NOVA10 書き下ろし日本SFコレクション [読書・SF]
NOVA 10 ---書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫)
- 作者: 菅 浩江
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2013/07/05
- メディア: 文庫
評価:★★☆
書き下ろしの短編SFアンソロジー、最終巻である。
シリーズ最多の12編収録。
ついでにページ数も最多のおよそ630ページ。
毎回書いてるけど、作家/作品ごとに、
相性の合う/合わないはやっぱりある。
「妄想少女」(菅浩江)
奈緒花は55歳だけど、通っているスポーツクラブの
トレーニングプログラムの中では18歳。
わたしもこのように気持ちだけでも若くありたい。
本書で面白かった第2位。
「メルボルンの思い出」(柴崎友香)
SFというよりはホラーっぽい不条理小説のような作品。
「味噌樽の中のカブト虫」(北野勇作)
頭の中でカブト虫が孵化し、
それが脳味噌をだんだん食べていってしまうという話。
よく考えたら怖い話なんだが、
こういうのをブラックユーモアって言うのかな?
「ライフ・オブザリビングデッド」(片瀬二郎)
ゾンビになっても会社への出勤を忘れない。
そんなゾンビが数百万人、毎朝通勤ラッシュにもまれている。
想像してみるとものすごいシュールな光景だなあ。
「地獄八景」(山野浩一)
山野浩一って30年くらい前から名前だけは知ってたけど
読んだのは初めて。
ものすごい変わった話を書くんじゃないかって思ってたけど
案外、普通に読める作品だったね。
「大正航時機奇譚」(山本弘)
アインシュタインが日本を訪れた大正時代、
タイムマシンをでっち上げて金を巻き上げる詐欺師親娘の話。
これ、ラストの一行が書きたかったんだろなあ。
本書で面白かった第3位。
「かみ☆ふぁみ!
~彼女の家族が「お前なんぞに娘はやらん」と頑なな件~」(伴名練)
世界を思い通りに出来る "神様" の力を授かった少女・亜衣と、
そんな彼女に恋をした "俺" との、
時空を "駆けそうな" (笑) 純愛物語。
ドタバタなラブコメなんだけど、
終盤は怒濤の展開でラストはちょっとしんみり。
本書で面白かった第1位。
「百合君と百合ちゃん」(森奈津子)
作者の森さんがこういう世界が大好きなんだというのは分かった。
則雄君の気持ちがちょっぴり理解できる自分が怖い。
「トーキョーを食べて育った」(倉田タカシ)
前半は正直言って何が何だかよく分からなかった。
後半になってやっと何がどうなっているのかが分かってきた。
分かったけど、どうしても面白いとは思えなかったです。
「ぼくとわらう」(木本雅彦)
遺伝子治療や薬物治療が進んで、ダウン症でも
ほとんど健常者と同じ生活が出来るようになった未来。
主人公はダウン症の青年で、余命が残り少ないという予感に囚われている。
自伝を書くことになった彼は、今までの人生で関わった人に会う。
学生時代の恋人、中学校時代の同級生、保育士・・・
月並みな感想だが、本当にこんな時代が来ればいいと思った。
本書で面白かった第3位(「大正-」と同点で)。
「(atlas)^3」(円城塔)
作者が感じる「面白い」と、私が感じる「面白い」は、
方向がかなり違うようです。
「ミシェル」(瀬名秀明)
小松左京の長編「虚無回廊」の登場人物、
天才言語学者ミシェルを主役にした "スピンオフ" (?) 作品。
文庫で150ページもあって、もはや短編のボリュームではない。
「虚無回廊」自体、私は未読なので
ミシェルというキャラ自体になじみがない。
本書だけ読むと、「なんだかめんどくさいキャラ」だなあ・・・
凄い作品だとは思うんだけど、
面白いかと聞かれたら正直なところ微妙。