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輪廻の蛇 [読書・SF]

輪廻の蛇 (ハヤカワ文庫SF)

輪廻の蛇 (ハヤカワ文庫SF)

  • 作者: ロバート・A. ハインライン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/01/23
  • メディア: 新書
評価:★★☆

アメリカSFの巨匠・ハインラインの短編集。
バラエティに富んだ6編が収録されている。

「ジョナサン・ホーグ氏の不愉快な職業」
文庫で430ページほどの本書のなかで、240ページあまりと
厚さのおよそ6割を占める中編、というか短めの長編。
ジョナサン・ホーグには、なぜか昼間の記憶が無い。
家を出た後、何処に行って何をしているのか。
どんな職業に就いているかすら憶えていないのだ。
テディとシンシアは夫婦で私立探偵をしている。
ジョナサンは彼らに、昼間の自分を尾行してほしいと依頼する。
テディは朝に家を出たジョナサンの後をついていき、
あるビルの13階にある一室に姿を消すのを確認するが、
シンシアと共に確認に戻ったとき、そのビルから13階が消失していた。
(12階の上が14階だったということ。欧米ではよくあるらしい。)
消えた13階はどこへ行ったのか? 何が起こっているのか?
何者かが暗躍しているのか?
結局、そこがよく分からないままストーリーは進行する。
怪しげな男たちが現れて何やら画策しているのだが
宇宙人なのか異次元人なのか政府の秘密実験なのか・・・
ラスト近く、謎解きめいた説明はあるのだけど、
その説明自体がよく分からない(おいおい)し、結末もスッキリしない。
ホントにハインラインが書いたの?って疑ってしまう。

「象を売る男」
ジョンとマーサの夫婦はいつも一緒に何処の旅行にも出かけた。
しかし子をなさないまま、マーサが亡くなる。
老いたジョンは一人で旅を続け、
ある日バスで祭りの会場へ向かうのだがが・・・
臨死体験みたいなエピソードなんだけど、
ジョンはこちら側に帰ってきたのかなぁ。

「輪廻の蛇」
表題作。始めて読んだのは大学生の頃だったかなあ。
一読してぶっ飛んだくらいスゴいアイデア。
酒場を訪れた一人の青年が、自分の身の上を語る話なんだが、
これ、タイムパラドックスの極致じゃなかろうか。
何せ○○と△△が□□□して××になっちゃうんだから・・・
(これじゃ何のことか分からんね。でも書けないんだよなあ)
この本を買ったのも、これを読みたかったからといって過言ではない。
再読してみて、細かいところは忘れてたけど
メインとなるアイデアはきっちり憶えてたよ。

「かれら」
”かれ” は病院に収容されている。なかば監禁されるように。
”かれ”は主張する。これは陰謀だと。
周囲の人間すべてがグルでかれをだましていると。
いや、この社会そのものが陰謀のための装置なのだと・・・
日本のSFでもよくあったパターンかも知れないが
当然ながらこちらの方が早出しなんだろうなあ。

「わが美しき町」
新聞記者ピーター・パーキンズが市政の腐敗を告発するため、
手を組んだ相手は ”生きているつむじ風”・キトンだった。
ディズニーあたりが映画化しそうなファンタジー。

「歪んだ家」
公認建築士ティールが建てたのは、立方体の展開図を3D化したみたいな家。
つまり立方体を縦に4個つなげて4階建てにし、
2階部分の4面にそれぞれ立方体を4つくっつけた構造。
しかし完成そうそうに地震が起こったため、
現地へ家の様子を確認しに行ったティールたちが見たのは
立方体1個だけの家。しかしその内部には、
残り7個分の空間が折りたたまれて入っていたのだ・・・
読むまで分からなかったが、これも昔読んだ話だった。
日本の作家さんの書いたものだと思ってたら海外産だったんだね。
本書の中では「輪廻-」と並んで、SFらしい話。


ハインラインは海外SFの大御所で、
『夏への扉』とか『宇宙の戦士』とか
名作・話題作に事欠かない人なんだけど、こんな話も書いてたんだねえ。
作家としての幅は感じさせるけど、作品的にいいかどうかはまた別。

やっぱり本書の中では『輪廻の蛇』がピカイチだと思う。

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