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バチカン奇跡調査官 天使の群れの導く処 [読書・ミステリ]


バチカン奇跡調査官 天使の群れの導く処 (角川ホラー文庫)

バチカン奇跡調査官 天使の群れの導く処 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 藤木 稟
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/07/16
  • メディア: 文庫

評価:★★★

 カソリックの総本山、バチカン市国。
 そこには、世界中から寄せられてくる "奇跡" 発見の報に対してその真偽を判別する調査機関『聖徒の座』がある。

 そこに所属する天才科学者の平賀と、その相棒で古文書の解析と暗号解読の達人・ロベルト。「奇跡調査官」である神父二人の活躍を描く第22弾。
 長編としては17作めになる。


 モスクワ発香港行きアエロフロート208便は、高度9000mを夜間飛行中にトラブルに巻き込まれる。突然エンジンが停止し、電子機器が使用できない状態になってしまったのだ。
 辛うじて動翼の油圧系統は作動するが、機体は徐々に高度が下がり始める。目の前には標高7500mの天山山脈がそびえている。

 絶望しかけた機長たちの目前に、雲のような発光物体が現れる。その中に見えたのはなんと ”天使” だった。
 ”天使” の後を追った208便の前に、空港の滑走路が現れる。そこはキルギスのマナス国際空港だった。208便は緊急着陸に成功、無事の帰還を果たした。

 その同じ夜。キルギスの首都ビシュケク郊外のカソリック教会でも異変が起こっていた。入り口に立つ巨大なキリストの像が、一夜のうちに90度向きを変えていたのだ。その向いた先にはマナス国際空港があった・・・


 というわけで平賀とロベルトのコンビが現地調査に赴くことに。
 キルギスという国はあまり馴染みがないのだけど、人種や宗教、歴史、政治なども詳しく紹介されたりして、紀行ものの雰囲気も。もっともその内容が、あとあとになって効いてくるのだけど。


 2人は手分けして、208便と発光物体の飛行をたまたま撮影した民間人から動画データを手に入れたり、キリスト像の接地部分の構造やらを調べたり。

 そこで分かったのは、動画データにはたしかに光る雲の中に天使らしき形が見えること、動画データには加工のあとは一切ないこと。
 キリスト像の回転には、力持ちの人間を100人単位で集めても難しいこと。

 今まで数々の奇跡の正体を暴いてきた二人だが、流石に今回は奇跡認定せざるを得ないか・・・となるのだが、もちろん終盤にはしっかり奇跡の謎解きが行われる。

 ただ、キリスト像の回転は何となく見当がついたよ。某国産ミステリにも同様の現象が扱われていたし。ただ、そのスケールが桁違いに大きいけどね。

 ”天使の飛行” についてはさっぱり分からなかった。いったいどんな理屈をつけるのかと思ってたんだけど、終盤の謎解きで納得。確かにこんなカラクリなら、天使が飛んでるように見えるかもなぁ・・・って思わされる合理的な方法が示される。
 実現可能性はちょっと分からないが、少しでも可能性のある手段があると分かれば、このシリーズの場合はOKだと思ってるので。

 いままで ”奇跡” として現れた現象は、たいてい犯罪と結びついていたりした。しかし今回はほとんどそういう気配がない。
 じゃあ、今回は純粋に現象自体の解明で終わるのかと思いきや、実はその陰に・・・となる。しっかりとそれなりの背景が用意されていて、犯罪ではないかも知れないが、ある意味、犯罪より深刻なことかも知れない。
 そういう事情があったゆえの ”奇跡の出現” だったわけで、詳しく書くとネタバレだけど、たしかに目の付け所はいいと思った。

 次回はどんな ”奇跡” を見せてくれるのか。このシリーズ、けっこう楽しみにしてるんだよなぁ。



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