

竜之介を追って甲斐と聡美もまた出雲へ向かうが・・・


今回のテーマは出雲と素戔嗚尊(すさのおのみこと)。
出雲大社やら大国主命やら、毎度お馴染みの
歴史に関する蘊蓄がたっぷり楽しめる。

それに加えて、さすがに完結が近いと物語も大きく変転していく。
今回のラストはかなり驚いた。
いままでのこのシリーズ、主人公の甲斐くんの
いささかのほほんとした性格のせいか、
けっこうアクションシーンとかがあっても
あまり緊迫感というか緊張感というか、
そういう雰囲気に乏しいと感じていた。
ところが本書ではなんと○○が○○○○○に・・・
いやあ、ホントにびっくりの展開でした。

出雲関係の蘊蓄はとても面白く読ませてもらったんだが
「金烏」と「玉兎」についてはちょっと唐突な感じ。

現代に「玉兎」が復活するメリットってあるんだろうか。
本文中での登場人物も語っているけど、かなり疑問である。
でもまあ、そこを否定してしまったら
伝奇小説なんて書けないだろうしなあ。

ここのところ毎回書いてるけど、このシリーズ、
とっくにミステリではなくなって伝奇アクションに変貌してたんだが、
本書の終盤ではなんと超能力SFっぽくなってきた。

 もう最終巻で奈良の大仏が動き出しても、
 暗黒宇宙から幻魔が襲来してきても驚かない(←嘘です)。

ここまで広げた風呂敷をどんなふうに畳んでみせるのか、
最終巻に期待しましょう。


最後にどうでもいいことを。

巻末の解説で書評家の小梛治宣氏が
歴史に埋もれた "闇の一族" を扱った作品として
半村良の「嘘部」シリーズと本書を比較しているんだけど
この文章はいささか本シリーズを褒めすぎじゃないかなあ。
(まあ、解説する人は褒めなきゃいけないんだけどね。
 SF作家が本業の半村良とは作品のカラーが違いすぎて
 比べること自体にあまり意味がないような気も。)