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2018年 今年読んだ本 ベスト30 & ここ20年間の読書冊数 [読書全般]


さて、いよいよ今年も終わりということで、
年末恒例のランキング発表です。

毎回書いてますが、私 mojo の独断と偏見で決めてます。
皆さんの評価と一致しない場合もあるかと思いますが
私の好みの問題ですので、石を投げたりせずにご寛恕ください。

対象は、原則としてオリジナルのフィクション作品のみです。
(ノンフィクションとノベライズは除いてあります。)
あと、挙げてある本の中にはまだ記事に書いてないものも含まれます。
それについては、なんとか1月・・・は無理かな。2月中くらいには
upできるように頑張ります(^^;)。

それではまずはトップテンから。
星の数で言うと、第1~8位が星4つ半。9位以下は星4つです。

第1位 水魑の如き沈むもの [三津田信三/講談社文庫]
第2位 満願 [米澤穂信/新潮文庫]
第3位 隻眼の少女 [麻耶雄嵩/文春文庫]
第4位 影の中の影 [月村了衛/新潮文庫]
第5位 トッカン(シリーズ1~3) [高殿円/ハヤカワ文庫JA]
第6位 玉依姫 [阿部智里/文春文庫]
第7位 キャロリング [有川浩/幻冬舎文庫]
第8位 つばき、時跳び [梶尾真治/徳間文庫]
第9位 魔導の黎明 [佐藤さくら/創元推理文庫]
第10位 十二人の死にたい子どもたち [冲方丁/文春文庫]

次に第11~20位です。
第11~19位が星4つ。20位は星3つ半です。

第11位 鍵のかかった男 [有栖川有栖/幻冬舎文庫]
第12位 処刑までの十章 [連城三紀彦/光文社文庫]
第13位 黒龍荘の惨劇 [岡田秀文/光文社文庫]
第14位 忘れ物が届きます [大崎梢/光文社文庫]
第15位 リプレイ2.14 [喜多喜久/宝島社文庫]
第16位 顔のない肖像画 [連城三紀彦/実業之日本社文庫]
第17位 黎明の笛 陸自特殊部隊「竹島」奪還 [数多久遠/祥伝社文庫]
第18位 凍雨 [大倉崇裕/徳間文庫]
第19位 白戸修の逃亡 [大倉崇裕/双葉文庫]
第20位 王とサーカス [米澤穂信/創元推理文庫]

次は第21~30位です。すべて星3つ半です。

第21位 機龍警察 火宅 [月村了衛/ハヤカワ文庫JA]
第22位 江神二郎の洞察 [有栖川有栖/創元推理文庫]
第23位 全日本探偵道コンクール セーラー服と黙示録
                    [古野まほろ/角川文庫]
第24位 真実の10メートル手前 [米澤穂信/創元推理文庫]
第25位 福家警部補の報告 [大倉崇裕/創元推理文庫]
第26位 明日の子供たち [有川浩/幻冬舎文庫]
第27位 R,E.D. 警察庁特殊防犯対策官室(ACTⅠ~Ⅲ)
                     [古野まほろ/新潮文庫nex]
第28位 煙突の上にハイヒール [小川一水/光文社文庫]
第29位 獏の檻 [道尾秀介/新潮文庫]
第30位 身元不明(ジェーン・ドゥ) 特殊殺人捜査官 箱崎ひかり
                     [古野まほろ/講談社文庫]

これ以外に星3つ半を獲得した作品が14作ありましたので
以下に掲げます。こちらは評価順では無く読了順です。

・小鳥を愛した容疑者 [大倉崇裕/講談社文庫]
・技師は数字を愛しすぎた [ボワロ&ナルスジャック/創元推理文庫]
・静かな炎天 [若竹七海/文春文庫]
・星読島に星は流れた [久住四季/創元推理文庫]
・神様の裏の顔 [藤崎翔/角川文庫]
・眼球堂の殺人 ~The Book~ [周木律/講談社文庫]
・臨床真実士ユイカの論理 ABX殺人事件 [古野まほろ/講談社タイガ]
・長い廊下がある家 [有栖川有栖/光文社文庫]
・二重螺旋の誘拐 [喜多喜久/宝島社文庫]
・恋する創薬研究室 片思い、ウイルス、ときどき密室
                       [喜多喜久/幻冬舎文庫]
・問題物件 [大倉崇裕/光文社文庫]
・シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱 [高殿円/ハヤカワ文庫JA]
・純喫茶「一服堂」の四季 [東川篤哉/講談社文庫]
・蜂に魅かれた容疑者 警視庁いきもの係 [大倉崇裕/講談社文庫]

今年はノンフィクションに限ると173冊読めました。
新書等のノンフィクションを入れるともう数冊追加になるのですが。

統計を取り始めたここ20年間では5番目の多さ。
文庫換算で総ページ数は約68000ページ弱
1日あたり、185ページくらい読んでいたことになります。
もっとも、読むのにかまけて読書録のupが滞ってますが・・・


さて、平成最後の大晦日にあたって、
いままでの読書記録を調べてみたのですが
Excelで記録をつけ始めたのが平成11年だったことが判明。
つまりここ20年分の読書記録データが見つかりました。

読んだ本全部をここに挙げるのはさすがに無理ですが
読んだ冊数だけ挙げてみましょう。

1999年(120冊) → 2000年(179冊) → 2001年(110冊)
→ 2002年(167冊) → 2003年(185冊) → 2004年(155冊)
→ 2005年(155冊) → 2006年(176冊) → 2007年(161冊)
→ 2008年(128冊) → 2009年(104冊) → 2010年(166冊)
→ 2011年(140冊) → 2012年(108冊) → 2013年(108冊)
→ 2014年(182冊) → 2015年(161冊) → 2016年(162冊)
→ 2017年(148冊) → 2018年(173冊)

20年間で約3000冊1年あたり平均して150冊弱というところですね。
でも年によって結構凸凹があります。

最高は2003年の185冊
なんと2日に1冊読んでたことになります。
よく読めたなあ。そんなにヒマだった記憶は無いのだが(笑)。
最低は2009年の104冊
これもなんで読めなかったのかさっぱり覚えてません(^^;)
1年を通じて仕事に忙殺されてたってこともないし。

2012年と2013年がまた落ち込んでる原因は分かってます。
このあたりは「ヤマト2199」の公開があって、
感想もどきを一所懸命書いてたのですね。
2017年もちょっと減ってるのは「ヤマト2202」の影響。

 来年3月にはその「ヤマト2202」最終章が公開されます。
 思えば、長い休眠状態にあって
 自然消滅を待つばかりだったこのブログが
 息を吹き返すきっかけとなったのが「ヤマト2199」でした。
 そういう意味でも、最後まで見届けなければいけないですね。


さて、すっかりサボってしまった読書感想録ですが
年明けあたりからボチボチ再開したいと思います。

来年も「MIDNIGHT DRINKER」を
よろしくお願いします。ぺこり m(_ _)m

それでは皆様、良いお年を。

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ハン・ソロ/スターウォーズ・ストーリー [映画(レンタル)]


言わずと知れた超有名映画シリーズ『スターウォーズ』。
ルーカスの手を離れ、ディズニーに移ってから
製作が再会され、本伝(EP.7~)と並行して
外伝的な映画も製作されるようになった。
本作は『ローグ・ワン』に続くスピンオフ2作目となる。

solo-a-star-wars-story.jpg
本作は、日本での公開前から「評判が悪い」とか
「アメリカでは大コケした」とかの
マイナスイメージが飛び交う映画だった。
(私が映画館へ行かなかったのはそれが理由ではないのだが)

結局、この時期になってレンタルビデオで観ることになったのだけど
これも「ハン・ソロ」を借りよう、って思って
TSUTAYAに行ったのではない。

かみさんが「グレイテスト・ショーマン」が観たいと言い出したので
そっちを借りに行ったところ、たまたまその横にあったので
ついでに借りてきた、ってのが本当のところ(笑)。

でも、家に帰ったらかみさんが思いのほか喜んで
「先に観よう」って言い出した、というわけで・・・


時代はEP.4の10年前って設定らしい。
もちろんルークやレイアにも出会ってない、
20代のころのハン・ソロが描かれる。

惑星コレリアは宇宙船の造船で知られる工業惑星。
若きソロと幼なじみのキーラは、コレリアを脱出しようとするが
キーラは途中で捕まってしまう。

ソロはキーラの救出を誓って帝国軍のパイロットに志願するが、
3年後、なぜか彼は歩兵としてどこかの惑星の地表を這いずり回って
戦闘に明け暮れている。

ここでも彼は戦場からの脱走を企てて失敗し、
それがきっかけでチューバッカと知り合う。
さらにはトバイアス・ベケット率いる盗賊団に加わることになり
宇宙船燃料のコアクシウムを運ぶ輸送列車を襲うことになる。

しかしすんでのところで強奪に失敗、
依頼主に詫びを入れるために、ベケットともに
ドライデン・ヴォスのもとを訪れたソロは
そこでキーラと再会する。

埋め合わせのためにドライデン・ヴォスから
新たな命令を授かったソロたちは、実行の手始めとして
銀河一速い宇宙船を手に入れようとするのだが・・・


冒頭のカーチェイス、どこぞの惑星での地上戦、
(上にも書いたが)チューバッカとの出会い、
雪山の連なる中を驀進する列車上でのアクション、
ランド・カルリシアンとの賭博勝負、
囚人惑星での反乱、重力嵐の中を飛ぶミレニアム・ファルコン、
そして砂漠の惑星での決着と
さまざまなシチュエーション下でのアクション・シーンのつるべ打ち。

ベケットの相棒の女性・ヴァル、4本腕のパイロット・リオ、
女性型ドロイドのL3など魅力的なキャラも多いし、
ピカピカの新品だったミレニアム・ファルコンが
映画の中でガリガリと酷使されて、どんどんボロボロになっていって、
”おなじみの姿” に近づいていくのも楽しい。

ストーリーもシンプルなので理解に悩むこともなく
頭を空っぽにして観る分には十分楽しいSFアクション映画だと思う。

ただ、やっぱり『スターウォーズ』って看板を背負ってしまうと
途端に観る側のハードルが上がってしまうのだろうなあ。


そして、いちばん致命的なのは『ハン・ソロ』ってタイトル。
そう聞いたら、みんなハリソン・フォードを頭に描いてしまうだろう。
ところが主演のオールデン・エアエンライクが見事なまでに
ハリソン・フォードに ”似ていない”。

もちろん、そっくりさんを起用しろとは言わないけれど
「もうちょっと何とかならなかったのかなぁ」byかみさん
私も同意見である。

いま「ボヘミアン・ラプソディ」って映画が大ヒットしてる。
フレディ・マーキュリーも現代の俳優さんが演じてる。
ぱっと見、そっくりに思えるけど、
ネットで二人の写真を並べたものがあって、観てみたら意外と違う。

あそこまで似せろとは言わないが、もう少し何とかならなかったのか。
「ハン・ソロ」って題名をつける以上はねぇ・・・

映画のラストでは、”本伝” にも登場してる意外な人物が姿を現し
”続編” の可能性を匂わせて終わる。
たぶんディズニーは、ハン・ソロ主演のシリーズを
新たに立ち上げたいのだろうなあ・・・なんて思ってみたり。

果たして本作は興業に於いて合格点をもらえたのかなぁ。
私としてもこの続きは是非観てみたいのだけど・・・さて?

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機動戦士ガンダムNT(ナラティブ) [アニメーション]


「機動戦士ガンダム」と名のつくシリーズは数あれど、
その中でも本家と言える「宇宙世紀(U.C.)」を舞台にした作品群に連なる
新作アニメーション映画である。

G-NT.jpg
一年戦争(U.C.0079)時に、ジオン軍のコロニー落としを
事前に察知した3人の子どもたち、ヨナ、ミシェル、リタ。

戦後、孤児となった3人は連邦軍のニュータイプ研究所で
被験者として研究対象となる。

グリプス戦役が終了した(U.C.0088)後、
ヨナは地球連邦軍士官学校へ入学、モビルスーツパイロットとなる。
ミシェルは巨大財閥ルオ商会会長ルオ・ウーミンの養女となり、
組織の中で頭角を現してゆく。
そしてリタは、U.C.0095に能力を見込まれて
ユニコーンガンダム3号機・フェネクスのテストパイロットとなるが、
起動実験中に暴走事故を起こして消息不明となっていた。

U.C.0096には「ラプラス戦役」(『機動戦士ガンダムユニコーン』)が
起こり、本作の舞台となる時代はそのさらに1年後となる。

U.C.0097、行方を絶っていたフェネクスが再び地球圏に姿を現した。

その追撃・捕獲を任務とするシェザール隊とその母艦・ダマスカスに
新型モビルスーツ・ナラティブガンダムとそのパイロットとしてヨナが
増援としてやってくる。

そしてルオ商会運用の宇宙輸送船ローズバッドとともに
ミシェルもまたフェネクス追撃に同行する。

一方、ジオン共和国軍のゾルタン大尉が率いる部隊もまた
フェネクス確保を目論んで行動していた。

フェネクスを巡る連邦軍とジオン軍の戦いは、やがて
思いもよらぬ巨大な災厄と化していくのだが・・・


メインのストーリーは、『機動戦士ガンダムユニコーン』の
外伝として執筆された中編小説『不死鳥狩り』をベースに、
大幅に増補・再構成したものと思われる。

90分という尺に収めるためもあるのだろうが
ヨナ・ミシェル・リタの幼少期のエピソードが断片的かつ短くて
3人の間に何があったのかが把握しづらい。

そのせいか、主人公のヨナの行動に今ひとつ感情移入がしにくく
なかなか物語に ”乗れ” なかった。
終盤近くのミシェルの台詞までいくと
だいたいのところが見えてくるので、もう一度観ると
また受け止め方が変わってくるのかも知れない。

あと、好みの問題なのだろうが本作のキャラデザには
最後まで馴染めなかったなあ。
特に主役のヨナの造作がどうも好きになれないのには参った。

私は小説でも映像でも、キャラに ”入れ込んで” 観る人間なので
この映画は、私に対して ”分が悪い” 作品だったように思う。

メカ作画の素晴らしさはもう折り紙付きなのだろうけど
それに比べてキャラの作画がちょっと安定さを欠いていた気も。
このへんは円盤では修正されるのかな。


ここから先はネタバレになりそうな内容を書くので
未見の方はここで止めておきましょう。


観ていて一番気になったのは、
”ニュータイプ” と ”サイコフレーム” の扱い。

この二つが揃ったら不可能はないのではないか?

『逆襲のシャア』では星を動かし、
『ユニコーン』ではコロニーレーザーすら蹴散らし、
今作ではヘリウム3の核融合まで引き起こす。

そしてさらには、死者の ”魂” までも取り込んでいく。

リタは十数年後に起こる人類の危機を予感するし
ニュータイプは過去も未来も見通すのか。
極大の世界から極小の世界まで、さらには時間も超えて。

「人の意思の力が物理法則をもねじ曲げる」

フィクションでは往々にして描かれることではあるし、
実際にそれが起こると強烈なカタルシスを感じることも事実だが・・・

”ニュータイプ” ってそんなにものすごい力を秘めたものだったの?
そして、”ニュータイプ” をそういう風に描いてしまっていいの?

なんだかどんどんエスカレートしていってしまって
これからの「宇宙世紀ガンダム」の物語が
みんなこういうパターンになっていってしまいそうな心配が
頭をよぎる。

”ニュータイプ”(または強化人間) と ”サイコフレーム” があれば
どんなカタストロフだって引き起こせるし、
それを止められるのもまた
”ニュータイプ”(または強化人間) と ”サイコフレーム” だけ、
なんて話になっていってしまいそうな。

まあ、最後の最後には ”人の可能性” を示して終わるし、
それを描いてこそのガンダムなんだろうけど。


 なんだか、狂った ”ニュータイプ” によって
 ”サイコフレーム” が暴走して、
 すべての人類の ”意思” を吸い込んでしまい、
 最後にはその ”サイコフレーム” を搭載した
 モビルスーツが1機残るだけ、なんて未来を想像してしまった。
 どこぞの第六文明人みたいである。
 劇中での ”II(セカンド)・ネオ・ジオング” の戦いぶりを観て
 イデオンを連想した人もいるんじゃないかなあ・・・


なんだか否定的なことを長々と書いてしまったけれど
これからの宇宙世紀シリーズがどう描かれていくのか
ちょっと心配になったので。

誤解されないように書いておくと
私もガンダムファンの端くれのつもりである。
ファーストガンダムの放映時は大学3年生だった。
それから40年近く、まあつかず離れずって感じでつきあってきた。

現代日本における最高のアニメコンテンツの1つであるのは間違いないし
これからも面白い作品を生み出して頂きたいし、
それで楽しませてもらいたい。
純粋にそう思っている。

上に書いた心配が杞憂であることを願っている。


最後に余計なことを。

映画の終わった後、『閃光のハサウェイ』の製作予告が。
うーん、あの原作を
どの程度改変するのか、それともしないのか・・・
もしもそのまま映像化するんだったら
観に行くかどうか二の足を踏んでしまうなあ・・・


あともう一つ。

この映画『ガンダムNT』にはノベライズが出ている。
これも手元にあるので近々読む予定。
読んだら、この映画に関する感想も変わるかな?

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獏の檻 [読書・ミステリ]


貘の檻(ばくのおり) (新潮文庫)

貘の檻(ばくのおり) (新潮文庫)

  • 作者: 道尾 秀介
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/12/23
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

大槇(おおまき)辰男は1年前に妻・智代(ともよ)と離婚、
職も失って、小学3年生の息子・俊也(しゅんや)とは
月に一度の面会が認められている身。

その面会日の帰りに駅のホームで待つ間、
辰男は向かいのホームに立つ女性に気がつく。
次の瞬間、彼女は線路に転落し、電車に撥ねられて死亡してしまう。

その女性の名は曾木美禰子(そぎ・みねこ)。

32年前、辰男の生まれ故郷・長野県O村で農業組合長が殺害された。
凶器は辰男の父・充蔵(じゅうぞう)のもので、そのまま父は失踪。
同時に、村の小学校教師だった曾木美禰子も行方不明になってしまう。
彼女は充蔵によって殺されてしまったものと思われた。

”殺人犯の家族” となってしまった充蔵の妻とその息子・辰男は
O村を離れ、その後、二人は姓も変えて生きてきた。そして32年。
美禰子は何処で何をして、何を考えて生きてきたのか。

辰男の別れた妻・智代は再婚を考えており、その相手と旅行に行くという。
その間、俊也を預かることになった辰男は、
32年振りに故郷・O村を訪ねることを決意する。

かつてO村の庄屋を務めていた三ツ森家は、現在でも有数の資産家で、
村の権力者でもあった。その次男の塔士(とうじ)は開業医で
O村出身者の中で唯一、辰男がつき合いを保ってきた人物。

塔士を通じて三ツ森家に滞在することになった辰男と俊也。
しかし到着した夜から辰男は悪夢に苛まれるようになる。

そしてそれは、辰男の幼い頃の記憶を呼び覚まし、
32年間封印されてきた事件の ”真実” をこじ開けていく・・・


各章の終わりに挿入される ”悪夢” の描写は
時にグロテスクで、時にエロチックで、時には抽象的で
何かの真実の投影なのは分かるのだが、
その意味するところは杳として不明のまま、物語は続いていく。

ミステリとしての謎は少なくない。まず現代編では、
O村に滞在する父子の前に現れた青年・彩根(あやね)、
中盤で発生する俊也の誘拐事件における犯人の行動の謎。
過去編では父・充蔵の失踪の秘密、美禰子の失踪の理由とその後の生活、
そしてもちろん、殺人事件の ”真犯人”・・・

辰男が常用する薬物、小学校の頃の集合写真、村の地下を巡る水路など
伝奇ミステリ的なガジェットはけっこう登場するのだが
名探偵が快刀乱麻を断つような物語ではない。

語り手の辰男は、職も家庭も失い、生きることに疲れきっている。
頭に浮かぶのは現実から逃避することばかり。
故郷に帰ってきたらきたで、今度は悪夢に悩まされる始末。
そんな男が、否応なく過去の事件と向き合うことを余儀なくされて
必死にあがいていく様子が描かれていく。

終盤になって、すこしずつ薄皮をはがすように
さまざまな真実が現れてきて、悪夢の断片もまた
パズルのピースのように ”真相” に組み込まれていく。
最終的には、32年前から現代まで続く一連の事件の真実が明かされ、
それが辰男をして、再び自分の人生と向き合わせることを決意させる。

過去の犯罪と現在の悪夢に翻弄される主人公の姿が
延々と綴られていくのだけど、それだけではなくて
事件を通じて辰男が変貌していく過程もまた
読みどころなのではないかと思う。

純然たる犯人当て本格ミステリを期待して読むと
あてが外れるかも知れない。
読む人によって好みが分かれる作品じゃないかなぁ。

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黒龍荘の惨劇 [読書・ミステリ]


黒龍荘の惨劇 (光文社文庫)

黒龍荘の惨劇 (光文社文庫)

  • 作者: 岡田 秀文
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2017/01/11
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

千葉で役所勤めをしている杉山潤之助を語り手に、
私立探偵・月輪(がちりん)龍太郎が活躍するシリーズ第2作。

基本的に明治から大正あたりを舞台にした作品は好みなので
前作『伊藤博文邸の怪事件』には飛びついて読んだんだが
評価はちょいと×××・・・

シリーズを続けて読むかどうか迷うところだったんだが
「2作目の方が出来が良い」という話も耳にしたので
「じゃもう一冊」と読んでみたら、評判に違わず素晴らしい作品。

シリーズ2作めというのは、”固定客” となるかどうかを決める
大事な作品だと思うのだけど、その結果は上の評価のとおり。


前作からおよそ10年後の明治26年。
龍太郎は官吏を辞め、東京で私立探偵となっていた。
休暇中の潤之助は彼の開いた事務所を訪れ、旧交を温める。

その事務所に依頼人が現れる。魚住と名乗ったその男は
自分は漆原安之丞(やすのじょう)の秘書だと告げる。

明治の元勲にして枢密院議長を務める山県有朋。
その ”陰の側近” として隠然たる力を誇るのが漆原だという。

その漆原が所用で大阪へ発ったまま消息を絶ち、
3日後に自宅の金庫室の中で死体となって発見された。
しかも遺体の首が切断された状態で。

漆原の妻・奈々枝は1年前に失踪しており、
現在彼の屋敷には従兄弟の健次郎、友人で医師の畠山、
そして漆原の4人の妾、喜代・すみ子・小夜子・珠江が暮らしていた。

真相解明を依頼された龍太郎は、潤之助とともに
”黒龍荘” と呼ばれる漆原の大邸宅へと向かう。

しかしそれは、漆原の郷里に伝わるわらべ唄の歌詞を
なぞらえるかのような、凄惨な連続殺人事件の幕開けだった・・・

次々に現れる首無しの死体、
衆人環視の中を跳梁する姿無き殺人者、
そして舞台は広大な旧大名屋敷(しかも座敷牢付き!)。

おどろおどろしい道具立ては揃っているのだけど
雰囲気は意外とあっさり目。
これでもかこれでもかと怪奇性を煽ることはないのだけど、
それだけに妖怪や悪霊の出番は無く、
あくまで人間の犯行であることが強調され、
なおさら不可能性が際立つことになる。

作者の目指すものは伝奇ミステリではなく、
正統派の犯人当てパズラーがだったのだろう。
実際、真相へ至る推理は二転三転し、読者を翻弄する。

文庫で約400ページなのだが、
320ページあたりで龍太郎が ”真相” にたどり着く。
これがまたよくできた内容で、このまま物語の幕を引いても
文句を言う人はいないだろうと思わせる ”ハイレベル” なものだ。

しかし、まだ80ページも残っているわけで、
読者は、このまま終わることはあるまいと思うだろう。
実際、この ”真相” は直後にひっくり返されてしまうのだが。

そして残り50ページほどのところで、仕切り直した龍太郎は
事件を構成する ”16項目の謎” を挙げていく。

そして、改めてそのすべてをきっちり説明する
”事件のからくり” を解き明かしていくんだが
いやはや、これはもう大胆不敵にして途方もない。脱帽である。
ここまで徹底して策を巡らし実行し完遂する。
これだけ肝の据わった犯人も珍しいかも知れない(?)。


もっとも、この ”トリック” は
この時代、この舞台設定でしか成立しないだろう。
現代でこれをやったら、「いくらなんでもそれはないだろう」と
石を投げられるかも知れない(笑)。

でもそれこそが ”時代ミステリ” の醍醐味だろう。

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みんなの少年探偵団 [読書・ミステリ]


([ん]1-10)みんなの少年探偵団 (ポプラ文庫)

([ん]1-10)みんなの少年探偵団 (ポプラ文庫)

  • 作者: 万城目 学
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2016/12/02
  • メディア: 文庫
評価:★★★

表紙を見れば一目瞭然、往年の「少年探偵団」シリーズの
当時の雰囲気そのままの装丁で
明智小五郎と怪人二十面相が帰ってきた。

このシリーズでミステリに目覚めた人も少なくないだろう。
このブログのあちこちで書いてるが、私もその一人。
小学校4年の頃だったか。父が買ってきてくれた『怪人二十面相』が
私の読書人生の始まりであり、もちろん、初のミステリ体験だった。

それから半世紀もの時が流れ・・・ああ、何もかも皆懐かしい(笑)。

そんな人に対して、こんな本を見せられたら
思わず買ってしまうよねえ・・・


中身は現代で活躍する作家さんの書き下ろし短編アンソロジー。
もちろん小林少年や文代夫人が登場する作品もある。


「永遠」万城目学(1976)
両親を失った双子の男の子は、伯父によって
遠くの街に住む謎の老人に預けられる。
ある時、デパートからクレオパトラ像が盗まれる。
犯人は捕まったが、高価な宝石のはめ込まれた台座が見つからない。
双子は老人が盗難事件に関わりがあると思い、台座を探し始める・・・
どこまでいったら ”少年探偵団” になるのだろうって思ってたが
最後はかなり予想外の展開。でもちゃんと ”少年探偵団” になった。
こういうアプローチも面白い。

「少女探偵団」湊かなえ(1973)
体操の全国大会へ進めなかった小学6年生・カスミ。
彼女は海辺の祖父母の家を訪ねるが、
沈むカスミをみた祖母・香代は、
自分が小学6年生の時に経験した冒険譚を語り始める。
香代は小林少年とともに怪人二十面相と対決したのだ・・・

「東京の探偵たち」小路幸也(1961)
1974年。母親が<吸血鬼>に襲われ、その中学生の娘が失踪した。
母子の隣室に棲むオサムは、「明智探偵事務所」へ向かうが
明智は既に引退し、探偵業は小林少年(成年だが)が引き継いでいた。
主役のはずのオサムくんは終始、事件の蚊帳の外で、
すべてが解決してから真相を教えてもらう役回り。

「指数犬」向井湘吾(1989)
井上くんと野呂ちゃん、小学6年生の二人組は
謎の老人から「魔法の犬はいらんかね」と声をかけられる。
連れて帰ったその犬は、なんと翌朝になると2匹に、
その翌日には4匹、さらに次の日には8匹と増えていった・・・
この発想は面白い。低学年の読者なら大喜びしそうな展開。
終盤では、小林少年が大活躍して二十面相の鼻を明かしてみせる。

「解散二十面相」藤谷治(1963)
明智小五郎と少年探偵団に見事に捕縛されてしまった二十面相。
しかし護送中に脱走して隠れ家に舞い戻る。
その内部の様子など、二十面相の意外な生活が描かれるのが面白い。
さらに「もう二十面相をやめる」宣言まで飛び出してくるのだが
彼にそれを決意させた理由が、またいかにも彼らしいのがねぇ・・・
このあたり、ちょっとメタフィクションな展開になってる。
もちろん、本当に ”引退” してしまうわけもなく
現役続行となるのだが、そのきっかけもまたメタフィクション的。
なかなかの意欲作ではある。


ちなみに、作者名の後の数字は、作者の生年。
案外若い作家さんが多い。
私と同年代と言えるのは小路氏と藤谷氏くらいで
万城目氏と湊氏は20歳近く年下。
向井氏に至っては私の息子といってもいい年代だ。
原典が、それだけ幅広い年代に読まれているということか。

読む前は、原典に忠実なパスティーシュのアンソロジーだとばかり
思ってたんだが、蓋を開けたら
意外にもかなりの変化球も混じっている。

まあ、21世紀の現代に ”怪人二十面相” を復活させるのならば、
それなりに趣向を凝らす必要があるよねえ。

このシリーズ、まだ何巻か続くらしいのでしばらく追いかけてみる。

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ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生 [映画]


休日出勤の代休がけっこう貯まってきたので
今日はかみさんと一緒に映画を観に出かけた。

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ご存じ世界的大ヒット小説&映画『ハリー・ポッター』シリーズ。
そのスピンオフとして製作され、2016年に公開された
『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』の続編である。


前作で捕らえられた闇の魔法使い・グリンデルバルドが
あっさりと脱獄に成功するところから始まる。

主人公ニュート・スキャマンダーはロンドンで
恩師ダンブルドアと再会する。脱走したグリンデルバルドの目的は、
前作に登場した青年・クリーデンスを探し出すことらしい。
ダンブルドアから二人を追跡することを要請されるニュート。

さらにアメリカからクイニーとジェイコブがやってくるが
非魔法族と魔法族は結婚できないことから
二人は結婚を巡って喧嘩別れをし、
クイニーは姉のティナがいるパリへ行ってしまう。

ニュートとジェイコブはティナに会うためにパリへ向かうが
そこにはグリンデルバルトがアジトを構え、
そしてクリーデンスもまたサーカス団員として身を隠していた。

かくして、パリを舞台に ”闇の魔法使い” と ”闇祓い” の戦いが始まる。
やがて明らかになるダンブルドアとグリンデルバルトの過去、
そしてクリーデンスの意外な出自・・・


新キャラとしてはニュートの兄・テセウス、
その婚約者のリタはニュートのホグワーツ時代の同級生。

クリーデンスとともに行動するサーカス団員のナギニは蛇に化身する娘。
そしてクリーデンスと因縁浅からぬ謎の男ユスフ。


相変わらず魔法系の場面の華やかさは驚くほど。
種々の魔法が発動するシーンはもちろん、
さまざまな魔法動物の生態も鮮やかに描かれ、観る者を飽きさせない。

そこらへんは流石にハリウッド映画と思わせるのだけど
逆に言うと、観る者を飽きさせないために
ひたすら派手なシーンをつなげているようにも思える。
ところが、たぶんそのせいで
肝心のストーリーがわかりにくくなってるのではないかなあ。

これは上映時間にも関係しているのではないかと思う。
前作にも感じたことだが、上映時間がちょっと長すぎるのではないか。

調べてみたら前作が133分、今作は134分。
枝葉を切って110分くらいにしたらわかりやすくなるんじゃないか。

 今は定期考査が終わったあたりらしく、館内には
 男女問わず高校生がとても多かったのだけど
 私たちの横に座っていた男子高校生の一団が、上映後に
 「長~い。おれ、無理」って口々に言ってたので
 そう思ったのは私だけないのだろう。

でもたぶん、「あんなシーンも見せたい」とか
「こんなシーンだって描けるんだ」って思いが制作陣にあるんだろう。
だから、スゴいシーン(金をかけたシーン)は全部見せるぜ、
って方針なんだろうなぁ。
だからつないでみると結局2時間超えになる。

でもいくらごちそうでも前菜からデザートまでステーキじゃ
食べる方が胸焼けしてしまうよねえ。
しかも次から次へとめまぐるしく給仕されたら
味わう(ストーリーを理解する)ヒマもない。

 『スターウォーズ/最後のジェダイ』の時にも
 同じようなことを書いたような覚えがある。

たぶん2~3回見ると評価は変わってくるのだろうけど
1回こっきりではなかなか飲み込みにくい映画のような気がする。
まあ、ファンの人は何回も見直すんだろうけど・・・


いろいろ文句を書いてしまったが、決してつまらない映画ではない。

その他、観ながら思ったことを挙げていくと、

ナギニ役は東洋系の女性。wikiで観たら韓国の女優さんでしたね。
最近のハリウッド映画はアジア系の俳優さんの出演も増えてきた。
やっぱ中国とかの市場を意識してるのかな。

日本のカッパも出てきたけどけっこう不気味な造形で
かみさんにはえらく不評でしたが
たぶんあれが西洋の人たちのイメージなのかと。

ホグワーツ魔法学校でダンブルドアが教室で教えてるシーンや
ニュートの学生時代の回想シーンは『ハリー・ポッター』シリーズの
ファンの方へのサービスなんだろうなあ。
特に「マクゴナガル先生が若くて美人なのがよかった」(byかみさん)。

でも若い頃のダンブルドアはちょっとイメージが違うなあ。
ジュード・ロウも悪くはないんだけど
もうちょっと学者的なイメージが欲しかったなあ・・・
これは私とかみさんの共通の感想。

今作を見てから前作を振り返ってみると、
第1作はいわば序章で、登場人物紹介みたいな回だった。
本格的なストーリーは今回の第2作から始まったような気がする。

全5作とアナウンスされているシリーズなので、残りあと3作。
これからニュートとグリンデルバルトの戦いが本格化して
最後にはダンブルドアも参戦してくるはずだ。

映画のラストシーンにおける次作への ”引き” もバッチリなので
たぶん第3作も観に行くと思います。

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杏奈は春待岬に [読書・SF]


杏奈は春待岬に (新潮文庫)

杏奈は春待岬に (新潮文庫)

  • 作者: 梶尾 真治
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2018/09/28
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

祖父の住む街で、春休みを過ごしていた10歳の少年・白瀬健志。

ある日、彼は一人の美しい少女と出会った。
彼女の名は杏奈。健志よりも数歳年上か。
場所は ”春待岬” の突端にある屋敷で。

たちまち杏奈に心を奪われてしまう健志。
それはまさに ”運命の人” との出会い。

それから毎年、健志は春休みに祖父の家に来ると
必ず春待岬の屋敷に杏奈を訪ねるようになった。

しかし、杏奈にはいくつもの謎があった。

なぜ、彼女が屋敷に現れるのは春先の数日間のみなのか。
なぜ、一緒に暮らしている老人・秋彦のことを「兄さん」と呼ぶのか。

そして、年を追って小学生から中学生へと成長していく健志に対し
なぜ、彼女はいつまでも10代の姿のままなのか・・・

やがて15歳を迎えた健志に、
秋彦は、杏奈に負わされた哀しい運命を告げる。

そして健志は、自分の手で杏奈を救い出すことを決意するのだが・・・


この手の時間SFを読み慣れてる人なら
秋彦と杏奈が置かれた状況はだいた見当がついてしまうだろう。

この後、健志くんの奮闘が始まるのだが、ことは簡単ではない。
彼女を救うためには何が必要なのかは書かないけれど、
簡単に言えば、一介の少年の手には余るのである。

この後の彼の人生は、まさに ”杏奈のために” 展開する。
しかし人生のすべてを賭けても杏奈を解放する糸口は見つからない。

しかし時は非情に流れ続けていく。

やがて秋彦は亡くなり、健志もまた年を重ねる。
一向に解決策を見いだせないままに、健志の年齢は
杏奈のそれをとうに追い越し、そしてその差はどんどん開いていく。

このへんから、読むのがだんだん辛くなってくる。
最終的に杏奈の救出に成功はするのだろうとは思っても
そのとき、健志との年齢差はもう・・・って考えるとねぇ。


文庫の裏表紙の惹句には
「究極の純愛」とか「切なすぎるタイムトラベルロマンス」とか
書いてあって、たしかに看板に偽りはないのだが
読んで感動するかどうかは人それぞれだと思う。

本書を読んで感涙にむせぶ人もいるかも知れないが、
私が感じたのは、ただただ「残念」の一言。
健志があまりにも報われなさ過ぎるんじゃなかろうか。


こういう物語なので、さほど登場人物は多くない。
そして、杏奈以外の唯一と言っていい女性キャラ・青井梓の扱いも不満。
祖父の住む街で健志が知り合った同い年の少女で
杏奈と異なり、彼とは ”同じ時間” を過ごしていくことになる。

彼女の存在が、後半のストーリーに大きな関わりを持ってくるのだが
言い換えればそれだけのために登場したキャラとも言える。

このあたり、詳しく書くとネタバレになるので歯がゆいのだが
あまりにも ”作者にとって都合の良すぎるキャラ” なのがねえ。

何で文句書いてるのかというと、私が梓ちゃんのファンだからだ(笑)。
だっていい子なんだもん。健気で一途で。
彼女の良さに気づかない健志は大馬鹿野郎である。
目の前に正座させて1時間くらいこんこんと説教してやりたい(爆)。

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水魑の如き沈むもの [読書・ミステリ]


水魑の如き沈むもの (講談社文庫)

水魑の如き沈むもの (講談社文庫)

  • 作者: 三津田 信三
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/05/15
  • メディア: 文庫
評価:★★★★☆

怪奇幻想作家・刀城言耶(とうじょう・げんや)が探偵役を務める
ミステリシリーズ、その長編第5作。
第10回(2010年)本格ミステリ大賞受賞作。


寡婦である宮木左霧(くき・さぎり)は大陸で終戦を迎えた。
ソ連兵の追跡を逃れ、3人の子ども(鶴子・小夜子・正一)を抱えて
命からがら日本へ引き揚げてきた。
身寄りの無い左霧は、かつての養父である
水使龍璽(みずし・りゅうじ)を頼ることになる。

奈良の山奥、波美(はみ)地方。そこには
”水魑”(みづち) が棲むという伝説がある沈深(ちんしん)湖があり、
そこを源流とする深通川(みつがわ)沿いに4つの村が開拓された。
上流から順に五月夜(さよ)村、物種(ものだね)村、
佐保(さほ)村、そして青田(あおた)村。

 「水魑」とは、龍神の別名と解釈していいだろう。

村にはそれぞれ水魑を祀る神社が建立され
これも上流から順に水使(みずし)神社、水内(みずち)神社、
水庭(すいば)神社、そして水分(みくまり)神社。

これら4つの神社は古くから深通川の水利権を握り、
村人たちに対して絶大な権勢を誇っていた。
その中でも最上位にある水使神社の宮司が水使龍璽。
いわばこの地方の最高権力者である。

かつて、故あって養父・龍璽のもとを逃げ出した左霧は、
心ならずも再び故郷へと戻ることになった。

しかし、鶴子に対して何らかの ”思惑” を巡らせ始めた龍璽、
いにしえからの因習に染まった村人たちによって、
左霧たちは数奇な運命を歩んでいくことになる。

そして時は流れて昭和29年。

刀城言耶は、民俗学者・阿武隈川烏(あぶくまかわ・からす)から、
奈良の波美地方で行われる雨乞いの儀式のことを聞く。

沈深湖で行われたその儀式では、過去2回にわたって
不可思議な事件が起こっていた。
23年前に執り行われた儀式では宮司・水分辰男が
湖に潜ったまま行方不明になり、
13年前に執り行われた儀式では、同じく宮司の水使龍一(龍璽の長男)が
死体となって発見されていた。
そして、その儀式が今年も執り行われるという。

担当編集者の祖父江偲(そふえ・しの)とともに現地へ赴いた言耶だが
彼の目の前で展開したのは、湖に浮かぶ船の中で宮司が刺殺されるという
”湖上の密室” ともいうべき衆人環視の中の不可能犯罪。

そしてそれは、宮司たちを標的とした
連続殺人事件の始まりだった・・・


物語は、正一の視点から語られる過去編、
言耶の視点から語られる現在編が交互に進むが
この過去編の中にもすでに謎と怪奇がてんこ盛り。

そして殺人事件が起こってからは、いわゆる
クローズト・サークル&特殊状況下ミステリとなる。

頑なに公権力の介入を拒む暴君・水使龍璽。
医師も駐在も彼には逆らえず、村の青年団も龍璽の ”親衛隊” と化して
4つの村は、因習に縛られた ”独裁国家” の様相を呈していく。

近代日本にこんな場所がある訳ないと思う人もいるだろうが、
本書を読むならそんなことは忘れて素直に物語に浸りましょう。

終戦後間もないという時代ならではの村の風俗、そして小道具。
狭い閉鎖環境ならではの複雑な愛憎関係。
そんな時と場所でこそ成立する、謎と怪奇に彩られた犯罪が綴られる。

そんな中、偲を人質に取られた言耶は、
真犯人を見つけ出す役割を強要されるが・・・

 ちなみに本作の中の偲さんは、
 「言耶さん大好きオーラ満開女子」なんだが
 はて、彼女ってこんなに可愛らしいキャラだったかなあ。
 とは言っても、言耶くんはいささか素っ気ないのでちょっと可哀想。
 もっとかまってあげなよ~とか思いながら読んでた。


ラストに至り、言耶は事件の解釈を述べ始めるのだが
これが真相か、と思われるとさにあらず、
彼は自らそれを否定して次の推理を構築し始めるという、
いわゆる多重解決ものでもある。

次から次へ犯人が入れ替わって「もう候補がいないじゃないか」
そう思わせるんだが、最後には納得の ”意外な真犯人” が指摘される。
これはもう脱帽。流石としか言えない。

しかも、謎解きシーンと並行して波美地方を豪雨が襲い、
深通川が氾濫を起こすという、まさに文字通りの ”怒濤の展開”(笑)。
物語としてもとても面白い。


そして最後の最後、わずか2ページほど割かれた「終章」。
事件後の村人たちの様子が描かれるのだが、
この長大で陰惨で非道な物語を読んで来た人は、
ここで心が温かいもので満たされるだろう。
「救い」と「希望」を感じさせる、素晴らしい幕切れだと思う。


とにかく文庫でおよそ720ページというボリュームに
まず圧倒される。そしてその中で展開する内容が
横溝正史を遙かに超える幻想&怪奇&本格ミステリの世界。

いやあ、この手の話は私の大好物。
大長編も基本的に嫌いじゃないし、
この人の作品はリーダビリティ抜群なのでぐんぐん読めた。
まさに至福の読書の時間を満喫しました。

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総閲覧数140万に到達 & 近況 [このブログについて]


去る12月7日、このブログの総閲覧数が140万を超えました。

20181207.jpg
毎回書いておりますが、また書かせて頂きます。

(どれくらいいるのか分かりませんが)
ご常連の方、毎度のご訪問ありがとうございます m(_ _)m ぺこり。

そして、(もしいるなら)たまたま今日が初めてのご訪問の方へ。
1700件近い駄文の山でございますが
よろしかったら、これからどうぞご贔屓に(笑)。

どちら様も、よろしくお願いします m(_ _)m ぺこり。


さて、前回(2018年7月26日)の「130万突破」の記事では
熱中症にかかったことを書きましたが
ここ最近は、おかげさまで元気に過ごしております。

前回の熱中症も、症状がいちばんひどい時は塗炭の苦しみで
「このままお陀仏になってしまうんじゃいか」って
本気で心配したんですが、3日もしたらケロリと全快してしまいました。

「喉元過ぎれば熱さを忘れる」の言葉通り、回復したあとは
「とにかく体力をつけよう」と飲み食いに制限をつけずに過ごしていたら
ひと夏の間に3kgほど増量してしまいました(笑)。

人間、トシをとってくると体のあちこちに ”ガタ” が来ます。
熱中症のことは、今になってみれば笑い話で済むのですが
実はごく最近、もう一つ ”ガタ” が見つかって
こっちはちゃんと医者にかからないといけない。

ホント、「トシ取ったなあ」って感じる日々を過ごしております。


さて、現在の本ブログの状況は、「ヤマト2202 第六章 回生編」の
”感想もどき” を書くのにすっかり時間をとられて、
肝心の読書感想録のほうが滞ってしまいました。
数えてみたら25冊くらいあってびっくりです。

溜まってしまうこと自体は今までにも結構あったのですが
最近は、あまり焦らなくなりましたかね。

以前は
「今○○冊も溜まってる。じゃあ△月△日までに□□冊分書かねば」
みたいな焦燥感に駆られていたのですが、ここ3ヶ月くらいは
「今日書けなかったら明日でも、いや明後日でも、無理なら来週でも」
って意識になりました。

「ぐうたらになった」というのが本当のところかもしれませんが(笑)。

溜まった読書録も、年内で解消するのは厳しそうなので
1月中くらいに、いや無理なら2月くらいには
解消できるといいなあ・・・くらいに思ってます。


そんなぐうたらになったブログ主ですが、
これからもよろしくお願いします。

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