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竜鏡の占人 リオランの鏡 [読書・ファンタジー]


竜鏡の占人 リオランの鏡 (角川文庫)

竜鏡の占人 リオランの鏡 (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/01/24
評価:★★★☆


 巨大な湖水・ティラン海のほとりにある交易国家・リオラン。そこを治める王族には3人の王子がいた。ジャフルは現王の子、アラバスの父は宰相を務め、ネオクの父は書記官長の職にある。いずれも10代後半という生意気盛り。

 3人揃って坊ちゃん育ち。ジャフルは薄っぺらく、アラバスは頭でっかち、ネオクは享楽的な性格と、要するに揃いも揃った ”三馬鹿王子” というわけだ。

 しかしリオランを取り巻く状況は平穏ではない。現王は病床にあり、その隙を狙ってか北からは騎馬民族のノイウルン族が、東からは大国・央美(おうび)国が迫ってこようとしていた。
 王宮ではジャフルの母だった正妃がなくなり、美貌の第二王妃・カトラッカが権勢をふるっている。

 ある日、3人の王子はカトラッカに呼び出され、〈竜鏡〉(りゅうきょう)というものの存在を知らされる。それは過去も未来も映し出す力を持ち、それを使えば世界を統べることもできるという。

 3人はカトラッカにそそのかされ、〈竜鏡〉探索の旅へと出ることになってしまう。しかしそれは、カトラッカと彼女の腹心にして愛人のエスクリダオによる陰謀で、王子たちを王宮から放逐し、あわよくば野垂れ死させることを画策していたのだ。

 3人の王子に加え、ジャフルの妹で占人見習いのジャフナ、奴隷秘書のガドロウ、護衛役の戦士バンダクの総勢6人で湖水を渡る交易船に乗り込み、遥かな冒険の旅に出ることになる・・・のだが、なにせ三馬鹿王子だからね。

 行く先々で欺されたり、メンバーがバラバラになったり、悪徳商人に捕まったりとトラブルの連続に巻き込まれることになる。彼らの旅は、序盤からは思いもよらないほど長期間にわたるものになっていく。


 本書は、この〈竜鏡〉探索の旅を通じて、三馬鹿王子たちが庶民の生活、世間の厳しさを知り、さらには過酷な境遇を味わうことで、次第にたくましく成長していく姿を描いていく。
 もっとも、3人のうち1人はさっぱり成長しない、というか、さらに悪化するんだが(笑)。

 もちろんファンタジー要素も満載だ。
 〈竜鏡〉に関わった者たちは転生を繰り返し、怨讐の因縁に囚われている。カトラッカとエスクリダオもまた、意外な過去世が明らかになっていく。
 湖水に棲むティランの女神も竜の化身となって現れ、スペクタクルな戦いのシーンを見せてくれる。

 序盤では、王子たちのあまりのふがいなさに「この国は大丈夫か?」って思わされるが、旅を終えた彼らを見ると「まあ何とかなりそうかな」くらいにはなってるかな。
 途中の苦難の部分を読んでると、いつ挫けるか心配してしまうのだが、彼らは最後まで頑張ってくれる。このあたり、ちょっと展開が甘い気もするが、そこに拘るのは本筋ではないだろう。
 読者も彼らが試練を乗り越えるのを期待するし、それに応えてみせてこその主人公だよね。

 できれば、数年後の彼らの様子が知りたいなあとも思った。短編でもいいから、書いてくれないかなぁ・・・。



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