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ブラザー・サン シスター・ムーン [読書・青春小説]

ブラザー・サン シスター・ムーン (河出文庫)

ブラザー・サン シスター・ムーン (河出文庫)

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2012/05/08
  • メディア: 文庫



評価:★★☆

ミステリでもSFでもホラーでもファンタジーでもない。
3人の男女の、学生時代の出来事を点描した青春小説。

楡崎綾音(にれざき・あやね)、戸崎衛(まもる)、箱崎一(はじめ)の
"ザキザキトリオ" は、同じ高校から同じ大学へ進学する。

第一部「あいつと私」
 おりしも世間は「女子大生ブーム」だった頃。
 華やかに、そして "綺麗" になっていく女学生たちの中で、
 相変わらず垢抜けない綾音だったが、
 バイト先の飲み屋の客の何気ない一言で、
 自分の中に "ある願望" が潜んでいたことを自覚する。
 それはあとあと彼女の人生を大きく変えることになる。

第二部「青い花」
 モダンジャズのサークルに入り、練習に明け暮れる戸崎。
 同級生や先輩たちのテクニックやセンスに驚嘆するも、
 なんとか追いつくべく努力を重ねていく。
 めざすはサークルのトップに位置するレギュラー・バンド。
 綾音とは、お互いのアパートを行き来する仲なのに
 友人以上にはなぜか踏み出せず、時間だけが過ぎていく・・・

第三部「陽の当たる場所」
 大学を卒業し、金融機関に勤めながら自主映画を製作していた箱崎。
 毎年応募していた映画コンクールに入賞したことを機に、
 仕事を辞め、映画監督としての一歩を踏み出す。
 取材に来たライターの質問を受けながら、大学時代のことを回想する。
 映画サークルに所属し、部員たちの映画作りを手伝った日々。
 名画座でたくさんの映画を見たこと。
 その中の一本、「ブラザー・サン シスター・ムーン」を
 綾音・戸崎と一緒に三人で観た日のこと・・・

ボーナス短編の「糾える縄のごとく」は
 "ザキザキトリオ" が初めて顔を合わせた高校時代のエピソード。


本書は作者の自伝的作品との触れ込みなので
3人が入学した大学をはじめ、作品中の登場人物や出来事には
多かれ少なかれモデルがあるみたいだ。
てことは、作中の大学はたぶん早稲田、ということになるだろう。

大事件が起こるわけでもないし、ドラマチックな展開があるわけでもない。
学生時代のいくつかのシーンを切り取っただけなんだけど
読んでいると自分も学生時代に戻ってしまう。

そして、ちょっと(自分の心が) "痛い" って感じるところも。

私自身は、大学時代にあまりいい思い出がない。
学内の雰囲気だって、華やかな(と私には感じられる)早稲田とは違って、
田舎にあった地味~な大学だったしね。

とにかく、勉強するにしろ遊ぶにしろ、私は中途半端だった。
戸崎や箱崎みたいに、サークルに打ち込んだこともなく
綾音のように、一生を決めるような言葉に出会うこともなく。

もっと徹底的に勉強以外のことに熱中していれば、
それなりに充実した思い出が残ったろうし、
もっと徹底的に勉強していれば、たぶん修士までは進んでただろう。

どちらに転んでも、今の職業には就いていなかっただろうなぁ。

でもそうしたら、今のかみさんとも出会うことはなかっただろうし、
それどころかずっと独り身だったかも知れないなぁ・・・
まあ、手に入らなかったものを数えるのは建設的ではないし、
今の人生がことさら不幸だとか失敗だとは思っていないので
これでいいんだろうなぁ・・・

・・・なーんてことを考えてしまいました。


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mojo

makimakiさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2014-09-11 20:48) 

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