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潮騒のアニマ 法医昆虫学捜査官 [読書・ミステリ]


潮騒のアニマ 法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)

潮騒のアニマ 法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)

  • 作者: 川瀬七緒
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/02/15

評価:★★★☆

 「法医昆虫学」とは、死体を摂食するハエの幼虫(いわゆるウジですね)などの昆虫が、人間の死体の上に形成する生物群集の構成や、構成種の発育段階、摂食活動が行われている部位などから、死後の経過時間や死因などを推定する学問のこと。  (by wiki)

 しかし日本ではまだまだ発展途上の分野らしい。
 本シリーズの主人公・赤堀涼子は、日本で法医昆虫学を確立させるべく、日夜捕虫網を振り回して研究に没頭する博士号を持つ昆虫学者。
 ちなみに36歳独身、小柄で童顔(笑)。

 彼女が捜査一課の岩楯祐也警部補とコンビを組んで、難事件に取り組むシリーズの第5作。


 伊豆諸島の新島の沖合20kmに浮かぶ「神の出島(かみのでじま)」。
 そこでミイラ化した女性の遺体が見つかった。発見場所は道路脇の草むら。野犬がどこかから運んできたらしい。遺体の状態から死んだ場所は屋内、解剖医は首つりによる自殺と断定し、ミイラ化の状況から、死後3ヶ月以上と思われた。

 しかし、現場へやってきた赤堀はそれとは異なる解釈を見いだす。しかし当初は捜査陣の誰も彼女の言うことを信じないのは、もうお約束のパターン(笑)。

 すっかり ”赤堀のお守り役” になってしまっている岩楯刑事だが、今までの事件で示されてきた彼女の能力をよく知るが故に、彼女の推定を信じて捜査を進めていくことになる。

 遺体の身元は西峰果歩(かほ)、29歳。幼稚園の教員をしていたが1年前に辞め、無職となっていた。
 果歩の家族やかつての職場を訪ねた岩楯は、彼ら彼女らの言動から何か隠されたものがあることを感じる。
 さらに、800人の島民の中にも、さまざまな思惑が渦巻いていることにも気づいていく。

 赤堀のほうも、毎回披露される奇矯な行動は健在(笑)。登場そうそう、フナムシを手づかみで捕まえ始め、周囲の度肝を抜いたりとか(おいおい)。
 犬がどこから遺体を運んできたのかも解明するが、それがさらに謎を深めていくことになる。

 赤堀と岩楯、この2人の協力関係が絶妙で、新たな事実を次々と突き止めて真相へと導いていく。

 最終的には今回の事件を引き起こした ”犯人” へと至るのだけど、今回読んでいて思ったのは、作者のストーリーテラーとしての才能。
 文庫で約480ページとかなりの大部なのだけど、その長さが全く苦にならない。赤堀も岩楯も、そして今回限りの登場のゲストキャラも、みな個性が際立っていて物語の中で生き生きと活躍している。彼ら彼女らの行動を追っていけば、そのまま物語の中にどっぷり浸かることができる。
 特に主役の二人は、もう阿吽の呼吸というか信頼関係が確立しているというか、二人で一組の探偵役として、とても上手く機能している。

 余り詳しく書くとネタバレかと思うが、遺体の状況には、ある侵略的な外来生物も絡んでいるなど、昆虫に関する蘊蓄も豊富。毎度のことながらこのあたりもとても面白い。



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